部署にいる同僚たちの視線が、やけに気になる。
好奇の視線、憐れむような視線、批判の視線。
様々な視線を跳ね除けるように、豪は、上司のデスクへ向かい報告すると、無言で頷いた。
社の地下駐車場で待っている、と捜査員に言われ、彼は合流し、警察署へ向かった。
到着後、豪はすぐに取調室へと向かう。
まず問われたのが、元カノ、優子との関係についてだ。
前日、会議室で上層部に質問攻めされていた時と同様の内容を、受け答えする。
更に昨日、駅で待ち伏せされた時の様子も、捜査員に伝えた。
専務が言っていた通り、彼のスマホに手掛かりを見つけようとしたのか、捜査員が豪のスマホを解析させて欲しい、と言ってきたので了承する。
長い長い、事情聴取。
いつ終わるか分からない、スマホの解析時間。
捜査員は、スマホから決定的な情報を見つけたようだ。
解析終了の合図の電子音が響き、捜査員が彼にスマホを返してくれた。
「ご協力ありがとうございました。本橋さんの事情聴取は、これで終了となります。明日、岡崎優子を任意で事情聴取します」
「わかりました」
「長時間、お疲れ様でした」
彼は捜査員に一礼すると、警察署を後にした。
豪は会社へ戻り、急ぎの仕事だけ片付ける。
昨日と今日、ほとんど仕事ができず、やらなければならない仕事は山積みだ。
そんな中、親友の純からメッセージが受信している事に気付き、豪はメッセージを開いてみた。
『高村さんに無事メモを渡せた。だが彼女、夏季休暇中に、だいぶ窶れたようだぞ』
豪は、奈美の表情を思い浮かべるだけで、胸が苦しくなってしまう。
すぐに純へ返信し、スマホをスラックスのポケットにしまった。
今日も奈美らしき携帯から着信履歴が残っている。
時間は十九時半頃。
落ち着くまで、もう少し時間が掛かりそうだ。
この日、自宅に帰ってきたのは、そろそろ日付を跨ぐ時間。
幸い、元恋人は駅で待ち伏せしていなかった。
(奈美。あと少しだけ待っていてくれないか。必ず…………俺から連絡するから)
豪は、シャワーを浴びた後、ベッドに倒れ込み、泥のように眠った。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!