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翌朝。

いつもより早く目が覚めた。


早瀬くん、体調大丈夫かな・・・。


会社に行く準備をしながらも隣の様子が気にかかる。

少し早目に準備をし終えて、さすがにちょっと気になって隣へと足が向く。


チャイムを鳴らして、しばらく待ってみるも。

応答なし。


ってことは、大丈夫なのかな?

会社行ったのかな?


こういう時、簡単に様子を聞くことも出来ないのかと、今更ながら連絡先を交換していない現実に少しもどかしさを感じる。

壁を挟んですぐ隣にいるのに。

案外簡単な連絡方式が繋がってないと、ちょっと遠く感じる。


なら。まっいっか。

会社行こ。


「望月さ~ん。内線、電話入ってます~」

「は~い」


仕事中、会社の内線が入って電話に出る。


「もしもし望月です」

『もしもし。早瀬です』


あっ、早瀬くん・・・。

やっぱ会社来てたんだ。


「あっ、お疲れ様です」

『お疲れ様です。昨日はお世話になりありがとうございました』

「あっ、いえ・・」

『で、早速なんですが、ちょっとプロジェクトのことでご相談したいことがあるので、この後ご都合よろしい時間にお時間頂きたいのですが』

「あ、あ~。今・・ならちょうど都合つきますので今からなら大丈夫です」

『では・・今なら第2会議室が空いてると思うので、今からそちらで会議大丈夫ですか?』

「了解です。では向かいます」

『よろしくお願いします』


電話を切って、自分のプロジェクトの書類も持参して第2会議室へ向かう。


早瀬くん。電話の声、大丈夫そうだったな。

にしても、内線で話すのもなんか新鮮。

結局私もすれ違いでプロジェクトの話相談出来てなかったからちょうどいいや。


その後、第2会議室へ到着。


ブラインド閉まってるけど、もう早瀬くん来てるのかな。


「失礼します」


ドアをノックして中に入ってみるけど、まだ早瀬くんいないっぽいな。

とりあえず座って待ってるか。


と思ったら、ドアをノックする音。


「失礼します」


するとすぐに早瀬くんの姿。


「お待たせしました」

「いえ。私も今来たとこなので」

「そうですか。ならよかった」


カチャ。


そう言いながら会議室の鍵を閉める音。


「鍵?」

「・・・気になります?このプロジェクト極秘に進めてることだから、誰かに邪魔されて漏らされても困るので」

「あぁ。そっか。そういうことなら。とりあえず早瀬くん体調無事戻ったみたいで安心した」


そう言って早瀬くんに背を向けて席につこうとすると。


ふわっ。

背後からなぜか抱き締められて。


「えっ?ちょっと早瀬くん!?」


ちょっと、これ今いきなり何起きてるの!?


「昨日は・・ありがとう」


後ろから抱き締められたまま肩越しで耳元でそっと囁かれる。


いや、このシチュエーション・・仕事中ダメでしょ。

いや、仕事だからだけじゃないけど。


「早くお礼が言いたくて」

「いや、だからって、今じゃなくても・・・」

「ホントは。昨日こんな風に抱き締めたかった」


ドキッ。

こんなシチュエーションでそんな甘い言葉囁かれたらトキめかない方がおかしい。


「はや、せくん・・・。仕事中だし・・」

「わかってる・・。だけどもう少しこのままでいさせて」


仕事中でこんな公私混同なことダメだとはわかっていても、このドキドキと共に振り払うことも出来なくて。


「でも風邪うつしちゃいけないし、オレも余裕なかったから。だけど・・・ホントはもっと触れたくて仕方なかった」


耳元で昨日みたいに優しく囁く彼の声に、胸の奥がキュンとしてドキドキが止まらなくて。


「昨日は来てくれて嬉しかった。おかゆもありがとう」


なんなの、この優しさ攻撃。

体調治ってるのに、まだこっちモードで攻撃されるとは。

正常な状態でのこの甘々優しさ攻撃もなかなか攻撃力が高い。

ドキドキさせてくれてるのはわかってるけど、思った以上に甘々で最近ちょっと気持ちがついていけなくなりそうになる。


そんなストレートな言葉に、私はどう反応すればいいのだろう。

私はどんなモードでこの人に反撃したらいいんだろう。


実際この人と社内で付き合ったりしたら。

こんな風にこそこそ隠れて秘密の甘い時間とかも過ごしたりするのかな。

あっ、他の人ともこんな風にしてるかも・・なのか。

あ~勘違いしてしまう自分と、そうならないように他の女の影を気にしてしまう自分と、同時に現れて結局どうしていいかわからなくなる。


「か、風邪早く治ったみたいでよかった!」


気持ちを誤魔化すように雰囲気を明るくする。


「透子の看病のおかげ」


そう優しく言いながら私の肩にそっとアゴを乗せて更に優しく囁く。


「なら・・よかった・・」

「ホントはまだまだ看病してもらって甘えたかったけど。透子に迷惑かけるし仕事も気になるから頑張って早く治した」


なんか年下なのに、エースなだけにそういうとこしっかりしてるというか。

意識は高いんだよなぁ、早瀬くん。


ギュッ。


「よしっ。これでパワー注入出来た!」


すると。

ギュッと一瞬力強く抱き締めたかと思えば、今度は明るくそう言ってパッと手を離す。


「じゃあ、プロジェクトの話進めましょうか」

「あっ、うん・・」


えっ、何。

勝手に抱き締めといて勝手にパワー注入とか言って、そこそこいい雰囲気に持っていって、自分だけで終了されたんですけど。

あ~、この自由な感じにも慣れないとな。

これどんどん知らない間にその気にさせられて振り回されるヤツだ。

こっちの気持ちは全然関係ないんだろな。

いや、そもそもそういう関係か。

ドキドキさせ合う関係だったと、また改めて自分で再認識。

だからこういうのあると仕事仲間はちょっと厄介なんだよ・・。


「何回かうちの部署尋ねてきてもらったみたいで。オレいない時だったみたいですいません」


そして早速仕事モード。


えっ、さっきまでの甘い雰囲気どこ行った?

数秒前まで私抱き締められてましたよね?

甘い言葉囁かれてましたよね?

さっきまでのは私だけの幻ですか?


この切り替わりの早さ、侮れん。

だからこの若さでエースなのか。

どれだけ世の女性を手玉に取って渡り合ってきたんだ。


いやいや、そうじゃなくて。

私のが年上で先輩なのにしっかりしないと。


「いえ。あっ、早瀬さんの書類も拝見しました。さすがの業績で今後のプロジェクト頼もしいです」

「ありがとうございます」

「あっ、これは私が手掛けた商品やプロジェクトです。今後の参考にしてください」

「望月さんの活躍は十分把握はしてますけど一応確認しておきますね」


他部署までの情報すでに仕入れてるとかさすがだな。

私はなんとなく噂で知ってただけで自分の部署の仕事で手一杯なのに。


「それで。これ。今回のプロジェクトについてちょっと考えてみたんですけど」


そう言われて差し出されたプロジェクトの書類に目を通す。


「へ~ちょっとこれ今までの企画の感じと違うね。体験企画?」

「はい。今までうちが提供してきた企業とコラボしての体験企画です」

「へ~面白そう」

「そしてその体験企画はカップル限定です。今回のコンセプトは男性と女性共通の喜びや楽しめる商品。両方の部署で手掛けた商品をまたこの企画で注目させることも出来ますし、いろいろな商品を世に出してきたうちだからこそ出来る企画を出来たらと考えてます」

「まぁ確かに今までの商品は年月が経つと売れ行きが少し落ちて来てる物もあるから、今回の企画で再度注目させるとまたそれも売れ行き上がるかもしれないね」

「はい。それで更に新しい商品にも繋げられたらと思ってます」

「うん。いい企画かも。考えがいがありそうな企画だね」

「なので、今まで手掛けた商品の中でこのプロジェクトに使えそうなそちらの商品をピックアップして頂けないかなと思いまして」

「なるほど。使えそうな商品検討してみますね」

「この企画書にあるように、その商品を取り扱った企業とのコラボと新商品の提案。いくつかいい案が出たらそれをもっと形にしていきます」

「うちの部署の企画とそちらの部署の企画が上手く交われば面白いことになりそう」

「なので、今回頂いたそちらのリスト。望月さんが手掛けた商品と一緒にすべての商品も載せて頂いてるので助かります。参考にさせてもらいます」

「全部載せておいてよかった。そちらから頂いたリストもそうして頂いてたので、同じようなのがいいかなと」

「さすが。話が早いです」

「じゃあ、またピックアップ出来次第ご連絡しますね」

「よろしくお願いします。あっ、じゃあオレ次の会議あるんでこれで失礼します」

「はい。ではまた」


プロジェクトの話を早々と終わらせ早瀬くんは次の会議へ。


私は、この切り替えを整理する為に未だ同じ会議室で少し休憩。


にしても、すごいな。

よくあんなことしておいて、こんなあっさりと仕事モードに戻れるな。

しかも二人きりなのにこの切り替えっぷり。

ホントに仕事にも支障ないんだな早瀬くん。

あの子の切り替えスイッチどうなってるんだろう。

名前の呼び方も話し方も状況ごとに違う。

でも前の涼さんとの恋愛の時は秘密の恋愛って感じしたけど。

早瀬くんは本気で付き合ってないからか、仕事とプライベートでの私との接し方が徹底してるというか。

いや、だからと言って、たまにからかわれはしてるけども。

それも向こうは楽しんでるんだろうな~。

程よい息抜きみたいな感じ?

まぁ、だからこそちゃんと仕事モードの時は仕事しやすいのかもしれないけど。

私には到底わからない感覚。


あっ。

そう言えば酔いつぶれたまま、美咲と修ちゃんに迷惑かけっぱなしだった。

今日帰り、店寄ってこ。





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