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空には太陽が昇り始め、雲一つない空が広がっている。
拓人の運転する黒いセダンは東京に入り、都内へ向かっていく。
首都高を走行し続け、緩やかな螺旋状の道を走り抜けていくと、レインボーブリッジを横断していた。
眼下に見える海が陽の光に当たり、オレンジ掛かったゴールドに染まりながら輝いている。
渡りきったところで首都高を降り、一般道を通っていくと、レインボーブリッジが目の前に見える駐車場に拓人は車を停めた。
まだ早朝のせいか、彼の黒いセダンしか停まっていない。
「外に出ようか」
拓人に促され、瑠衣は助手席から降り、彼の後をついて行った。
遠くに見える海から小波の音が微かに聞こえ、海風が穏やかに二人の間を吹き抜けていき、潮の香りが鼻腔を満たしていく。
壮大なレインボーブリッジを眺めていると、拓人がゆっくりと口を開き、彼女の名を呼んだ。
「瑠衣ちゃん」
真面目な表情で彼が瑠衣に呼び掛けると、上背のある拓人を見上げる。
改めて拓人を見てみると、かなりのイケメンだな、と瑠衣は感じてしまい、こんな人が助けてくれた事が今でも信じられずにいる。
「はい」
彼は戸惑いを纏わせた表情を覗かせつつ、言葉を紡ぎ始めた。
「四年前……瑠衣ちゃんがあの娼館に連れて来られて、まだ未経験だったキミを俺が抱いた事、覚えてるか?」
「…………覚えてます。これも娼婦になるための第一歩だ、って考えたら、すごく緊張しちゃって。でもそんな私を、中崎さんは優しくしてくれました」
当時の事を思い出したのか、瑠衣が顔を薄紅に染めながら答える。
「キミを抱いた後、俺に礼を言ってくれた時…………あの時に見せてくれた瑠衣ちゃんの照れたような笑みに、ドキっとしたんだ。その時から俺…………」
拓人は言葉を曖昧にした後、顔を俯かせて逡巡すると、辿々しく面差しを瑠衣に向けた。
「…………瑠衣ちゃんに……惚れていたんだ」
「……え?」
瑠衣が目を見開きながら拓人を見つめると、彼は吹っ切れたような清々しい表情で更に言葉を続ける。
「昨年の十一月、四年振りに凛華さんと一緒にいた瑠衣ちゃんを見て、すごく綺麗な女性になってて、あの時は言えなかったけど、惚れ直したよ。でもキミには今、好きな人…………いや、恋人がいる」