テラーノベル
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終演後の楽屋。
机の上には、
ファンからのチョコが山みたいに並んでる。
包装も、カードも、全部きれい。
「……愛されてんな」
はやちゃんが、軽く言う。
「まあね」
柔太朗は、特に見もせずに答える。
一通り片付けが終わって、
二人きりになるタイミング。
柔太朗は、
ロッカーの中からさっきの小さな箱を取り出した。
「はやちゃん」
「ん?」
「これさ」
箱を、軽く振る。
「いっぱいある中で」
一拍。
「俺のが、一番でしょ」
冗談みたいな言い方。
でも、目は逸らさない。
はやちゃんは、少し驚いた顔をしてから、
静かに笑う。
「……聞く?」
「聞く」
即答。
はやちゃんは、
机の上のチョコに視線をやってから、
柔太朗を見る。
「比べる対象じゃない」
「でも」
「一番かどうかって話なら」
一歩、近づく。
触れない距離で止まって。
「最初から、決まってる」
柔太朗の心臓が、少し跳ねる。
「じゃあ」
少しだけ、声を落として。
「確認しなくてもよかった?」
「確認したかったんだろ」
「……うん」
正直に言う。
はやちゃんは、
小さく息を吐いて続ける。
「ファンの気持ちは大事」
「でも」
一拍。
「俺が大事にしてるのは、一つだけ」
柔太朗は、
少し照れた顔で言う。
「それ、今言うのずるい」
「じゃあ」
「次は」
柔太朗が、
ほんの一歩だけ近づく。
「ホワイトデー」
「俺が、期待していい?」
はやちゃんは、
即答しない。
その代わり、
箱をそっと持ち上げる。
「溶ける前に、ちゃんと返す」
「……言質」
「取ったな」
「主導権、俺だから」
はやちゃんが、
負けたみたいに笑う。
「はいはい」
「今日は、柔太朗の勝ち」
楽屋の外から、
スタッフの声が聞こえる。
「撤収しますよー!」
二人は同時に、
いつもの距離に戻る。
完璧な切り替え。
でも、
ロッカーを閉める前に、
はやちゃんが小さく言う。
「ちなみに」
「なに」
「一番なの、今日だけじゃないから」
柔太朗は、
返事の代わりに、
小さく笑った。
バレンタインは、
ちゃんと勝ち取った。
それだけで、十分だった。
コメント
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3080てぇてぇっすね、、。