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芙月みひろ
#裏切り
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Scene46(有莉澄視点)
景兎先輩が言葉を探すように、
カップの縁を指でそっと触れる。
「……あの頃、
あなたからの返事が来るたびに、
どう返せばいいのか分からなくなっていました。」
思っていたよりずっと不器用な理由だった。
(そんなふうに思ってたんだ……)
胸の奥が、
さっきよりも静かに温かくなる。
「返事、迷うような内容でしたか?」
軽く笑いながら言うと、
景兎先輩が少しだけ肩をすくめる。
「迷うというか……
あなたの言葉が、
思っていた以上に真っ直ぐで。」
その言い方がなんだか照れているみたいで、
思わずカップを両手で包み直す。
(真っ直ぐ……?
そんなふうに受け取ってくれてたんだ)
「えっと……
そんなに気にしなくてもよかったのに。」
自然と声が柔らかくなる。
景兎先輩がゆっくりと顔を上げる。
「……気にしますよ。
あなたの言葉は、
どれも大事にしたくなるものばかりでしたから。」
その一言が、
胸の奥に静かに落ちる。
(……そんなふうに言われたら)
期待していた“何か”が、
また少しだけ形を持つ。
「……それって、
どういう意味ですか?」
丁寧語なのに、
自分でも分かるくらい声が少しだけ近い。
景兎先輩が息を吸う。
その仕草が、
さっきよりもずっと覚悟を帯びていた。
「……あなたに、
ちゃんと伝えたいことがあります。」
胸が跳ねる。
(あ、これ……)
さっきガッカリした自分が、
嘘みたいに消えていく。