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「あー、学校に行かないでいいなんて。ほんと、夏休み最高!!」
無事に――いや、無事は無事ではあったんだけど、本当にギリギリのとろで、葵は期末試験で赤点を回避することができた。
それがよほど嬉しいのか、先程からずっと満面の笑みを浮かべている葵である。そして、ベッドに腰掛けながら両手を上げて「うーん」と大きく伸びをした。解放感を体全身で感じるかのようにして。
「良かったね。補習行かないで済んで」
「うん、良かった! 夏休みなのに学校に行って勉強させられるとか最悪だもん。ぜーんぶ憂くんのおかげだよ? ずっと勉強をつきっきりで教えてくれたから赤点取らないで済んだんだから。感謝してます」
「う、うん。そうだね」
なんだろう。素直に喜べないんですけど。あれだけ懸命に教えても全強化、赤点ギリギリとか。これから試験のたびにここまで苦労しなければいけないのかと思うと、さすがにちょっと……。
「いやー、これで思う存分遊びに集中できるよー。さーて、今日はどうしようかなあ。何しようなあ。うふふふふっ」
「えーっと……お喜びのところ申し訳ないんだえど、夏休みは宿題もあるんだからね。しかも山程」
「う……」
一気に表情が曇り空に変化。そこまで勉強したくないんかい。
「あ! でもよくよく考えてみたら憂くんに全部写させてもらえば――」
「先に言っておくけど、宿題は写させないからね? 全部自力でやりなさい」
「そ、そんな……。憂くんには人を思いやる気持ちとかないわけ!? 夏休みの宿題なんかしてたらあっという間に休みが終わっちゃうよ!!」
「ええ……」
いや、宿題を片付けるだけで夏休みが終わる高校生とか普通いないから。小学生だってちゃんと計画性を持って頑張ってるというのに。
でも、期末試験のために勉強を頑張ったのは事実だ。今はそこを咎めるべきではないのかもしれない。
「じゃあ、夏休み一日目として、とりあえずぶらぶらしに外にでも行こうか」
「え? いいの? 私、憂くんに監禁されて夏休みの宿題が終わるまで外出させてもらえないのかと思ってた」
あのー、僕はそこまで鬼じゃないんだけど……。というか監禁ってなにさ。もしかして葵ってめちゃくちゃ僕のことを怖がってるのかな?
なわけないか。
「今日は勉強のことは忘れよう。息抜きも大切だし、楽しみにしてたんでしょ? 夏休みを。海にも一緒に行く約束もしてるし。まずは、葵の赤点回避パーティーでもしようよ」
「え!? パーティー開いてくれるの!? 私のために!?」
「一応ね。頑張ったご褒美として」
「ありがとう憂くーん!」
嬉しさのあまり、葵はまるでタックルのように勢いよく僕に抱き付いてきた。
でもね。その、む、胸が……。部屋着だからブラジャーをしていないみたいで、その柔らかさがダイレクトに僕に伝わってきた。わざとなのかどうかは知らないし分からないけど。
「よーし! パーティーとなればあれだよね。まずはドンキーホーテに行って準備しよ!」
「は? ドンキーホーテ? 準備? パーティーの? 一体何を買いに行こうとしてるわけ?」
「パーティーグッズでよくあるじゃん? 『今日の主役』とか書いてあるたすきとか。そういうのがあった方がパーティーっぽいと私は思うのですよ!」
たすきについては思うところがあるけど、やっといつもの調子に戻ってきた葵の笑顔を見ていたら、それでもいいかと不思議と思えてきた。
やはり葵には曇り空は似合わない。これからもずっと、太陽のようなその笑顔のままでいてほしい。
そう、心の底から思った。
【続く】
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#ハッピーエンド
芙月みひろ
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