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#年の差
桜子は昨日の最後の書き込みに怒りを覚えて電源を落としたままで、放置していたタブレットとデスクトップの電源を入れ、再び残酷な世界へと接続した
そして電子書籍販売サイトのランキングを見た、映画の効果はまだ続いていた「あの虹」は今週もランキング4位に入っていた
そして慎重な心構えが必要な5ちゃんねるの匿名掲示板の一つのスレッド「美木桜子の盗作について語るスレッドpart1」を開く・・・夕べ読んだ続きからもう50件書き込まれているその始まりは決まって
―美樹桜子は盗作している―
から始まっていた
―また同じ書き込み?―
―同一人物だな―
―美木桜子Wikipedia(ウィキペディア)より・ 出身地: 大阪府/血液型 / 星座: A型 / みずがめ座(1月28日生まれ)• 2011年10月で○営舎『花乱』商業デビュー、2026年フルマックス出版『あの虹の彼方へ』著者、映画原作者―
―もし本当に盗作なら読者をバカにしているな―
―美木さん、盗人が猛々しいな―
―この書き込み出版社知ってるのかな?―
―保守―
―他人のふんどしでも金が入ればいいんだ―
―確証ないのにいかに拡散するかみたいな話になってんの怖いわ、死刑かよwww―
―ここ検証スレなんでしょ?何か証拠でもあんの?―
―疑われること自体が問題なんだよ―
―盗作した時点で作家じゃないよ―
―訴えられるよ?―
―つまり訴えられた方が真実性を争えるもんだ、ぜひ訴えて欲しいもんだね―
―もし事実を触れ回るとしても関係者や消費者にこのままじゃ迷惑かかるんじゃない?―
―ここ盗作検証スレなんでしょ?どうなん?―
―美樹桜子、インスタ1000人フォローしてる、この人にフォローされてると、偶然の一致で似てる作品あると自分の盗作されたのかと疑っちゃう―
―たとえ、疑われたとしてもこんなスレ立てられた時点で恥だわ、私ならペンネーム変える―
―美樹桜子インスタ辿って来た、先週猫の画像UPしてる、背景検索したら梅田の猫カフェと特定―
―ここ→.https://osakaumeda//shop―
―美樹桜子、三日前に梅田の美容皮膚科医の投稿「いいね」してる―
―通ってんじゃね?印税で、優雅なもんだな―
―行ったら居るんじゃない?聞いてみなよ「盗作したんですか?」ってさ―
―梅田周辺に住んでるのは確実だな―
―病院好きそう―
―病んでそう―
―承認欲求高いヤツほど個人情報ガバガバ―
.。.:・
「嘘でしょ?そんな所まで探らないでよっっ!」
慌てて桜子は自分のスマートフォンでインスタグラムのアプリを開いた、アカウントを非公開にしたくても、これは公式なので非公開にしたら出版局に怪しまれる・・・桜子は震える指先で投稿した画像と「いいね」を削除する
すると匿名掲示板では
―あっ!美木桜子、今「画像」と「いいね」消した―
―ということはこのスレ見てるんだな?―
―あ~あ、気になって仕方がないんだね、美木さん、真っ黒じゃん―
―出版局は知ってるんですかぁ~?―
―面の皮厚いな―
―我、正しき道を見失い、気づけば暗き森の中にありき―
カッとなった桜子は思わずデスクトップのやってはいけない、パソコンの電源を引っこ抜き、ベッドにもぐりこんで胎児の様に丸くなった
最近ではシオンが仕事に出かけた昼間の数時間はずっと「匿名掲示板」のスレッドに張り付いてこんな事を繰り返している・・・いったい自分は何をやっているんだろう
ひたすら苦悩の中で今後、起こりうる様々なことを分析して推測していた
―美樹桜子は盗作している―
と何度も書き込んでいるあの人物が、今や病原菌の様にいつ何時、桜子の実生活に入り込んで来る日がきてもおかしくない
でも、もし本当に本気で桜子を攻撃したいならば、誰が書いたかわからない匿名掲示板ではなく、「インスタグラム」や「X」といった公の戦場に出てくるはずだ、なのにどうしていつまでも匿名掲示板でグダグダと書いているのだろう
答えは簡単だ、この人物もこんな所で桜子を貶める内容を書いていることがバレたらまずい理由が何かあるのだ
。. .。 .:・.。
「ただいまぁ~って・・・わぁ!!」
仕事から帰って来たシオンが桜子のげっそりした顔を見て驚いた
「どうしたの?桜子さん!目の下真っ黒だよ!」
「お・・・おかえりなさい・・・そうなの・・・なんか筆がのっちゃって・・・止められなくて、ちょっと具合悪くなっちゃった」
「一流の作家は、自分のコンデイション関係なしに、毎日一定の分量を書くんですよ、桜子さんも一日何文字って決めないとダメだよ、そんな体壊す書き方・・・」
へへ・・・「うん・・・わかってるんだけど・・・つい・・・」
ハハッ「しょ~がないなぁ~、桜子さんは」
そう言ってシオンはいそいそとキッチンに立ち、スーパーの買い物袋から食材を冷蔵庫に移して言う
クスクス・・・「今日さぁ、店長ん家の引っ越しを手伝ってきたんだ、すごくいいマンションだったよ、そこで店長のお子ちゃん3歳と1歳の子がいてね、僕のこと「ちおん」って言うんだよ、「サシスセソ」が言えないの!もう~めっちゃ可愛かった」
「そ・・・そう・・・」
「そんで奥さんに「素敵な彼女と同棲している」って言ったらこれくれた、彼女に食べさせてあげてって、ハイ、奥さんの実家で作ってるんだって」
そう言ってシオンは桜子に紙袋に沢山入ったみかんを渡した
ホッ・・・「ありがとう・・・」
作家で友人もおらず、孤独にインターネットの世界でしか生きていない桜子と比べて、シオンは情報テクノロジー嫌いではないにしろ、もっぱら彼はリアルの人間関係に忙しそうだった
だから昼間の夢のようにいつかシオンがあの匿名掲示板のことを話題にする日が来るに違いないとずっと身構えているものの、彼自身はSNSのアカウントもずっと放置しているし、それはすっかり化石化していた
それに新作を書いている様子もなく、あと数か月したら本格的に本屋の正社員になって、店長クラスのキャリアが取れる販売資格を取りたいと目標を桜子に語った、桜子は不確かな小説家なんかよりよっぽど素敵なことで、小説はいつでも書けるので今はあなたが必要だと思う事をやってほしいと、彼を全力で応援した
大事なのは、彼が毎日桜子の家に帰ってきてくれることだ、それ以外は桜子は何も望まなかった、今日は「鶏鍋」だと白菜をザクザク切り出したシオンの背中にギュッと抱き着く
クスクス・・・「そんなに抱き着かれちゃご飯作れないよ、子供みたいなんだから桜子さんは」
機嫌良く桜子の食事の支度をするシオンの温もりを感じながら、桜子は決意した
成功した作家になりたかった・・・でも自分が望んでいたことは、こんな事態を招くものではなかった
様々な書き込みはほとんど憶測の粋を越えてはいない、だけどあの書き込みだけ・・・同じ事を何回も・・・
―美木桜子は盗作している―
あの一節を3回書き込んでいる人物はあきらかに同一人物で悪意の塊みたいだ
―このままいけば、相手の正体を突き詰める必要がある―
この地獄を終わらせるにはそれしかないと、もうこの頃の桜子にはそう思わずにはいられなかった
コメント
2件
えーっそうなの?桜子…沈黙は金というけど😔首突っ込んだあとの顛末が気になる。ついに盗作の代償を払うことになるのかな😔
シオンが帰ってくる日常の温かさと、匿名掲示板の冷たい悪意の対比が本当に効いてました。「あっ!今消した」のやりとりで一気に緊張が走るところ、鳥肌立ちました。桜子の追い詰められ方が生々しくて、一緒にもうやめて…って祈るような気持ちで読んでましたね。