テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
アイドルとはいえ、歌やダンスだけじゃなく、色んな仕事に挑戦することは多々ある。
俺個人で言うと、声優業に俳優業……最近はピンでのバラエティー番組出演も増えてきた。
他のメンバーもそれぞれ、ドラマやCMに引っ張りだこだったり、ハイブランドのアンバサダーになったりとかさ。
グループでの仕事も、多岐に渡る。
バラエティーもだし、歌番組もたくさん呼んでもらって。
あと、メンバー全員でのCM撮影とかも楽しい!
そう、ありがたいことにさ、ホントに色んなところからお声がけいただいて、充実した毎日を送らせていただいてるわけよ。
そんな中で時々、トンチキ……………ゴホン、突拍子もない仕事も舞い込んだりする。
そのひとつが、コレ。
「佐久間くん、可愛い~~!」
「お前さ、ホンット似合うよな、そういうの」
ラウがニッコニコしながら、大きな手で俺の髪(正確には俺の髪じゃなくニセモノ……ウィッグなんだけど)をよしよし撫でる。
その隣で深澤が、若干引き気味に呟いた。
「にゃは、よく言われる~」
言われるものどうかと思うけどさ。
だって俺、れっきとした男の子だもん!
でもこういう仕事、マジ多いんだよなぁ。
……女装、なんだけど。
「いやでも、本当に可愛いよ、佐久間」
「あべちゃんの言い方がなんや本気で怖いねんけど……」
「なんでよ。っていうか佐久間だけじゃなく、舘さんも可愛いから」
「ありがとう」
「…………ブハッ……!!!お、おま…………母ちゃんそっくりすぎてウケる……!!」
「翔太、笑いすぎだろ。でも、まあ……似てるよなぁ」
「俺も鏡見て、母親が居る……って思ったからね」
俺と涼太だけ女装、あとのメンバーはスーツ姿。
俺もそっち側がいい!って思わなくもないけど……これはこれで、楽しかったりもする。
女性らしい仕草を意識したり出来るだけ可愛く見せるって、演技の勉強にもなるっていうかさ。
仕事の幅も広がるじゃん?
そんなことを思いつつ、休憩中の楽屋で楽しそうに話すみんなを眺めていると――
「あ……」
手にしていたスマホがブルっと震えた。
液晶に視線を落とせば、カナダの空の下に居る……恋人の名前。
メッセージアプリを開いてみると、『今、電話できる?』とあった。
ちょうど休憩中です!
ナイスタイミング、蓮!!
『ちょっとトイレ!』と言って、俺は楽屋からそっと抜け出す。
……女装のままだから、出来るだけ顔を俯けて。
だって、今このCM撮影してるって知らない人に見られたらさ……流石にぎょっとされちゃうだろ?
ってか、この格好で男子トイレもマズイよなぁ……じゃ、やっぱあそこか。
俯いたまま小走りになって、非常階段まで急ぐ。
重いドアを開いて、きょろきょろと前後左右を確認。
人影はない、気配もない、声も聞こえない。
「……よし」
ドアから身体を滑り込ませ、物音を立てないよう慎重に閉める。
誰かがドアを開いてもすぐには分からないよう、少しだけ階段を下りて踊り場で足を止めた。
『蓮、お待たせ。電話大丈夫だよ!』とメッセージを送ると、すぐ既読がつく。
その直後、電話がかかってきて……応答ボタンを押すなり、画面いっぱいに蓮の顔が映し出された。
「わあっ!?」
『……ちょっと。何驚いてんの』
「だっ、だって……テレビ電話だとは思わなくって!」
普通の電話だと思って出てみたら、顔面国宝の彼氏の姿。
そんなん、びっくりするに決まってんじゃん!
ぷうっと頬を膨らませる俺に、画面越しに蓮が笑う。
じっとこちらを見て、目を細めて……
『ほんとに可愛いな、さく美ちゃん』
「ふえ……っ、わ、わわっ……!」
しまった、すっかり抜け落ちてたけど俺、女装だった!
別に、蓮に見られるのだって初めてじゃないけど……やっぱりちょっと恥ずかしい。
慌てて身を隠そうとするけど、スマホ持ってるからどうにもならなくて。
ひとりであわあわしてる俺の様子を見た蓮が、ますます楽しそうに目を細めた。
『隠さないでよ。さく美ちゃんが見たくてテレビ電話にしたのに』
「なっ……なん、なんで……今日、撮影って、知ってた……?」
『まあ一応。俺もナレーションで参加してるし。撮影日も前もって、マネから聞いてたし。それに、スケジュールは共有してるし』
「う……そ、そっか……」
『まあ……ほんの20分くらい前に、みんなから「いまテレビ電話してきたらさく美が見れるぞ」って連絡来たから』
…………………………。
「は、はぁっ!?そ、そん……い、いつの間にっ!?」
『休憩に入ってすぐくらいじゃない?あべちゃんと康二なんか、隠し撮り写真まで送ってくれたけど』
「んなっ」
何やってんのぉ、2人ともぉ……!!
両手で顔を隠したいけど、スマホを持ってるから無理で。
代わりにスマホの方を伏せようとすると、蓮から非難の声が上がった。
『ちょっと、隠さないでよ。もっとちゃんと見せて』
「だ、って……恥ずかしいじゃん、こんな姿……」
『なんでよ。佐久間くんの女装なんて初めて見るわけじゃないし。なんならいつも堂々としてるのに』
「……それは」
確かにそう。
女装するのって大体、グループ仕事の時が多い。
今は日本に居ないから仕方ないけど、蓮もほとんどそこに居る。
そのたびに『蓮、蓮!俺、可愛い?』なんて言って、絡みついてた。
蓮は蓮で、『はいはい、可愛いねぇ』なんて塩っぽい反応していて――
……ああ、そうか。
恥ずかしい理由、ちょっと分かった気がする。
『佐久間くん?』
不意に黙り込んだ俺に、不思議そうに小首を傾げる蓮。
そんな蓮をじっと見つめ、小さく呟いた。
「俺たちが付き合い始めたの、お前がカナダに行くちょっと前だったじゃん」
『え?……うん、そうだね』
「前に仕事で女装した時は、さ……まだ、俺たち恋人同士でもなんでもなかったんだよね」
『うん』
「だから、その……余計に恥ずかしいってゆーかさ……蓮は、男の俺を好きになってくれたわけじゃん?」
『うん』
「なのに、こんな女装して……いつもの俺じゃない姿、見られるのが恥ずかしい……の、かなって」
『佐久間くん、』
「あと、さ。……やっぱり、女の子の方が良くなったりしないかな、とか……そんな風に、思ったり……——」
『こら』
言葉を遮った蓮の表情は、少し不機嫌そうで。
俺が目を瞬かせると、深いため息を吐き出しながらこちらを睨むように見つめてくる。
「れ、蓮?」
『あのね……何度言っても分かんないみたいだから、言うけど。俺は性別がどうあれ、佐久間くんが佐久間くんだから好きになったんだよ。男とか女とか、そんなの関係ないしどうだっていい』
「う……で、でもさ……女装姿、見たかったんでしょ……?それならやっぱり、女の子の方が好きなのかなぁって……」
『そりゃあ見たいに決まってるでしょ。大好きな恋人の可愛い姿だよ?女装だろうが学ラン姿だろうが猫耳だろうが着ぐるみだろうが見たくなるのは当たり前じゃん!』
『アハッ、着ぐるみも見たいのかよぉ!』
『可愛い佐久間くんならなんだっていいの。それにさ……他のメンバーは全員見てるのに、俺だけさく美ちゃんを見られないなんて不公平じゃないか』
「う、うん……?」
あれ?
なんか話が逸れ始めた気が……
『どうせさ。あべちゃんとかラウなんか、可愛い可愛いって褒めまくって頭撫でたりしてるんだろ。康二なんか抱きついたりしてんじゃない?しょっぴーは爆笑してそうな気がするけど……なんだかんだでふっかさんも岩本くんも佐久間くんを可愛いと思ってるし。舘さんは…………涼子さん、エレガントだったよね』
…………いつものやつだった。
佐久間くんは俺のものだっていう、強すぎる独占欲
俺がめっちゃ好きなやつ
この重い重い愛情が、大好きで堪んないんだよね。
「蓮、」
『……だからね。とにかく俺も見たかったの。大好きな恋人の可愛い格好』
「うん。……分かったよ、蓮」
『絶対可愛いの分かってるから、想像しながらナレーションの声撮ったんだけどさ』
「ふふふ。蓮の声、聴いたよ。なんかね……めちゃくちゃ優しくて、ドキドキした!」
『まあ、想像より更に可愛さが上回ってたんだけどね。……出来れば生で見たかったな……』
「ええ〜?……そんじゃ、帰国したら……着て見せよっか?」
『あはは。大サービスじゃん』
そりゃあね。
大サービスもしますよ。
だって俺も、蓮が大好きなんだもん。
蓮が喜ぶなら、女装だってなんだってするよ。
なんならそのままプレイでも出来ますよ。
……求められるならね!
そう言うと、蓮がうーん、と考え込んで……首を横に振った。
『でも……さく美ちゃんより、佐久間くんがいいかな、俺は』
「え!見たい見たいって言っといて?」
『俺が好きなのは佐久間くんだから。抱きたいって思うのも、佐久間くんだよ』
「ほわ……」
う、うわぁ……
うわぁぁ……!!!
なんつー殺し文句。
そんなこと言われたらさ……
抱いて欲しく、なっちゃうじゃんか。
顔見て話してるのに、なんだか寂しくて泣きたくなってくる。
俺は眉を下げて、ポソッと呟いた。
「……早く、帰ってきてよぉ」
『……ん。早く帰りたい』
「帰って来たら、いっぱいして」
『……いっぱいしていいの?会えなかった分だけ、止まれなくなるよ』
「っ……いい、よ。一晩中だって、付き合う」
『ふふ……本気で眠らせてあげられなくなりそう』
クスクス笑って、蓮がそっと画面に触れる。
指を重ねるように、俺もそこに触れた。
「そろそろ、戻んなきゃ」
『俺も。もうすぐ撮影再開だ』
「まだ、かかりそう?」
『もう少しで終わると思うよ。……そしたら、日本に帰るから』
「うん」
『一番に、佐久間くんに会いに行くよ』
「じゃあ、空港まで迎えに行く」
『忙しいんだから、無理しなくていいよ?』
「俺が行きたいの。早く蓮に会いたい。……蓮に、触って欲しい」
『……キスもしていい?』
「い、家に帰ったらね!」
俺の言葉に、蓮がまた楽しそうに声を上げて笑う。
この笑顔を見られただけで、まだもうちょっと頑張れそう。
じゃあね
またね
言い合って、通話を切る。
途端にしんと静まり返った非常階段。
俺はその場に座り込んで、抱えた膝に顔を埋めた。
会いたいな
ハグして、キスして、えっちして
今の今まで話してたのに、もう蓮のことが恋しい。
泣きそうになっていると、遠くから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
「……戻んなきゃ」
蓮を心配させないように、笑って仕事こなさなきゃ。
頑張ったよって胸を張って、再会の時を迎えられるように。
サービスでもなんでもするから。
蓮もあとちょっと、頑張れ。
俺はスマホを握り締めて、階段を駆け上がった。
*****
クリスプ商事のさく美ちゃんがあまりにも可愛すぎたので衝動的に書きました^^
あとね、その……めめちゃんの声、めちゃくちゃ優しくなかったです……???
「食べたのさくちゃんでしょ」
って……「うぉわあああああ」って声出ました
リアルに……会社でwww
落ち着いて、わたし
#雪男BL
透子
2,267
1,828
コメント
1件
さく美ちゃん可愛すぎる〜〜!!💕 女装姿の佐久間くんに蓮くんの独占欲爆発してるのがもう最高すぎて転がったよ…!「俺が好きなのは佐久間くん」って言い切る蓮くん、かっこよすぎじゃない?遠距離の切なさと甘やかしのバランスが絶妙で、もう続きが気になって気になって…!ROYさんの書く女装描写と嫉妬描写、エモすぎて泣ける😭✨