第25話「二度寝するソルソ」
登場属性:熱属性(寝不足型)・潮属性(調整型)・波属性(観察者)
テーマ:変質の“中断”と“再開”、それでも変わる過程
登場人物:
カナイ=ルウ(熱属性・生徒)
ぼさぼさの赤茶の髪に、ねじり鉢巻きを巻いているが、毎日寝ぐせ。制服はよれよれで、袖まくりしていて、シャツの裾もズレている。
口癖は「まだ寝られる……」
変質は「熱量上昇型」だが、持続力が低く、変質途中で“止まってしまう”。
アワジ=メユ(潮属性・生徒)
細身で柔らかな髪を後ろにまとめ、淡い貝色の制服を丁寧に着こなす。塩素バランスの計測が得意で、よく周囲の共鳴を整える役目をする。
「変わりきれない人が、いちばん気になる」と言う観察型。
放課後、旧実験室の奥。
変質実験をしていたカナイ=ルウの体から、うすく赤い光がもれていた。
でも、それは途中で「ぷつっ」と切れる。
「あーー……また寝たい」
彼はそのまま、床にぺたんと座り込んだ。
変質が途中で止まる現象を、この学園ではこう呼ぶ。
「ソルソの二度寝」。
変質は成長のプロセス。けれど、それが一度リセットされることもある。
熱が冷める。波が消える。潮がひく。
アワジ=メユが、そっと記録装置のスイッチを切った。
「だいじょうぶ。これは“やり直し”じゃなく、“ひとやすみ”だから」
次の日。カナイ=ルウは朝の自習室で眠そうな顔のまま、ノートをひらく。
> 「熱は、消えるんじゃない。
眠ってただけなんだ。」
彼の手帳には、こう書かれていた。
> 「きょう:また始める。二度寝は、夢の続きだった。」
教室の窓の向こう、海の底では
淡く赤いソルソの粒子が、ゆっくりゆっくり再び光を帯びはじめていた。