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こはるの体は火傷の痛みで震えていた。
全身が熱く、服は焦げ、肌はヒリヒリと焼けつくようだった。
「こはる、もう歩けないだろう?」
拓也の声はかすれていたが、その声にこはるは強く頷いた。
「兄ちゃん、ごめん…ごめんね、兄ちゃんも怪我してるのに…」
涙がこぼれ、声が震える。
「謝るな。俺が守る。おんぶさせてくれ」
拓也は腰を落とし、こはるを抱き上げた。
小さな体は熱く、重かった。
「しっかり掴まって」
拓也の背中にぴったりと身を預け、こはるは目を閉じた。
揺れる背中の温もりは、今までにない安心感を与えた。
炎と煙が立ち込める街を、拓也は必死の形相で進む。
足元は瓦礫が散らばり、時折崩れ落ちる建物の音が響く。
「もうすぐだ、こはる。母さんと健太が待ってる」
拓也は自分に言い聞かせるように呟いた。
こはるは兄の背中で、焼けた皮膚の痛みを忘れようと、兄の声に集中した。
「兄ちゃん、ありがとう…」
拓也は苦しそうに息を吐きながらも、力強く前へ進んだ。
「お前の笑顔を守りたい。それだけが俺の願いだから」
背中に感じる兄の鼓動が、こはるに生きる力をくれた。
煙の向こうに、ようやく家の姿が見えた。
「もう少しだ、頑張れ」
拓也の背中を離れることなく、こはるは静かに涙を流し続けた。
彼女の心に、兄への感謝と深い絆が刻まれていった。