テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
1件
読んだよ……「神回」ってタイトルに偽りなしだった🥀 最初から最後まで金ダライに頭をぶっ叩かれ続けるツバキが可愛すぎて笑ったw「魂で抗う」とか言われてるのに実際はただの被害者で、クロエにポーズ指導されながら凹まされるの、愛おしさしかない🤍 でも後半、クロエが「封印の拍子」って語り出したところで空気が変わったね。カエデの不運が遠隔で道を開こうとしてる——あれ、泣きながら笑うしかなかった。みんなバラバラでも、どこかで繋がってるんだって思わせてくれた。 「みんなのため」って覚悟決めた直後に「やっぱ関係ないわ」って言われて、あ♡♡♡ほどね……って納得させられるクロエのツンデレっぷりも、さくらんぼんさんらしくて最高だったよ🌙 次も楽しみにしてるね。
#ライトノベル
こはる
610
#異世界
あのち
1,452
上野文
4,351
#探偵
橘靖竜
4,825
カァンッ!
「ぎゃあああああああああ!? なんで空から金ダライがドンドン落ちてくるのぉぉぉ!?」
カァンッ!
ゴォンッ!
ガァンッ!
奈落の底に、金属音が連続で響き渡った。
私は頭を押さえながら、全力でその場を転げ回っていた。
聖女としての威厳は、最初の一発で死んだ。
二発目で葬式が終わり、三発目で墓石まで建った。
「空間のチャンネル変えたの誰だぁああああああ!! カエデでしょぉぉぉぉぉぉ!?」
「聖女様、落ち着いてください!!」
「落ち着ける落下速度じゃない!!」
ゴォンッ!
「痛ぁああああああ!!」
また落ちた。
しかも今度は、頭ではなく肩に当たった。
微妙に狙いが変わっている。
「カエデ!! 絶対カエデ!! あの子なら離れてても人の頭に金ダライ落とせるもん!!」
「才能と言ってよろしいのでしょうか!」
「才能じゃない!災害だよ!!」
ローザは私を庇うように前に出た。
だが、金ダライは彼女ではなく、なぜか私の頭上にだけ降ってくる。
カァンッ!
「また私だけぇぇぇ!!」
「聖女様……! まさか、災厄を御身に集中させて、私を守ってくださっているのですか!?」
「違う!! 普通に私が狙われてる!!」
「『聖女様、厄災を頭部で受信』……っと」
「メモするな!! あと受信って言うな!!」
私は半泣きで天井を見上げた。
「カエデェェェォォォッ!! 生きてて良かったなぁああああああああ!? 嬉しいけどぶっ飛ばすッ!!」
天井は暗い。
ひび割れた岩肌の奥は、どこまでも黒い。
なのに金ダライだけが、当然みたいに落ちてくる。
私を確実に狙っている。
『ふむ』
私を包む黒いマントが、低く唸った。
クロエ。
千年前から私たちを待っていた、めんどくさくて重くて、そして本物のお姉ちゃん。
そのクロエが、やけに真剣な声を出した。
『ツバキ』
「なに、クロエ!? 今ちょっと命狙われてるんだけど!!」
『怯え方が雑だ』
「怒るところそこ!?」
『頭上からの理不尽な落下物。これは良い。非常に良い。世界そのものが貴様を拒絶している感じがある』
「この世界は絶対に私のこと嫌い!!」
『だが、悲鳴に品がない。もっとこう、“天より落ちし審判に抗う堕天の聖女”として』
カァンッ!
「ぎゃあああああ!!」
『今の悲鳴は惜しい。響きは良かったが、魂が浅い』
「うっさい!! 魂から声出してるよ!!」
ローザがものすごい勢いでメモを取っている。
「『聖女様、金属の裁きに魂で抗う』……」
「ローザ!! メモってないで助けて!?」
ゴォンッ!
「痛い!! もう!! なんなのこれ!!」
私は頭を抱えて叫んだ。
「カエデぇぇぇ!! 聞こえてる!? リモコン連打やめてぇぇぇ!!」
「リモコン、ですか?」
ローザが首を傾げる。
「カエデが異世界に来た時から持ってる謎の板!! 前にも押したら私にタライが落ちた!!」
「では、今回もカエデ様が遠隔から聖女様に試練を?」
「試練じゃなくて事故!! しかもカエデに自覚ない!!」
『待て』
クロエの声が急に変わった。
低く、鋭い。
さっきまで演出家みたいに金ダライを評価していた声とは違う。
私は動きを止めた。
「……クロエ?」
『今の音だ』
「音?」
『金属音の響きが、ただの落下音ではない』
「え?」
カァンッ!
「ぐぇッ!!」
また金ダライが私の頭に落ちた。
そのタライは床に当たり、洞窟の奥まで不思議な反響を伸ばした。
カァァァン……。
音が、長い。
普通ならすぐ消えるはずの音が、石壁の奥へ吸い込まれるように伸びていく。
『やはり』
クロエが、私の肩でわずかに震えた。
『これは封印の拍子だ』
「封印の……拍子?」
「聖女様、どういう意味でしょうか」
「私も今、初耳の単語を浴びてる」
クロエが、マントの裾をふわりと広げた。
黒い布が、まるで翼みたいに背後へ伸びる。
『千年前、魔神王を封じるために使った術式には、音律があった。文字だけでは足りない。魔力だけでも足りない。音、間、呼吸、影。それらが重なって、初めて封印は閉じる』
「急にちゃんと重要なこと言うじゃん……」
『私はいつでも重要なことを言っている』
「九割くらいポーズの話だったよ」
『ポーズは重要だ』
「今そこはいい!!」
カァンッ!
「ひぇッ!?」
また金ダライが落ちた。
今度は、私の足元。
床の古い亀裂に当たった。
その瞬間。
ぼう、と床の文字が青白く光った。
「……光った」
ローザが息を呑む。
「聖女様、今のは……」
「うん。私にも見えた」
さすがに、笑えなかった。
床に浮かび上がった文字は、ただの模様ではなかった。
円形に刻まれた古い印。
その一部が、金ダライの音に反応して淡く輝いている。
『外套結界の残滓だ』
クロエが言った。
「外套結界……?」
『千年前、私が担っていた役目だ。外から来る瘴気と呪いを遮断し、封印の外側を包む。マントは飾りではない。境界だ』
「境界……」
『そうだ。封印は、ひとつの力では閉じない。打つ者、押さえる者、包む者、繋ぐ者。その全部が噛み合って初めて動く』
「役職多すぎでしょ」
『封印とは、部署横断業務だ』
「急に総務っぽく言わないで!!」
『重要なことは何度言っても良い』
「で、どうせポーズも重要なんでしょ」
『当然だ』
「知ってたよ!!」
私は思わず、自分の肩にかかった黒いマントを握った。
めんどくさい。
うるさい。
ポーズに厳しい。
悲鳴にもダメ出ししてくる。
でも、このマントは。
千年前、本当に誰かを守っていた。
「……クロエ」
『なんだ』
「ちょっとだけ、かっこいい」
『我が封印美学に対して“ちょっとだけ”とはなんだ! せめて“暗黒の夜明けを纏うほど”と言え!』
「褒めたのに怒られた!!」
その瞬間だけ、黒いマントが大きく広がった。
奈落の冷たい空気が、私たちに届く前に、ふっと薄くなる。
たぶん、これがクロエの力だ。
世界の外側から来る嫌なものを、受け止める力。
「……やっぱり、ちょっとだけじゃないかも」
『今の訂正は良い。だが表現が薄い』
「もう褒めない!!」
ゴォンッ!
「痛ぁっ!!」
言い合っている間に、また金ダライが落ちた。
今度は私の背中に当たった。
そして。
床の光が、また少し広がった。
『……なるほどな』
クロエの声が、深くなった。
『カエデの遠隔干渉。偶然ではない。あの子の不運が、封印の音律を叩いている』
「カエデの不運、ついに楽器になったの!?」
「なんと……カエデ様は遠く離れてなお、聖女様の道を開くために天より拍子を……」
「絶対そんな意図ない!! 今ごろ自分でも分かってない!!」
ローザは真剣に頷いた。
「分かっていないまま奇跡を起こす。まさに勇者様」
「勇者って便利な言葉じゃないからね!?」
カァンッ!
ガァンッ!
ゴォンッ!
金ダライの数が増えた。
「増えたぁぁぁぁ!!」
『避けるな、ツバキ』
「は!?」
『音が床に当たる位置を乱すな。拍子がずれる』
「私に当たってるんだけど!?」
『ならば気高く受けろ』
「気高く受ける落下物じゃない!!」
『ツバキ』
クロエの声が、ほんの少し柔らかくなった。
『あの音は、道を開くかもしれない』
「……道?」
『お前たち妹を、繋ぎ直す道だ』
その言葉で、私は息を呑んだ。
サクラ。
カエデ。
エスト。
辰美。
みんな、バラバラになっている。
怖い。
痛い。
金ダライは本当に意味が分からない。
でも。
これが、みんなへ続く道を開くなら。
『ツバキ。左へ三歩』
「左?」
『そうだ。そこに落ちる音を受けろ』
「し、仕方ない……みんなのため!!」
私は半泣きで左へ動いた。
カァンッ!
「いでッ!!」
『まだだ!もう一回!!』
「わ、わかった!!」
ガァンッ!
「へぶッ!!」
『最後だ!もう一回!!』
「え!? で、でも、みんなのため……!」
ゴォンッ!
「ひんッ!!」
『あ、やっぱり封印とか関係ないわ』
「クロエェェェ!!!!!」
「聖女様、無駄に頭部にダメージを負う……と」
『ツバキ、ローザ。何を騒いでる。行くぞ』
*
『だが、ひとつ分かった』
「まだ何かあるの!?」
『金ダライではない。封印は、一人では動かない』
「じゃあ今の頭痛は何だったの!?」
『タライだ』
「知ってる!!」
カァンッ!
「カエデェェェ!!」
(つづく)