テラーノベル
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炎はもう、俺の一部になっていた。 胸の奥で脈打ち、骨の内側まで赤く染めるような熱。
ただ燃やすだけじゃない――これは、俺の炎であり、俺ではない炎だ。
「もう行くの?」
少年が首を傾げる。
「ああ。……長くはいられない気がする」
俺はそう答えるが、この館の仕組みも、ふたりの正体もわからないままだ。
けれど、何かをもらったことだけは確かだった。
「また燃やすの?」
少女の問いには答えなかった。答えられなかった。
ふたりはただ、同時に笑った。
「じゃあ、またね」
「次のお客さまが来るから」
背を向け、扉をくぐった瞬間、眩しい赤が視界を満たす。
外の白い夜に、真紅の光が滲み広がっていた。
まるで世界の最初の夕焼けのように――。
熱を抱えたまま、俺はその光の中へ消えていった。