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黒猫のイレイラ

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黒猫のイレイラ

35 - 【最終章】第4話 貴方だけを想い咲く花(カイル・談)

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2024年01月29日

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「ふぅ…… 」

温かなお湯に入ると、ジワァと熱が染みて体が冷えていた事に初めて気が付いた。ずっと横になっていたせいか、少し体が固い気もする。手でゆっくりマッサージをしながらそれらをほぐし、一息つく。


——すると考えるのは、やはりイレイラの事だ。


「…… イレイラは大丈夫かな、悪い事したかな…… 」

神殿内を案内した時。何かに刺激されてイレイラが前世の記憶を取り戻しはしないだろうかという期待を少ししていた。記憶があろうがなかろうが、もう既に今の彼女をも愛している事に変わりは無いのだが、もし過去世を思い出してくれるなら嬉しいというのが本音だった。

初めて逢った時から、一緒に過ごした九年という歳月。それらを共に思い出し、語らう事が出来たら幸せだなと思ったのだ。

この神殿内には多くの思い出に溢れている。一緒に行った事の無い場所の方が少ない。特に結婚式を挙げた“祈りの部屋”では、此処なら何か思い出すんじゃないかと期待したのだが、『綺麗な場所ですね』と感嘆の息を洩らすだけで少しガッカリした。

それなのにまさか、昔一度だけ一悶着があった玄関ホールの方でそれらしい反応を見せ、その場で倒れたうえに、昏睡状態になってしまうとは思いもしなかった。

幸せな思い出よりも、辛い思い出に反応された事に対して複雑な気分にもなった。語り合いたいのは幸せな記憶の方なのに…… 。


ズルズルと体が滑り、湯船の中に沈む。口元まで隠れた辺りで流石に力を入れて止まり、そのまま薬草の溶けたお湯の表面を見つめた。周囲をうっすらと、鏡のように周囲を写す様を見ているとどうしたって色々考えてしまう。


…… 早く、イレイラに逢いたい。

無事をこの目で確かめたい。

触れたい。

撫で回したい。

んで、あわよくばキスとか…… もっとその先の事も、早くしたい。

もう大人だって知った晩に見た夢みたいな事を、すぐにでもしたい。もう我慢出来ない。そうだ、僕はもう十分我慢した!


——そう思った瞬間、体に違和感を感じた。

その事に慌て、ガバッとお湯から顔を上げて下を見る。案の定、下腹部の剛直が激しく存在を誇示していた。

「いや、あの…… 起きてすぐコレは…… 」

今までの長過ぎる歳月を処女神のように清くすごしてきたのに、イレイラに逢ってからのコレの自己主張には、自身の事なのに呆れてしまう。彼女を“伴侶”として娶った事により拍車がかかっているのに、発散出来ていないせいで更に暴走する。毎夜のように自ら処理せねばイレイラの眠る布団に入る事も出来なかった程に。


(彼女の事を考えるだけでコレでは、“神子”として情けなさ過ぎる…… )


イレイラを性欲の対象としか見ていないみたいじゃないか、これでは。

自分に呆れ、項垂れた。 でも、手が自然と怒張するソレに伸びていき、竿部分をギュッと握ってしまう。ゆるゆると上下に手を動かすと、段々息が上がってきた。

「はぁ…… 」

瞼を閉じると、愛らしい小さ過ぎる口を開き、ザラザラとした舌を使って、猫の姿をしたイレイラが私の亀頭を舐めてくれる姿が浮かぶ。温かな肉球で竿をプニプニと押しつつ、撫でてもくれる。一度も実際にはお目にかかった事が無かったのは残念だったが、妄想の中では何度も想像し尽くした姿なので思い出すのはお手の物だ。

その体がゆっくりと変化して、今の姿に変化していく。その事により剛直は更に手の中で質量を増し、握る手の力が強くなった。

色を帯びた声が口から出そうになる。唇を噛んで、必死にそれを堪えた。水がパシャパシャと音をたて、水面を揺れる。

「ふっ…… んぁ…… くっ」

ヒトの姿をしたイレイラの愛らしい口の中に、自身がキッチリ収まる様子を想像してしまった瞬間、僕は浴槽の中だというのにあっさり果ててしまった。

「はぁ…… はぁ…… 」

虚ろな目のまま、水中から手をあげソレを見る。掌には決してお湯ではない白濁とした液体があり、ドロッと腕に向かい滴り落ちた。

「…… こんな時に、何やってんだろ」

湯船に背中を預け、僕は——

自身の行為に対してただただ虚しくなった。


汚れたお湯を処分し、魔法でさっさと髪や体を綺麗にして身繕いを済ませる。普段のシャツにトラウザーズといったラフな格好ではなく、司祭達が普段着る為に用意されている白い衣装に着替えた。髪型も少し整え、来訪者に即対応出来るようにしておく。

面倒でも、時間が惜しいので二度手間の無いようにした。少しでも長くイレイラの傍に居たい、その一心で。…… 先程あんなこと風呂場でやらかしたって事は、棚に上げて。




居間に戻ると、すぐさまエレーナが駆け寄って来た。サビィルももう戻っていて、即座に僕の肩に留まった。嬉しそうに僕の角に柔らかな頭を擦り寄せてくるので少しくすぐったい。

「お疲れ様です、カイルさま」

「イレイラはもう戻った?」

「いいえ。セナが呼びに行ったっきり、まだお二人共戻られていません」

「そうなの?じゃあ僕も庭に行こうかな。その方が早いよね」

「お体は大丈夫なのですか?先程目覚めたばかりですのに…… 」

幼顔で心配され、過剰に胸が痛むが苦笑する事しか出来ない。

「大丈夫だよ。残念ながら体調は万全だから。もう少し弱ったままなら、我儘を言ってイレイラと部屋に篭っていたい所なんだけどね」

「相変わらずですわね、カイルさまったら」

「うん、そうだね。数年程度ではそんな変わらないよ」

互いに微笑み合う。エレーナが作り出してくれるほんわかした空気感に、気持ちが和んだ。


「もういいか?行こうか、主人」

痺れを切らしたサビィルが、当然のように言った。どうやら彼も付いて行くつもりのようだ。

「ダメですよサビィル。貴方が行くと折角の二人の時間が野暮なものになりかねません。同行者がいない事は気にはなりますが、ここはカイルさまだけで行って頂きましょう。——私も別の仕事をさせて頂きますね。これからきっと快気祝いだと、来訪者が多く来るでしょう。お祭り騒ぎになったとしても、呆れないであげて下さいましね?皆、イベント事に飢えていますので」

「…… くっ。まぁ確かにそうだな。イレイラには会いたいが、私は偉い子だからな。我慢してやろう。だから水浴びを忘れるなよ?主人」

うんうんと頷くサビィルの頭を撫でて褒めてやる。気をきかせてくれたエレーナにも感謝の意を伝えた。


「それにしても、面倒だなぁ…… 。お祭なんて勝手にやってくれるぶんには好きにして良いのに、巻き込むから困る」

「そう仰るのでしたら、もうお倒れにならないようお気を付け下さい」

「そればっかりは…… 倒れたくて倒れた訳じゃ無いしね」

苦笑いを浮かべ答えたら、エレーナが扉まで進みドアを開けてくれた。


「行ってらっしゃいませ。さぁ、イレイラさまを安心させてあげて下さいね」

「——そうだね、行ってくる」

僕は頷き答え、私室を後にした。

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