もうほぼ日常化してしまった畑葉さんによる自宅訪問。
いつもなら合鍵を使って勝手に中に入ってくるくせに今日は何故かインターホンが鳴り響いた。
「何?てかなんで今日はインターホン────」
そんな声を漏らしながら玄関扉を開ける。
と、
「ばぁ!!」
「うわっ…!!」
鬼のお面を被った畑葉さんが驚かせてきた。
そのせいで僕は驚いて尻もちを着いてしまった。
「あははっ!!私の勝ち!」
『私の勝ち』ってなんのゲームをしているんだか…
「あれ?もしかして今日って…」
「そう!!節分だよ!」
「みんなで節分風鬼ごっこしよ!!」
『みんな』?
誰のことだろうか…
そう思っているうちに僕は畑葉さんに連れられ、大きな桜の木が生えたあの丘へ。
そこには子供のような人影が見えた。
「あ、来た!!」
「凛ちゃん!遅いよ〜…」
「ごめんごめん!!」
僕を置いて子供たちと話す畑葉さん。
一体この子達はどこから…
「今日は古佐くんも一緒に遊びま〜す!」
「ふるさくん?」
「そ!私の親友!」
「ふ〜ん…」
畑葉さんが僕を紹介するとたちまち僕に視線が集まる。
「私のせいじゃないもん!!」
そう言いながら地団駄を踏む真里ちゃん。
しかも大泣きしながら。
えっと…
どうしてこうなったんだっけ?
遡ること約1時間前。
鬼ごっこの鬼はジャンケンで決めて、
見事に僕が負けて鬼は僕に。
内容は普通の鬼ごっこと何ら変わら無いが、
少し違う。
鬼の人は逃げる側を追いかける。
けど、逃げる側が投げる豆に当たったら少しの間、止まらなければいけない。
1豆あたり10秒。
だから避けたもん勝ちの鬼ごっこである。
しかも鬼の体にさえ当たらなきゃいい。
物か何かで防げば勝ち確。
「それじゃあ初めよっか!」
そう畑葉さんが言ったと同時に子供たちは散り散りになる。
それを僕は追いかけた。
約50分ほど経過した時だった。
「へへ〜ん!!こっちだよ〜!」
と僕を煽っていた里花ちゃんが真里ちゃんに衝突。
それで里花ちゃんが『急に飛び出してきた真里ちゃんが悪い』と怒って今に至る。
「私のせいじゃないもん!!ひっく…里花ちゃんが悪いもん…!!」
「まぁまぁ落ち着いてよ2人とも…」
そんな時、2人の頭を撫でながら現れる男の子。
彼は蓮くん。
なんというか年齢相応では無い優しさを持つ子。
「なんか巻き込んじゃってごめんね」
そう隣で畑葉さんが言う。
「…大丈夫だよ」
「本当かなぁ…」
少し間を開けて返したせいか、
そんなことを言われてしまう。
「ねぇ、あんた」
「私の凛に話しかけないで」
急に後ろからおどろおどろしい雰囲気が漂ってきた。
驚いて振り向くとそこに居たのは來良ちゃん。
「ちゃん付けで呼ぶな」
「ぇっと…?」
「…お前の考えてることなんて分かるに決まってんだろ」
來良ちゃんはかなり口が悪い。
子供とは思えないほどに。
「あーあ…」
「私鬼に捕まっちゃった…」
「でも追いかける側になれたからラッキー!!」
遠くから独り言のような声が聞こえてくる。
流雨ちゃんはとにかくポジティブ。
何があっても絶対にポジティブに行き着く。
というかこの子たち自由奔放過ぎるな…
一人、心でそんな声を零す。
そんな時、一瞬景色がおかしくなった。
子供たちの頭はお花になり、
畑葉さんの姿は消えていた。
「え…?」
そんな声を漏らしながら目を擦る。
と、景色は元通りになっていた。
「古佐くんどうかした?」
隣では僕を心配する畑葉さんの姿がちゃんとある。
今のは何だったんだろうか。
あの子たちと遊んでから数日間、
夢であの子たちを見るようになった。
悪夢と言っていいのかよく分からないが、
いつも『古佐くんには無理だよ』と言われ、
目が覚める。
いつかの畑葉さんの言葉のように。
しかも毎回人は違う。
子供のような姿をしている時もあれば、
少し成長したような姿になっている時もある。
だが、それ以上に嫌なのは極たまに頭が花に変わっているということ。
真里ちゃんはマリーゴールド。
里花ちゃんは…よく分からない。
だけど見たことはある。
「あ、」
そう声に出す。
思い出した。
確かあの花はトリカブトだったっけか…?
「古佐くん!!バレンタインチョコちょーだい!!」
学校に来て早々そんなことを言われる。
「バレンタインって女子が男子に渡すんじゃなかったっけ?」
そう返すと
「知ってるもん…」
「ワンチャンくれるかもって期待してただけ…!」
そう言いながら少し拗ねる。
「それより古佐くんさ〜」
「最近元気無いよね」
「…そう?」
「うん。明らかに元気無いよ」
そんなことを言われても自覚は全く無い。
でも心当たりはある。
それは先程も言った『夢に子供たちが出てくる』という問題点。
「何かあったの?」
心配そうな瞳をこちらに向けてくる畑葉さん。
だが、なぜか畑葉さんにだけは言いたくなかった。
なんだか嫌な予感がして堪らなかった。
しかも言ったら最悪の結果を招いてしまいそうで怖かったから。
きっとこれは第六感というものだろう。
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