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「エトワール様!」

「……グランツ?」


私の名前を呼んで路地にやってきたのは、亜麻色の髪の騎士だった。グランツは、息を切らしながらこっちに走ってきたが、アルベドを見つけると途端に顔つきを変えて、翡翠の瞳を怒りで染めた。


「アルベド・レイ…… 」


アルベドは、またかとでも言うように私の後ろでため息をついて、私の肩に腕を置いた。


「ちょっと、重い」

「わりぃ、わりぃ。ちょうどいい肘置きがあったからな」


と、アルベドはケタケタ笑って、そうして黄金の瞳をグランツに見つけた。グランツは、ピクリと指先を動かしたが、またここで食ってかかる わけにはいかないと怒りを抑えているようだった。それでも、彼から滲む怒りは少し離れている私にも伝わってきて、相変わらずアルベドに対して殺意を抱いているんだろうなって事が分かる。


そんなグランツの後ろから、彼と同じように息を切らしながらやってきたのは、アルバだった。アルバは私を見つけるなり、エトワール様! と顔をパッと明るくさせた。


「エトワール様、探したんですよ」


そう言いながらアルバは近付いてきたが、彼女も本当にそっくりそのまま、グランツと同じように足を止めて、アルベドを見た。何故彼がここにいるのか、また彼が何故私といるのか不思議で仕方がないと言った様子に。

アルバは、説明を求めると言った感じに私の顔を見てきた。


「何故、レイ卿が?」

「これは、ちょっと深いわけが……」

「密会だよ。俺とエトワールの」


と、私がアルバに説明しようとした瞬間、それを遮るようにしてアルベドはニヤリと笑ってそう言った。私の肩に乗せていた腕を私の腰に回してぐいっと私を引き寄せて、まるで愛し合っています。見たいなアピールをアルバとグランツに向けてした。


グランツは、無表情のままだったが、だんだんと翡翠の瞳に影が出来ていくようで、アルバは理解が追いつかないと言ったように口を小刻みに揺らしていた。


「ちょっと、何が密会よ! ややこしくしないで!」

「でも、二人きりだったのは事実だろ」

「違う!」


私が必死に否定すると、アルベドは冷たいなあ。と一言云うと私の腰から手を離した。その隙に、私はアルバの後ろに隠れる。アルバは、私がアルバを選んだこと、彼女の後ろに隠れて守って欲しいという姿勢を作ったことに喜びの笑みを浮べた後、騎士の男前な顔になり、アルベドを睨み付けた。


「私の主人に何かしたんですか?」


と、そういうと、アルベドは目を丸くさせて、グランツの方を見た。


グランツの眉はピクリと動いたが、それ以外は石のように動かなかった。


「エトワール、お前護衛が二人になったのか?」


私は、アルベドの問いに対して答えを出せなかった。出せなかったというか、グランツの前でそれを言うのが気が引けたからだ。私が黙っていると、アルベドは全て理解したとでも言うように、口角をグッと上げる。


「そうか、お前は解雇されたのか」


そういうと、アルベドはグランツの方を向いた。

グランツは、顔さえ逸らさなかったが、怒りに震えているといった感じで、拳を握っていた。アルベドは、分かっていてグランツを挑発しているのだ。

私はやめてと言いたかったが、どうしても口が開かなかった。解雇したのは私なのか。違う、あっちがトワイライトを選んだのだと。でも、それを言えばアルベドはそれの弱みを握ってグランツにあれこれ言うだろうと。

私は、そんなアルベドとグランツを見て、合流できたことに安心していたが、もっと重要なことを思い出して、アルバの服を掴んだ。


「エトワール様?」

「ごめん、こんなことしている場合じゃないの。あ、あ……探してくれたって事は、トワイライトから聞いて」

「……トワイライト様から? では、彼女はどちらに?」

「…………」


私は自分の口から言うのが怖くて口を閉じてしまう。

でもこうしている間にも、船がでてしまったら。そうしたら、トワイライトは戻ってこないかも知れない。けれど、自分のせいで彼女が連れ去られたと知ったら、二人はどう思うだろうか。

そんな風に、口を閉じていると、アルベドが機転を利かせてか言葉を紡いだ。


「さらわれたんだよ。本物の聖女様は」

「そんな」

「嘘じゃねえよ。それに、エトワールもさらわれそうになってたんだよ。それを俺が助けって分け。感謝しろよ。護衛のお前達が守るべき主人を俺が助けてやったんだから」


そんな風にアルベドは言うとフッと笑った。

どうしてこの人は、いつも一言余計なのだろうか。と私は、そういう所は直した方がいいんじゃないかという目をアルベドに向けてやった。でも、アルベドもアルベドで、隠したいところは隠したんだろうなと思った。

本当は、トワイライトを助けるのが間に合わなかったとか。でも、本当にもしかしたら、彼はトワイライトを初めから救う気がなかったのかも知れない。まあ、今更言うつもりはないけれど。

アルバは、非常に困ったというような顔をして、考え込んでいた。救助の要請をしなければとか、報告をしなければとか色々呟いていたが、私は一刻も早く彼女の元に飛んだ方がいいと考えていた。確かに、大勢でいった方が危険は少ないと思うし、性格はあれだけどこの帝国の騎士は強い人ばかりだ。ヘウンデウン教の人が何人いるか分からない状況では、数で押した方がいいと思っている。

それに、報告してトワイライトが誘拐された原因が私だとか言われても嫌だ。そういう可能性も加味して、報告より先に助けにいくべきだと思った。


「アルバ、アルベドがトワイライトが連れ去られた場所を知っているの。だから、今すぐにでもそこに転移魔法使って飛んで助けにいかなきゃ」

「しかし、エトワール様にも危険が」

「私だって聖女よ。それに、ヘウンデウン教が関わっているかも知れないなら、光魔法が使える私を連れて行くべきよ」

「ですが」


アルバの気持ちは痛いぐらい分かるし、私がさっきいきなり飛び出していったとき追いかけられなかったという悔しさもあると思う。でも、アルバとグランツ、アルベドだけで行かせるわけにはいかないと思った。それと、アルベドがこの二人だけを連れて行く可能性は低い。きっと私がついていくから、おまけに連れて行ってくれるという感じなのだろう。

私は、ちらりとアルベドを見た。彼は、私が考えていることなどお見通しとでも言うように、笑うと、決まりだな。と転移魔法の準備をと私達の方へ歩いてくる。


「信用出来るのですか? 彼は」

「……うん。アルベドには何度も助けてもらってきた。それに、今回だって助けてくれた。アルバが、彼が闇魔法の者だから信用出来ないって言うのは分かるけど、私が信じている人のことは信じてあげて欲しい。それに彼は、ヘウンデウン教に異端だって危険視されている」

「そう、なのですか?」

「エトワール、余計なこと言うな」


と、アルベドは少し低い声で私に言った。


アルベドは、この間の調査でヘウンデウン教から危険視されている事が分かった。光魔法のものにも闇魔法の者にも好かれない彼は本当に孤高の存在なんだろう。孤独を抱えて生きてきたんだろう。

アルベドは、気分が悪いと言った表情を浮べていたが、転移魔法を使ってくれるようで、私はひとまず安心した。

グランツはきっと、嫌だろうけど、トワイライトが誘拐されたという事実が知られれば彼の立場は一気に悪くなる。そう思えば、彼が嫌でもアルベドに従うほかないのだ。


「しかし、転移魔法はかなりの魔力を有します。光魔法の者であれば複数人で……闇魔法の転移も同じ原理だと思います。ここにいる四人を転移させるには相当の魔力をつかう。まかないきれると思いません」

「ま、まあ、私の魔力を使って貰えれば大丈夫なんじゃないかな。この間もそうだったし」

「それで、エトワール様が倒れたらどうするんですか!」


アルバは必死になっていった。でも、私に転移魔法で転移しないという選択肢はなかったため、信じてと彼女を抱きしめた。彼女は一瞬驚いたような表情を見せたが、心臓の音が一定になり、落ち着いたことを私は知る。


「分かりました。エトワール様が言うなら私も彼を信じます」

「ありがとう。グランツは――――」

「俺は……俺は、トワイライト様の護衛なので、彼女を救い出す為に全力を尽くさなければなりません」


と、淡々とした口調で言った。その目から、アルベドと同じようなものを感じたが気づかないフリをした私は、アルベドに転移魔法を頼んだ。


彼は、私達から魔力を吸い上げると、地面に大きな魔方陣を出現させた。先ほどのトは違う赤い魔方陣だった。何故色が変わるのだとか原理は分からなかったが、私は、トワイライトのことだけを考えてグッと両拳を握る。


(待っててね、トワイライト――――)


そうして、私達は、赤い光に包まれた。


乙女ゲームの世界に召喚された悪役聖女ですが、元彼は攻略したくないので全力で逃げたいと思います

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