女性のプロフィール画像は、顔写真を使っている人と花や風景写真等を用いている人の二種類に分かれる。
顔写真を出している人は本当に本人か? と思うほど美人揃いだ。おそらく本人ではなく借りてきた画像だろう。
そこで仁は顔写真を出していない地味なプロフィールの女性達の中から選んでメールを送る事にする。
相手の年齢は30歳から45歳までに設定した。大人の会話をするならこの辺りが無難だろう。
しかし年齢を設定しても候補者の人数はまだまだ多い。
そこで今度は自分と同じ趣味を持つ人限定にしてみた。するとかなり人数が絞れてきた。
(この中から選ぶか……)
仁はプロフィールをざっと見ていきとりあえず二人の女性を選んだ。
一人目は『ここあ』という女性だ。『ここあ』の一言メッセージにはこう書かれていた。
『読書したりドラマを見るのが好きなのでそれについてお話が出来る人を希望します』
さり気なく自分の本やドラマの感想を聞けるかもしれない。そう思った仁はまず彼女を選んだ。
そして次に選んだのは『ミルクティー』。彼女の趣味は『読書』『演劇鑑賞』だった。
こちらもなんとなく話が合いそうだ。仁は知り合いからチケットを貰って芝居を観に行く機会も多い。
二人とも会社勤めをしている大人の女性なので常識もありそうだ。だから変なトラブルに巻き込まれる事もないだろう。
「偶然とはいえペンネームがどっちもドリンクの名前か」
仁は苦笑いをしながら早速二人にメッセージを送る事にした。
【初めまして、Godと申します。よろしければ秋の夜長にお喋りを楽しみませんか?】
二人同時に全く同じメールを送信する。
(このシンプルなメールこそがチョイ悪イケオジ系だと思わせるテクニックなんだ)
ニンマリした仁はもう一人くらいメールを送ってみようかと更に女性のプロフィールを検索する。そこであるプロフィールに目が留まった。
そのプロフィール写真には軽井沢の教会の写真が使われていた。アメリカの建築家アントニン・レーモンドが設計した有名な教会だ。仁が別荘に滞在時にはこの教会の前を散歩でよく通る。
気になった仁はその女性のプロフィールを見てみた。
(名前は『エンジェル』、長野在住のバツイチか____まあさっきの二人はどちらも未婚だしバツイチ女性と話しをするのも小説のネタになっていいかもしれないな)
仁はそう思いながら女性の一言メッセージを見た。そして驚く。
一言メッセージ・質問:「生きるとはどういう事ですか?」
(うーむ、これはあえて狙っているのか? それとも素朴な疑問なのか? いや、もしかして病んでいるのか?)
仁は悩む。もしメンヘラ系女子だったら相手をして変に絡まれたらたまったもんじゃない。しかし仁はその質問が妙に気になる。
(まー会ったりするわけじゃないし匿名でやるんだから大丈夫かなー)
あまり深く考えない事にして『エンジェル』へメッセージを入力していった。
【初めまして、Godと申します。君の質問の答えを考えてみたんだけれど、そうだなぁ…生きるっていうのは息(breath)を繰り返す事かな?】
そしてすぐにメールを送信する。
仁はもう一度女性のプロフィールを見て気付いた。趣味が自分と全く同じだという事に。おまけに女性が好きな作家は神楽坂仁と書いてある。
(俺のファンかよ、だったら有益な情報を得られるかな?)
更にもう一つ気付く。
最初にメールを送った女性二人はメール相手の希望が『男性のみ』となっていたが、エンジェルは『男女どちらでも』となっているので女性のメル友でもいいと思っているようだ。つまり『エンジェル』は純粋な話し相手を求めているのだ。仁はそこも気に入った。
(バツイチでパート勤務、軽井沢もしくは軽井沢の近くに住んでいる生きる事に意味を見出せなくなった訳ありの女ってところか?)
仁は指で顎の髭を撫でながら一瞬笑みを浮かべるとそこで【月夜のおしゃべり】のサイトを閉じた。
(さーて、三人のうち何人から返事が来るかな?)
仁は椅子から立ち上がるとソファーへ移動する。この後は映画を観ようと思っていた。
リラックスして映画を楽しみたい時はデスクではなく大画面のテレビで映画を観る。
これから見る映画は悦子に紹介された『ユー・ガット・メール』だ。
それからしばらく仁は映画に集中した。
コメント
5件
仁さん一番気になるのは綾子さんですよね?2人が繋がるきっかけになってほしい‼️綾子さんの凍りついた心を癒してください‼️
仁さん顎髭撫ぜながら一瞬笑うって何か感じるとこら有ったのかしら?
↓ノルノルさん☆華ちゃん♡私も他の2人の返信が気になります!が… やっぱり仁さん… 仁さん顎髭があるのね〜!妄想が止まらない😆 綾子さんの返信を見て、軽〜く夜のおねーちゃんと会話をするような感覚でメールを送信した仁さんの反応が楽しみ⁽⁽₍₍o(´∀`)o⁾⁾₎₎ゎ‹ゎ‹♪