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『やっと繋がった!』
怜が電話口で焦燥感を漂わせながら開口一番に言った。
「何度も電話くれたようだな。何かあったのか? そういえばすぐそこで、音羽さんが警察官と一緒にいるのを見たが」
間を少し置いた後、怜が敢えて落ち着き払ったと思われる声色で侑に告げた。
『…………九條さんが…………何者かに拉致されたらしい』
「……っ!?」
一瞬怜の言葉に耳を疑った侑は、車を降りて奏を見掛けた場所まで歩きながら通話を続ける。
『恐らく、お前が奏を見た場所で、九條さんが連れ去られたのだろう』
「くっ! 一体誰が……!!」
『俺はまだ会社だが、すぐに仕事を切り上げて車で東新宿へ向かう。俺が着くまで、奏をお前の家で待機させてやってくれないか?』
「もちろんだ」
侑の視線の先には、奏がまだ警察官と拉致現場で状況説明をしているようだった。
「音羽さん、まだ警察官と話をしているようだ。俺も話を聞きに行ってくる。こっちに来る時、気を付けて来いよ」
『ああ、すまないが奏をよろしく頼む』
怜と通話を終えた後、瑠衣のスマホに電話をしてみるが、電源が入っていないアナウンスが淡々と流れているだけだ。
(瑠衣……!!)
電話を切り、侑は奏と警察官のいる場所へ駆け寄った。
「あ! 響野先生……!!」
奏は侑がこちらに来るのを見た瞬間、心底ホッとしたような表情を浮かべた。
「失礼ですが、あなたは被害者の方の関係者ですか?」
「はい。私は一緒に暮らしている恋人です」
警察官から質問された侑が答え、更に質問が続く。
「こちらの女性の方ともお知り合いですか?」
「彼女は私の恋人の友人です」
警察官の質問が終わり、瑠衣が拉致された時の状況を教えてもらった。