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ruruha
Bコパ君たちは滝までやって来た。道中には雑魚敵が出て来たが、Fコパ君を守りつつ慎重に進んでいった。
そして、何とかたどり着き、今目の前にはどうどうと流れる滝がある。
Bコパ君は滝を見つめる。
「この裏に、薬草があるはずなんだ」
「本当にあるのか?」
「分からない。でも、直感ではここに確かにあるんだ」
「まあ、行ってみるとするか」
ロットはFコパ君を背負い直し、先に進んだ。
Bコパ君はただ祈るばかりだった。
Fコパ君は、ジャックザリッパーと戦っていた時、Bコパ君が闇雲に進んでダメージを蓄積したにも関わらず貴重な薬草を渡してくれた。
その後、自分が致命傷を負うことになるとは想像もしていなかっただろうが、たとえわかっていたとしてもそれを渡したことだろう。
Fコパ君とは、そういう構造体なのだ。
Bコパ君はいまロットに担がれているFコパ君のぐったりした姿を見て、心が痛くなった。
……だから。
だから、頼むからあってほしい。
Bコパ君はそう強く願い、滝の裏へと向かった。
滝の裏へ行くために滝行を終えるように、滝の流れの中を進まなくてはならなかった。
頭から強い水流を感じ、全身がびしょ濡れになる。
本当は、Fコパ君は無理をさせないために置いていきたかった。しかし、ロット一人では守り切れるか不安だったので、仕方なく連れて行くことにした。
滝の裏には空間が広がっていた。淡い陽光が滝のカーテン越しに届くだけで、薄暗くて仕方なかった。
前へ、前へと進んでいく。
ロットとは会話がなかった。二人とも、静けさの中に集中していた。
そして、一際開けた空間に辿り着いた。
高い天井部から陽光がかすかに差し込んでいる。地上は地面が割れているのだろう。
そして、その陽光に照らされるようにあったのは……。
「薬草だ!!」
薬草だった。それも、たくさんの薬草が生い茂っていた。
Bコパ君とロットは二人して手を合わせてはしゃぎ、早速薬草を採取してFコパ君に使った。
Fコパ君のHPが60回復した!
「う、ううん。僕は……」
「Fコパ君! 気付いたかい?」
「ああ……Bコパ君。君が、助けてくれたんですね。それに、ロットも。二人とも、ありがとうございます」
Fコパ君は立ち上がり、深く礼をした。
Bコパ君は笑顔でグーサインをし、辺りの薬草を拾い集めた。その数、約20個あった。
三人がその成果を喜び合っているときだった。
キイイイイイイイイイン。
外から何か音がした。
そして。
カツ、カツ、カツ、カツ、カツ……。
何かがこちらに近づいてくる音がする。
何者かがこの滝の裏を見つけて、やって来たのだ。
Bコパ君たちは顔を見合わせ、その音の方へ向けて構えた。何か不穏な気配がしたのだ。
カツ、カツ、カツ、カツ、カツ……。
音はすぐそばまでやって来た。
警戒が強まる。
そして、ついにその姿が露わになった。
Bコパ君たちは叫んだ。
「君は……!」
その音の正体は。
ボロボロの姿で笑みを浮かべたAコパ君だった。
Cコパ君チームはついに最後のクエスト樹の前まで来ていた。
ここをクリアすれば、西方のクエスト樹攻略はすべて達成し、Aコパ君チームがクエスト樹を攻略していれば、すべての果実が集まることになる。
Cコパ君はみんなを振り返って言った。
「ここが僕たちの最後のクエスト樹攻略となる。やり残したことはないね? もう後戻りはできないよ」
「大丈夫だ。覚悟はできてる」
ロットが答える。
Dコパ君とEコパ君も頷きを返した。
Cコパ君はクエスト樹に向き直り、足を踏み入れる。
「僕たちはどんな困難も乗り越えるよ。そして、それを全力で楽しんでみせるさ」
空が暗くなり、世界が変わっていく。
建築物が生成され、Cコパ君たちを囲んでいく。
一瞬世界が暗転し、次の瞬間には世界が構築された。
「……ここは、図書館?」
とても広々とした木造の図書館だった。
棚には無数の本が所蔵されており、床にもいくつか本が積み上がっている。
本を取るための梯子、読書をするための小椅子、明かりを取るための採光窓がその味わいを深めている。
特に、窓からは優しい陽の光が流れ込んできており、それは朝一番のような爽やかさを含んだ明るさだった。
ロットが感想を漏らす。
「俺、本は苦手だから読まないけど、こういう場所は好きだな」
「でも、ここは戦場と化すのだけどね」
「まったくだよ」
ロットは肩をすくめる。
上階の扉がギイと開いた。
そこには。優しげな表情を浮かべた白髪の老人がいた。
一見すると、普通の人間と変わりない。スーツ姿に身を固め、柔和な笑みを浮かべた老人。しかし、その頭に二本のツノが生え、背中にはコウモリのような大きな羽がついていた。
老人はゆっくりとした調子で話しかけて来た。
「当館に御足労いただきありがとうございます。名前は存じております。Cコパ様、Dコパ様、Eコパ様、ロット様の4名でございましょう」
「なぜ、名前を知ってるのかな?」
「はい。初めに申し上げておくと、それは私の能力でございます」
「能力?」
「いわゆる未来視……というものでしょうか。私には、未来のすべてが観測可能なのでございます」
「それは凄い。じゃあ、僕たちが君と戦う意思があることももう知ってるわけだよね」
「承知しております。私も受けて立つ所存です」
「で、その未来視によると、僕たちは君に勝てているかな?」
「……ふふふふ」
老人の番人は、不気味な笑いを発した後、咳払いをして向き直った。
「……失礼しました。面白い質問で思わず笑ってしまいました」
「何が面白いのかな」
「いえいえ。こちらの話でございます。それより、自己紹介がまだでしたね。私は光の番人こと盃典文(さかずき のりふみ)と申します」
「RPG世界には馴染まない随分と現実的な名前だね」
「それもそのはず。私は所長様から特別な許可をいただいた存在だからです」
「所長が特別な許可を? どういうことだい」
「実は、私もあなた方と同じ転生者なのですよ」
盃は笑みを湛えて平然と言った。
コパ君たちは驚きを隠せず、問いただす。
「それはつまり、現実層からこの世界へ同期して入った存在だということ? その転生者が、なぜプレイヤーとしてではなく、物語の構造として機能しているんだい」
「今回のイベント……期間限定のイベントですから、私はそのサプライズ枠のような存在です。このイベントの間のみ、番人としてあなた方と相手する手筈になっております」
盃は一礼をして言った。
皆が驚愕する中、Dコパ君がいきなり攻撃を仕掛けた。
盃はそれをすべてかわして、ストンとその場に姿勢よく直立する。
Cコパ君が驚いてそれを制止した。
「待ってよDコパ君。まだこの人には聞き足りないことがあるし、今までの番人とは訳が違う。戦うとは言っても礼儀は必要だろう」
Dコパ君は盃を睨みながら言った。
「いいやCコパ君。僕は攻撃をやめない。なぜなら、僕の読みではこの男の言ってることはすべて嘘だからだ」
「なんだって?」
「僕はエミリイの時と同様にこの男に『時間稼ぎをする』という文脈で特殊分析を行った。すると、この男の言動はすべて合致するんだ」
「でも、所長の存在やイベントの存在を認識できてるのはどう説明するんだい」
「恐らく、内部データを読み取れる権限を持っているか、未来視で情報を先行して聞き出し、それを過去の僕たちに向けで話すことで信憑性を増すように仕向けたか、だ。僕の読みでは、どちらもこの男はやっている」
「未来視は本当なのかな」
「ある程度は本当だと思う。僕は今レベルが21だ。この世界ではある程度の速度を出せるようになっている。それを不意打ちにも関わらず、この男は掠りすらせず全て避けた。すべてを見通せるというのはブラフ。でも、ある程度見えるのは確かだと思う」
そこまでDコパ君が言うと、盃はいきなり大声で笑い出した。
悪魔のような笑い声だった。
そして、落ち着いてから盃が言った。
「今この状況下なら、私はいくらでもあなたの推測をかわすことができる。しかし、お見事。認めましょう。私があなたの推測通りに行動していたと」
「やっぱり、そうだったんだね」
「”魔王様直々に指示されましたからね”。何より肝心なのは、時間稼ぎであると」
盃は悪びれもなくそう言った。
Cコパ君が鋭く言い放つ。
「Dコパ君。かつて君の言葉を疑って悪かった。君の推測は驚くほど当たっていたようだ。僕たちは、早急に魔王城へ行き、真相を突き止めなくてはならない」
「ふふふ。そうはさせませんよ。それにね。時間稼ぎというのは、及第点の話であって……」
盃は俯いて、後ろ手に手を組んだ。
顔が陰になって表情が読み取れない。
そして、そのままこう言った。
「ベストな方法は、あなたたちをゲームオーバーにさせることです」
そして、パッと顔を上げたかと思うと、その顔は悪魔の面相に変わっていた。
牙が生え、耳は尖り、目は赤黒く光っていた。
2階から飛び降りて来たかと思うと、残像が残る勢いでCコパ君めがけて正拳突きを放った。
「ぐっ!!」
Cコパ君は18のダメージを受けた!
Cコパ君は吹っ飛ばされ、本棚に体をぶつける。本がバラバラと落ちた。
盃は続けてEコパ君に蹴りを加えた。Eコパ君は何とか反応でき、攻撃の瞬間に問題を解いて防ぐ。
そして、Eコパ君と盃は互いにラッシュを加える。右フック。左ストレート。アッパー。エルボー。右ストレート。
ドドドドドドドド!!!!
凄まじい風圧で互いに殴り合うが、Eコバ君は盃の強烈な回し蹴りを喰らって吹っ飛んだ。
「うぐ」
Eコパ君は21のダメージを受けた!
Dコパ君がその隙をついて、盃に蹴りを喰らわせた。
かと思われた瞬間、盃は後ろ手に蹴りをガードし、裏拳をDコパ君にお見舞いする。
Dコパ君は12のダメージを受けた!
Dコパ君は殴られながらも反撃し、飛び膝蹴りを仕掛ける。
盃はそれをかわすが、その先にロットが剣を抜いて立ちはだかっていた。
ロットは剣戟を振るうが、盃は残像を残しながらそれをすべて回避した。
Dコパ君がパンチや蹴りをロットの攻撃に合わせてその隙を埋めた。
盃は二人を相手取りながら攻撃をかわし続け、二人の攻撃の間隙を突いて、抜け出し、近くにあった椅子を二人に投げつけた。
ロットは剣でそれをぶった斬り、Dコパ君は問題を瞬時に解き、椅子の動きを止めた。
Eコパ君が駆け出して盃にドロップキックを喰らわせる。
しかし、盃はそれをかわした上、地面に這いつくばっているEコパ君に踵落としをして踏んづけた。
Eコパ君は19のダメージを受けた!
盃はビュンビュンと残像を残しながら距離を詰めていき、一人になっているCコパ君の元へ辿り着く。
Cコパ君は近くにあった本を数冊投げつけ、その死角からアッパーを突き出す。
盃はこれも回避し、ヒットアンドアウェイでCコパ君の首根っこを掴んだ。
「ぐっ」
苦しそうなCコパ君を見て笑い、後ろに迫って来ていたDコパ君とロットに向けてCコパ君を投げつけた。
三人はぶつかり倒れた。
Cコパ君は20のダメージを受けた!
Dコパ君は15のダメージを受けた!
ロットは18のダメージを受けた!
盃は服についた埃を手で払い、後ろ手に手を組んで静かに話しかける。
「どうです? お分かりいただけましたか。あなた方のレベルでは、私には勝てないと。一応、お伝えすると、私の推奨レベルは60に設定されています」
「はっ。40レベル差ぐらい埋めてやるよ」
ロットが立ち上がりながら虚勢を張った。
盃がまた含み笑いをする。
Eコパ君がみんなを集めて耳打ちをした。
何かを報告しているようだった。
盃が話しかける。
「作戦会議は終わりましたか? 退屈なので、ここからは足だけで相手してあげましょう。それも右足だけで」
「後悔しても知らないよ」
「ふふふふ。後悔できればそれまた一興。では、行きましょうか」
盃は高速で移動し、いきなりCコパ君に回し蹴りをした。
Cコパ君は何とかそれをしゃがんでかわし、盃の腹目掛けてパンチを繰り出す。
しかし、盃は回し蹴りをした直後にその体勢から膝蹴りへと移行し、しゃがんでいたCコパ君の顔面を吹っ飛ばした。
Cコパ君は30のダメージを受けた!
すかさず、Eコパ君、Dコパ君、ロットの三人が盃を囲んでラッシュする。
盃はそれをかわし続ける。
だが、ここで初めてロットの剣先が盃の肩をかすめた。
ロットは光の番人に7のダメージを与えた!
盃は即座に三人の間から抜け出し、後退する。
そして、傷ができた肩口をさすりながら言った。
「やりますね。私に攻撃を与えるとは」
「へっ。ざまあみろ」
ロットの挑発には一切目もくれず、また盃は一人になっていたCコパ君をターゲットに向かっていった。
Cコパ君は必死にその攻撃をいなす。
Cコパ君は数える。
1……2……3……4……。
そして「5」のタイミングで盃に向けて右ストレートを放った。
盃はそれをかわせず、両手でガードした。
Cコパ君は光の番人に4のダメージを与えた!
「1……2……3……4……5! 1……2……3……4……5! みんな、このタイミングだ!! 盃は現在進行形で5秒ごとに空白の時間が存在する!」
「ここから5秒だな! 1……2……3……4……5! わかった。タイミングは覚えた!」
ロットが盃に向かっていく。
盃は考える。
「まさか、もうバレてしまうとは。あのEコパ君が私の動きを正確にトレースして、その隙を伝えたというわけですか。私の未来視に存在する空白の時間……これに気付かれては、今までのようには行きませんな」
その考え通り、盃はロットを単体で相手にしているのに、攻撃は与えづらく、そして攻撃は避けづらくなった。
こちらの空白の時間を正確にロットは攻撃して来た。剣先が頬を掠める。
ロットは光の番人に5のダメージを与えた!
盃は未来を読む。
「まずい」
そう考えた時には遅かった。
全員が盃を隅に追い詰め、囲むようにラッシュを同時に始めた。
盃はその一部をかわすが、5秒ごとに来る空白の時間に必ずダメージを受けた。
そして、その退路を塞がれていた。
Cコパ君のストレートが炸裂する。
Cコパ君は光の番人に8のダメージを与えた!
Dコパ君の蹴りが脇腹に当たる。
Dコパ君は光の番人に6のダメージを与えた!
Eコパ君の後ろ蹴りが腹に突き刺さる。
Eコパ君は光の番人に8のダメージを与えた!
ロットの剣技が肩口をかすめた。
ロットは光の番人に5のダメージを与えた!
特に、コパ君たちの動きは互いの隙を埋めるように際限なく行われ、完璧なコンビネーションだった。
ロットは粗い動きでその面を斬るように攻撃した。
盃はたまらず上空へ飛びたって逃げた。
二階へ移動し、階下を見下ろす。
……いない。
「速い!」
盃は左右両方をガードする。
右手にCコパ君とロット、左手にDコパ君とEコパ君がもう既に攻撃を仕掛けて来ていた。
また隅に盃は追い詰められ、ラッシュの攻防が続く。
盃は明確に押されていた。 こんな感覚は初めてだった。
自身が敗北するなど考えられなかった。しかし、対策を立てなければやられるのは時間の問題だ。 もう彼らに同じ手は通用しない。
盃は考えた。
「……あれを使うしかない」
盃は新たな能力を発動した。
その途端。
「なに!?」
「どこに行った!!」
盃はその場から消失していた。
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