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#普通
野々さくら
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ありあ
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しかし、千秋の口から発せられた言葉は、信愛の予想とは違うものだった。
「違うよ・・・」
千秋の予想外の言葉に、信愛は目を見開いた。
「え? ち、違う?」
戸惑う信愛に、千秋はゆっくりと事情を語り始める。
「確かに『こころクリーニング』と
『定義の無い言葉の刃物』、この二曲は
私が作詞作曲した歌だよ?」
そこで千秋は少し照れくさそうに笑った。
「でも元は私が摩耶ちゃんに歌ってほしくて
私が作詞作曲したみたいな部分もあるの」
「そ、そうだったんですか?」
信愛が驚くと、千秋は懐かしそうに目を細めた。
「私ね・・歌はめっちゃ下手でね
けど作詞は昔から大好きだったの」
千秋の意識は、遠い過去へと向かっていく。
「だから授業中も食事中でも
暇があれば必死に詩を書いてたの」
信愛は黙ったまま、その話に耳を傾けていた。
「でも周りの大人は、そんな私を『普通じゃない』って
言って受け入れてくれなかった」
「まるで『定義の無い言葉の刃物』の
歌詞そのものって感じですね」
「あれは実体験を元に書いた歌詞だからね・・・」
千秋の表情に、わずかな寂しさが浮かぶ。
「私なんて誰からも受け入れてもらえないんだ
って諦めてた・・・でもね?もそんな時に
偶然摩耶ちゃんのライブを見たんだ・・・」
その瞬間、千秋の表情が明るくなった。
「めっちゃ感動したの」
信愛は何も言わず、続きを待つ。
「まあ、お客さんは今みたいにいっぱいは
入ってなかったんだけど、歌詞がとにかく良くて」
千秋は当時の光景を思い出すように、楽しそうに言葉を続けた。
「激しく魂の叫びを歌うって感じのロックで身体中
ビリビリ~ッ!って電撃が走ったみたいに痺れたの」
その興奮は、何年経っても色褪せていないようだった。
「それからライブ終わりに出待ちしてたら
摩耶ちゃんから話しかけてくれてね」
「気がついたら私の悩みとか夢とか
ぜ~んぶ摩耶ちゃんに話してた」
見ず知らずの相手だったはずなのに、なぜか摩耶には何もかも話せた。
そして、その出会いが千秋の人生を大きく変えることになる。
「そしたらさ?私が社長に話してあげるから
私のマネージャーやってみる?って
そう・・・言ってくれたの」
千秋は嬉しそうに笑う。
「受け入れてくれない人間ばかりの環境に身を置くより
才能を理解して寄り添ってくれる人と過ごす方が
絶対に良いだろうって言ってくれてさ
あと、作詞の勉強にもなるだろうからって」
それは、誰にも認めてもらえないと思っていた千秋にとって、初めて差し伸べられた救いの手だった。
「私、めっちゃ嬉しかったんだ」
千秋は楽しかった思い出を追体験しているかのように、華やかな笑顔を浮かべていた。
そんな彼女を見ながら、信愛は感心したように呟く。
「初対面の千秋さんにそこまでするって
TAMAYAさんって懐が深いですね」
「ほんとそれだよね。まるで海だよ」
「ですね・・・」
千秋は小さく頷き、再び懐かしそうに語り始めた。
「そうやって摩耶ちゃんの側で勉強しながら書いた曲が
『こころクリーニング』と『定義の無い言葉の刃物』」
そして、どこか誇らしげに笑った。
「この二曲なんだ・・・」
千秋は胸に手を当てて続ける。
「私ね・・・この歌を
摩耶ちゃんに歌って欲しかった」
千秋は、自分の胸の内にある想いを確かめるように、静かに言葉を紡いでいく。
「そうすればもっと色んな人に曲を届ける事が出来て
私と同じ様な悩みを持つ人を救える。そう思ったの」
それは千秋がずっと抱き続けてきた、ささやかでありながら大きな夢だった。
「まあ、あわよくば作詞家としても
有名になれたらなぁ〜なんてね」
少し照れくさそうに笑った千秋だったが、その笑顔はすぐに消えた。
「けど・・・現実は違った」
「え?」
信愛が不思議そうに首を傾げる。
「私が作詞作曲したはずの歌は全部
摩耶ちゃんがひとりで作った曲って事になってたの」
「そんな・・・」
信愛は言葉を失った。
「確かに私が夢に見てた、摩耶ちゃんに歌ってもらって
色んな人を救うって夢は叶うかもしれない」
千秋は俯き、唇を噛む。
「けど、これは私が思い描いていた理想じゃ無い」
そして何より、千秋を深く傷つけたもの。
それは、誰よりも信じていた摩耶からの裏切りだった。
「それよりも好きで尊敬してた摩耶ちゃんの
裏切り、それがなにより一番辛かった・・・」
信愛は何も言えなかった。
「他の大人は私を普通じゃない!って拒絶していても
摩耶ちゃんだけは違うってそう信じてたから」
声が、わずかに震えていた。
「私・・・辛くてさ。もう何もかも嫌になっちゃって
もう、どうにでもなれって思って・・・」
信愛は嫌な予感を覚えながら、おそるおそる尋ねる。
「それで・・・自殺を?」
「うん・・・」
千秋は静かに頷いた。
「私・・摩耶ちゃんだけはレッテル貼らずに等身大の
人間として私を見てくれる・・そう信じてたから」
「千秋さん・・・」
「別に無名の人間が作詞作曲した歌だと
インパクトが薄いから、自分が書いたって事に
したって言うんなら、別にそれでも良かったの」
千秋が本当に欲しかったのは、名声でも、手柄でもなかった。
「私は黙ってそれをされたことが辛かった」
その言葉を口にした瞬間、千秋の目から一筋の涙が流れ落ちた。
「摩耶ちゃんから頼みだったら全て受け入れたのに」
信愛は何も言えず、ただ彼女を見つめていた。
「だから私は死んだ後も、色々と嫌がらせをしたの
私の気持ちに気づいて欲しくて」
しかし、千秋はそこで一度言葉を切った。
「でももうやめる」
「え?」
突然の宣言に、信愛は戸惑う。
「誰かを傷つけたい訳じゃなかったの
でも信愛ちゃんの友達を傷つけちゃった」
その言葉を聞き、信愛の脳裏に照明の下敷きになりかけた友人の姿が浮かぶ。
「でもあの照明は、友達が助けなかった
TAMAYAさんは重症を負ってたんじゃ?」
信愛の問いに、千秋は申し訳なさそうに目を伏せた。
「今言っても後出しだって言われちゃうかもだけど
あれは私が摩耶ちゃんを突き飛ばすつもりだったの」
千秋はステージの照明を悲しげな目で見つめる。
「私は摩耶ちゃんに、私の気持ちに
気づいて欲しかっただけだから」
千秋は穏やかな声で、そう告げた。
「殺したいなんて・・そんなこと思った事ないよ」
「千秋さん・・・」
信愛が名前を呼ぶと、千秋はどこか吹っ切れたように微笑んだ。
「最後にこうしてお話出来てよかった」
そして、心から感謝するように続ける。
「ありがとうね、信愛ちゃん」
その言葉が別れの挨拶のように聞こえ、信愛は慌てて千秋を呼び止めた。
「待ってください!」
「ん?どうしたの?」
「千秋さんがTAMAYAさんと会話する方法ありますよ」
思いもよらない言葉に、千秋は目を丸くする。
「え?うっそだ〜」
すぐに冗談だと思ったのか、千秋は半信半疑の笑みを浮かべた。
「そんな魔法みたいな方法あるわけ無いよ」
だが、信愛は真剣な表情を崩さない。
「私と千秋さんが魂で結ばれるんです」
「魂で?」
千秋は目を瞬かせる。
信愛が口にしたその言葉の意味を、まだ理解できずにいた。
コメント
1件
×××さん、今回もめっちゃ良かったです…!😭💕 千秋さんの過去が明らかになって、特に「摩耶ちゃんだけは違うと思ってた」って台詞が胸に刺さりました…。信頼してた人に裏切られるのって、そりゃ辛いですよね。でも「♡♡♡たいと思ったことない」って言う千秋さんの優しさが切なすぎる…。 そしてラストの「魂で結ばれる」って信愛ちゃんの言葉、めっちゃ気になる展開すぎる!次回どうなるのか待ちきれないです…!✨