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舞台袖からロビーへ抜ける通路を歩いている時、待ち構えていたように佇んでいる愛おしい彼の姿が目に入る。


「奏……!」


怜が奏の元へ駆け寄り、人目も憚らずに強く抱きしめた。


「怜さん……来てくれてありがとう。すごく…………嬉しい……!」


奏も本番を終え、緊張感が解けたせいか、彼の前で破顔させている。


「午前中で仕事を終わらせて、そのまま車で会場へ来た。奏の本気の演奏、初めて聴いたけど……素晴らしかったよ」


抱きしめた腕を緩め、怜は改めて奏のドレス姿を瞳でじっくりと堪能する。


「奏。すごく…………綺麗だ……」


口元を綻ばせ、爪先から奏の表情へと這わせるように視線を送る怜。


彼女が頬を染めているのをよそに、彼は逡巡した後、思いついたように奏に声をかけた。




「なぁ奏。お願いがあるんだけどさ……」


「お願い?」


「今日は俺の部屋に着くまで、ドレス姿のままでいてくれないか? 奏のロングドレス姿、すげぇ貴重だし、後で写真撮りたい」


唐突なお願いに、奏が大きな瞳を更に丸くさせたが、あとはこのまま怜の部屋へ向かうだけだ。


彼女の唇が微かに緩むと、コクリと肯首した。


「恥ずかしいけど……いいよ。怜さんからのお願いだし。そろそろ結果発表だから、舞台に行くね」


「わかった。俺も観客席に戻るよ」


二人は一旦別れ、客席と舞台上からコンペティションの結果発表を待った。




***




結果、奏は入賞はしなかったものの、どこか清々しい気持ちでいっぱいになっていた。


自分の中で後悔しないように、出来る限りの準備をしてエントリーした今回のコンペティション。


まだまだ実力不足を痛感した彼女だが、次回もエントリーしようかと考えながらも、既に次の目標に狙いを定めている。


HP認定講師試験の昇級試験で三級受験。


三級は指導よりも演奏メインの試験。


なかなか合格できないようで、講師たちの間では『魔の三級』などと言われている。


次回の昇級試験の日程はまだ決定していないが、少しずつ準備をしていこうと奏は気持ちを切り替えた。




怜が奏の荷物を持ちながら、二人は会場の地下駐車場へ向かう。


「奏は車に乗ってて。荷物を全部トランクに入れるから」


助手席側のドアを開け奏を乗せた後、ドレスの裾を挟まないように怜は慎重にドアを閉めた。


トランクを開け、奏の荷物を入れていくと、怜はバッグからエンゲージリングが入ったダークブルーのジュエリーボックスを取り出し、薔薇の花束の中に忍ばせた。


(花束を渡した時に、婚約指輪の存在に気付けばいいが……)


若干心配もしつつ、怜は運転席に乗り込みエンジンをかけると、白いセダンが緩やかなスピードで走り出す。


地上へ出ると、空は紫紺に染まり、すぐ近くの高層マンションとオフィスビルが光の粒子に包まれている。


「俺の部屋に戻る前に、ちょっと寄り道するぞ?」


ステアリングを握っている怜が柔らかな笑みを奏に向け、更にアクセルを踏んだ。

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