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「盃はどこに消えたんだ!?」
Cコパ君たちは辺りを見回した。図書館内を四人で手分けして捜索するが、どこにも見当たらない。
盃が消えた辺りに集まり、四人は話し合った。
「誰か盃がどこに行ったか見えなかったかい? 僕は見えなかった」
「俺も見えなかった」
「僕もだ」
「僕は……いや、分からない」
「どうしたんだ。Eコパ君。何か見えたならはっきり言ってくれ」
「分からないんだ。僕が観測したままを伝えると、盃は僕達に背を向けて、その本棚に向かって飛び込むような体勢をとった。そして、突然消えてしまったんだ」
「飛び込むような体勢?」
Cコパ君は本棚を観察する。
何か仕掛けがあるのかと思い、本棚を触ってみるが特に変わった様子はない。
Eコパ君を振り返って聞く。
「それは確かなのかい」
「うん。観測した事実は事実だよ」
「Dコパ君。どう思う」
「ううん。分からない。盃が何か能力を使ったのだろうけど……」
「本の中に入り込んだりしてたりして」
ロットが適当に言った。
全員がロットに目線をやった。
ロットは慌てて両手を振りながら弁解する。
「いや、本気にしないでくれよ。まさか、そんなバカな話があるわけないし」
「待ってくれ。それは、あり得るかもしれない」
「え?」
「もし、盃の能力が未来視以外に本の世界に入り込める能力を持っていたとすれば……この図書館というステージにも意味が整合する」
「マジで言ってるのか?」
「マジさ。本に隠れてしまえば、それこそ時間稼ぎの目的は達成される。それに、原理的にあり得なくはない。盃が接続点を強制的に本に付加し、物語の世界を行き来できるのは、まさに疑似世界線移動そのものだ。所長だけが可能な能力を、盃は本という構造体に限定して行えるのかもしれない」
「なんてやつだ!」
ロットは地面を蹴る。
Cコパ君は盃が消えたあたりの本棚を調べ始めた。そして、一つずつ本に手を差し伸べる。『世界文学全集Ⅰ』『文学論』『児童文学全集』……。
そして、ある本に手を差し伸べた時、それは起こった。
「見つけた!」
Cコパ君はみんなに見えるようにその本に手を差し伸べた。
その本に触れようとすると、手だけが異空間に消えていく。
つまり、この本が接続点となって疑似世界線を構築しているのだった。
Cコパ君がみんなに向けて言った。
「ここは、奴の城のような世界かも知れない。注意して攻め込もう」
「分かった」
皆んなは頷き、その本に向けて助走をつける。
そして、ばっと走り出し、その本に向けて飛び込んだ。
すると、体は異空間へと移動し、物語の世界へ同期した。
四人が目を開けると、そこはある木造の民家の前だった。
Cコパ君が先導して、その扉を慎重に開ける。
そこは、パチパチと火を立てた暖炉、素朴な絵画、センスのいい椅子にテープル、そしてベッドがある一室だった。他に部屋はない。
そのベッドに誰かが眠っていた。
Cコパ君はみんなに合図をし、ゆっくりとその肩を叩いた。
ベッドで寝ている人物はこちらをゆっくり向いた。
次の瞬間。
「グルァガァァァァァァァァ!!」
「これは、狼か!!」
老婆の服に身を包んだ狼だった。狼はこちらに牙を向けて襲いかかってくる。
ロットが間に割って入り、狼を斬りつけた。
狼は苦しそうに下がり、そしてこちらを睨みつけている。
その時、後方から扉がバンと開き、赤い頭巾を被った少女がノコギリを持ってDコパ君に襲いかかった。
Dコパ君は少女の攻撃をかわし、その武器を蹴り飛ばした。
Cコパ君が叫ぶ。
「まずい。ここは、接続点を無理やり作ったせいで安定化が未成熟だ。物語が暴走し、僕達を排除しようとするプログラムが働いている!」
「くそっ。書名をちゃんと見てなかったけど、ここは童話の世界か!!」
狼と赤ずきんは四人を囲み、じりじりと迫ってくる。火蓋は突如切られた。
狼が再びCコパ君に向かって噛みつこうとする。Cコパ君はそれをかわし腹部に膝蹴りを強打させる。
「がはっ」
汚らしい唾を吐き、狼はそのまま左ストレートも食らった。
狼はベッドへ吹っ飛ばされた。
赤ずきんは家の中に置いてあったチェーンソーを起動し、めちゃくちゃに振り回した。
四人は必死にかわし、ロットが赤ずきんを後ろから掴んだ。
「ころすぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
赤ずきんは人間の声とは思えない甲高い声で叫び、チェーンソーをなおも振り回そうとする。
Dコパ君が横からチェーンソーを掴み、それを掴んで投げ飛ばした。
「グアアアアアァァァァァ!!」
それが狼の腹に当たり、狼は絶命した。
しかし、裂かれた腹の中から老婆が出て来て、大きな鋏を持って襲いかかって来た。
四人がもみくちゃになりながら戦っていると、突然ベッド下から盃が現れ、不意打ちの蹴りを喰らわして来た。
「ぐはっ」
Eコパ君が横から吹っ飛ばされ、赤ずきんとも激突する。
小さな家全体が大きく揺れ動く。
Dコパ君とロットは盃を相手にし、Cコパ君は老婆の攻撃をかわし続ける。
時間感覚を正確に記憶していたDコパ君は完璧なタイミングで盃の空白の時間への攻撃を再現した。
盃がDコパ君のパンチで壁に激突する。家の壁がぶっ壊れ、外へと盃は飛び出す。
Dコパ君とロットがそれを追いかけ、Cコパ君も老婆に強烈なハイキックを打ち込み、老婆は戦闘不能になった。
Eコパ君は抑えていた赤ずきんを解放し、そのままみんなと合流する。
盃は高速移動で逃げ出し、前方に手をかざして接続点を創造した。 そして、そこに飛び込んだ。
それを見たDコパ君が大声で後ろにいる者に声をかける。
「盃が本の世界から抜け出した! 接続点が閉じるぞ! もし、接続点が閉じれば僕達は一生この世界に閉じ込められてしまう……即刻、ゲームオーバーだ!!」
全員が全力で接続点へ向かって走った。
接続点が消失していく。そこにギリギリでDコパ君、ロットが入り込み、消失寸前でCコパ君が飛び込んだ。
Eコパ君は間に合わなかった。
……かと思われた時、その接続点からにゅっと手が差し出され、まだ中にいたEコパ君を残りコンマ数秒でなんとか救出した。
図書館に戻ると、盃が走っていくのが見えた。
そして、またある本へと世界線を移動した。
「いい加減にしろよ!!」
ロットが苛立ちを隠しきれずに言う。
Cコパ君が分析する。
「盃の目的は僕達の時間稼ぎであり、ゲームオーバーにすることだ。このまま追いかけても埒があかないだろう」
「なら、どうする?」
「僕に考えがある」
Cコパ君はさっきと同じ手順で盃が入った本を探し出し、ロットに手渡した。
ロットは困惑した顔でCコパ君を見る。
Cコパ君はニヤリと笑って言った。
「ロット。この本に『カマオーハオレスペシャルアタック』を打ち込んでくれ」
「え? 本に?」
「うん。頼むよ」
「わ、分かった」
ロットは本を空中に放り投げ。剣を構えた。
そして、その本に向かって必殺技を放った。
「カマオーハオレスペシャルアタック!!」
ロットはMPを10消費して、スペシャルアタックを使用した!
凄まじい衝撃波が本にぶつけられた。本は本そのものを消失し、消し炭になった。
その途端、盃が驚いた表情で出現した。
すぐさま四人は盃を囲み、またラッシュ連携攻撃を加え続けた。
盃はたまらずまた本の中に逃げ込む。そして、その度にロットの声は響いた。
「カマオーハオレスペシャルアタック!」
「カマオーハオレスペシャルアタック!」
「カマオーハオレスペシャルアタック!」
構造体及び物語として機能しなくなった本から、盃はその度に強制的に脱出させられた。Cコパ君の作戦は、疑似世界線を消滅させ、盃の能力を無力化したのだった。
しかし、盃が6度目の逃走を図った時、ロットはもう限界だった。
MPが底をつき、疲労感でいっぱいだったのだ。
ロットが舌打ちをする。
「くそっ! あともう少しなのに!」
「心配はいらないよ」
「え?」
「いまのは効率を重視した作戦であって、僕達は盃を追い詰める手立てが他にもある」
「それは……なんだ?」
Cコパ君は盃が隠れた本を取り出して、そのページをビリビリに破き始めた。
その工程が全て済んだ瞬間、盃はまたその場に出現した。
Cコパ君が盃に向かって宣言する。
「盃。もう追いかけっこは終わりだよ。君の能力はすべて看破し、無効化した。これ以上足掻いても、君は吠え面をかくだけで僕たちを倒すことはできない」
「……ふふふふ。時間稼ぎはもう十分。ならば、そろそろ私も本気を出しますかねえ」
盃をスーツのネクタイを外した。
そして、空間が張り裂けるような声で叫んだ 。
「覚悟はいいな? ここからは、手加減抜きだ。目にもの見せてくれる!!」
盃は雄叫びを上げる。
その盃の周りからオーラが放ち始める。
全員が身構えた。
くる。
核問題が。
「はあっ!!」
盃がオーラを解放した直後、凄まじい速度で四人全員に一人一人蹴りやパンチを入れ、ふっと立ち止まった。時速800キロメートルは出力していた。
全員が同時に膝をつく。
Cコパ君は41のダメージを受けた!
Dコパ君は36のダメージを受けた!
Eコパ君は49のダメージを受けた!
ロットは41のダメージを受けた!
盃が話し出す。
「ふふふふ。オレの攻撃が見えたか? 問題が見えたか? これでもオレはまだ60%しか力を出していない……。100%の力を出せば、時速1000キロメートル以上は確実だ。この音速にお前らはついてこれるか? ふふふ」
盃は一人称も口調も変わっていた。
力を解放したことで凶暴化し、理性は吹き飛んでいたのだ。
興奮し、熱を帯びる。
盃はその感覚こそが生きていると感じる瞬間なのだと思った。
そして、それは魔王様に仕えることと同義……。
その考えは、Cコパ君の声によって断ち切られた。
「それでも、君には空白の時間が存在する。僕達に勝機がなくなったわけではない」
「なくなったさ」
「なぜ?」
「その空白の時間は、この私の力の解放によって、ほぼ完全に消し飛んだ。なぜなら、未来視は5秒から15秒まで拡張され、なおかつその空白の時間はランダムで訪れる。お前たちにそれが予測できるかな?」
「なん……だって」
「ふははははは!! まさに、無敵の能力!! オレに敗北の言葉は不似合いだ!!」
「いや、よく似合ってるよ」
「……なんだと?」
「その自信過剰で慢心する感じ、僕が読んできたあらゆる物語において、悪役が敗北する典型的パターンだよ。負けの前兆って言うのか な。あまりにも月並みでつまらない」
「ふん。しかし、物語と現実は違う。残念だったな。お前の負けだ」
「現実? これは、ゲームだ。そして、現実もまたゲームだ。君はそこを履き違えている」
「何が言いたい?」
「君は”このページ”で敗北する。それも、君の最高出力を出してなお、だ。その変えられない未来を君自身の目で先行して見てみることだね。10秒後、君は敗北している」
「面白い。なら、きっちり10秒後にお前を殺してやる!! 覚悟しろッ!!」
盃はCコパ君に向かって最高出力で突進した。
Cコパ君の顔面に風穴が空いた。
そう見えたのは。
「”このページ”」
Cコパ君が盃の攻撃をかわし、盃の頭がパックリと割れていたからだった。
「な……なぜ……だぁぁぁぁぁぁ!!!!」
Cコパ君は光の番人に99999のダメージを与えた!
盃は光の粒子となって消えていった。
辺りの空間が戻り、緑の世界に変わる。
ロットたちがCコパ君に駆け寄ってくる。
「Cコパ君!! 大丈夫か?」
「うん。平気。でも、全員ボロボロだね」
Cコパ君は笑った。
そして、道中拾っておいた僅かな薬草をみんなで分け与え、回復した。
落ち着いた時、ロットがCコパ君に聞いた。
「なあ、あの時、何があったか説明してくれないか」
「何があったって、君も関与してるじゃないか」
「いや……そうだけど、俺がやったことは紙を君にこっそり渡しただけで、何もわからないんだ」
「分かったよ。初めから説明しよう」
Cコパ君は話し出した。
「まず、盃が能力を解放した時、僕達四人全員に対して、目にも止まらぬ攻撃があった。そこで、盃自身はこう思っていたはずだ。「今の攻撃によって、誰も問題を目にしたものはない」と。それは、本人の発言からも確かなことだ。だけど、唯一この中でその問題を視認した人物がいた。それは、Eコパ君だ。Eコパ君は自分が問題を認識できなかったフリをして、そのまま問題を記憶していたんだ。そうだよね? Eコパ君」
「うん。その通りだよ。僕は視認していた。でも、その問題は僕一人では解けなかった。だから……」
「Dコパ君に問題を託した。そして、Dコパ君は問題を見事に解いたんだ」
Dコパ君は照れくさそうに言った。
「大したことじゃないけどね」
「その問題もちゃんと見てなかったんだけど、なんで書いてあったんだ?」
「ああ、それは」
問題は、以下の通りのものだった。
栞問題
栞はどのページに挿さっている?
『栞問題』
栞はどのページに挿さっている?
………
『栞問題』
私はその本を手に取った。
そして、瞬時にパラパラとめくる。
36ページ。
ここに決めた。
「いや、ダメだ」
私はそう直感する。
4ページ戻ってそこにする。
「やはり、違うな」
私はそのページから124ページ先に進み、3ページ戻ってそこに目を止める。
「まだ、違う」
25ページ戻り、2ページ先に進む。それから13ページ戻り、31ページ進んだ。
「ここか?」
………
私は、このページに栞を挿した。
「なんだこりゃ」
「これは、こういうカラクリなんだ。まず、問題は「栞はどのページに挿さっているか」だ。そして、その下には『栞問題』というタイトルと「栞はどのページに挿さっている?」という一言一句問題と同じ文章が並んでいる。さらにその下に『栞問題』と題されたものが続き、その後本文に接続する。本文では、36ページから始まり、その後進んだり戻ったりして、最終的に計算すると148ページとなる。でも、これは罠なんだ。答えは148ページなんかじゃない。そのヒントは、”『栞問題』というタイトルが連続することにある”」
「なるほど……つまり?」
「初めの『栞問題』が作品として始まったことを指すなら、その後に続く『栞問題』は作中作品という位置付けになる。そして、その作中作品に描かれてある最終的な答えは148ページに収束するが、初めの『栞問題』の答えではない。では、作中作品ではない『栞問題』の答え……つまり、栞はどこに挿されたのかを考えると、それは「……」で作中作品と区切られた最後の一文「私は、このページに栞を挿した」にある。つまり、答えは『このページ』だ」
「はあ……そんなのアリかよ。よく分かったな」
「特殊分析ならぬ憑依分析……イタコのおかげかな」
「イタコ?」
「こっちの話」
Dコパ君は空を眺めた。
そして、ロットはCコパ君に向き直り聞いた。
「ここまでは分かった。その時、渡された本のページに書かれたメモ……これは、今思えば盃を本から出すために破いた本のページを再利用したものだったんだな……が、俺のところに渡ってきた。そこには、『このメモをDコパ君に渡してくれ』とあった。だから、俺は盃が何やら物思いに耽ってる隙に、それをCコパ君に渡した」
「うん。その通りだね」
「でも、なんでDコパ君はCコパ君に渡したんだ? 自分で謎を解いたんだから、自分で盃を倒せばよかったのに」
Dコパ君がロットに向けて言った。
「僕は相手と駆け引きすることに長けていない。そういった能力はCコパ君が最も高いと判断して、メモを渡したんだ」
「駆け引き?」
「そのまま盃に謎を解いたぞーなんて言ってみればいい。時速1000キロメートル超えの速度で突っ込まれて終わりさ」
「でも、Cコパ君は軽々と避けただろう? あれは、どうして」
「それこそ、駆け引きの結果なんだよ」
Cコパ君が割って入る。
「盃の超人的な速度に対応するには、盃と同様に”未来を読む必要”があった。正確には、僕が”未来を創る”んだ。詳しく言うと、盃は速度が速いゆえに小回りが効かず、直線移動しかできなくなっていた。そして、挑発された結果、僕にまっすぐ向かおうとしているなら尚更だ。そこを狙った。盃の攻撃を避けて答えを突きつけるには、最低でも距離と速度、タイミングの三要素を知っておかなければならなかった。だから、僕は盃に対して「最高出力をだしてもなお」「10秒後」に敗北すると挑発した。そして、見事に盃はその速度、そのタイミングでやってきた。僕は盃との距離を目測で計算し、どのタイミングで避ければいいかを計算した。その結果、弾丸を避けるような無茶な芸当が可能になった。僕の身体能力もこの世界では強化されているからね。レベルが20以上あったからこそできた攻略法だ」
「な、なるほど……」
ロットは感激した。まさか、自分が渡したメモにそこまでの意味が込められていたとは思わなかったのだ。
Cコパ君が立ち上がる。
「さあ、時間がないかもしれない。何せ僕達は盃に時間稼ぎをかなりされてしまったのだからね」
「……ああ!」
ロットも立ち上がった。
クエスト樹から果実が転げ落ちた。
そして。
「あ、果実が!!」
「……知恵の大木へと集まっていく」
集めた三つの果実が空中を浮遊し、中央に鎮座する知恵の大木へと集約されていった。遠くから、三つの果実が浮かんできているのが見える。
Cコパ君が言った。
「どうやら、向こうのAコパ君チームも果実は集めていたらしいね」
「みたいだな」
「さて、魔王城はどうなったかな」
その途端。
知恵の大木が輝きを放ち、空へとその光を解き放った。
そして。
轟音とともに、空から禍々しい城が降りてきた。
城から光線が伸び、そこで静止した。
Cコパ君はそれを見て呟いた。
「……さて、魔王討伐と行こうか」
結末は迫っていた。
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ruruha