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如月 未澄斗
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#刑事もの
鬼霧宗作
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第6話 違和感
翌朝。
橋本優太の取り調べは中止となった。
医師の診断では、一時的な意識消失。
原因は不明。
人格が入れ替わった理由も分からないままだった。
しかし坂田は、一つの仮説を立てていた。
「雨。」
窓の外を見る。
昨夜とは違い、雲ひとつない青空だった。
「悪天候が人格のトリガー……。」
藤堂が頷く。
「昨日の様子を見る限り、それが一番自然ですよね。」
「……ああ。」
坂田はそう答えた。
だが、その表情は晴れなかった。
⸻
捜査本部。
坂田は橋本優太の生活記録を机いっぱいに広げる。
学校からの報告書。
補導歴。
生活指導の記録。
近隣住民の証言。
「……。」
赤いペンで日付に印を付けていく。
一年。
二年。
三年。
必ず何かがある。
机を叩く。
友人と喧嘩。
教師への暴言。
器物損壊未遂。
どれも大事件ではない。
だが。
「毎年だ。」
坂田は呟いた。
「毎年、必ず何か起きている。」
藤堂も資料を覗き込む。
「本当ですね。」
「人格は抑え込めていない。」
「小さい事件として表に出てる。」
坂田は頷いた。
ならば。
雨の日だけ人格が現れるという説明は、おかしい。
⸻
坂田はさらに古い資料を開く。
小学校時代。
一年生。
二年生。
三年生。
生活指導記録。
「……ない。」
「何がです?」
「問題行動だ。」
坂田は気づいた。
小学生時代には、何も問題行動を起こしていない。
「おかしい。」
藤堂が首を傾げる。
「何がです?」
「本人は言っていた。」
坂田は思い出す。
『『物心ついた頃からです。』』
「人格は昔からあった。」
「それなのに。」
「小学校では一件も問題がない。」
静寂。
坂田は腕を組んだ。
「もし人格が昔からあるなら。」
「もっと早く問題が起きていてもいい。」
⸻
数時間後。
教育委員会から追加資料が届く。
坂田は何気なく住所欄を見る。
その瞬間。
手が止まった。
「……。」
「どうしました?」
藤堂が近寄る。
坂田は資料を差し出した。
住所変更届。
転校届。
そこには。
『中学校入学に伴い転居』
と書かれていた。
「この街じゃない。」
「え?」
「橋本優太。」
「中学校に入るまで。」
「別の県に住んでいた。」
藤堂は目を見開く。
「じゃあ、小学校時代の記録は。」
「全部。」
「別の県だ。」
⸻
坂田はゆっくり立ち上がる。
「教育委員会じゃ足りない。」
「前に住んでいた県警へ協力要請を出す。」
「小学校時代の資料を全部集める。」
⸻
その頃。
留置場。
橋本優太はベッドに腰掛け、窓の外をぼんやり眺めていた。
夕日が鉄格子を赤く染める。
看守が様子を確認する。
「橋本。」
優太はゆっくり顔を上げた。
「……はい。」
それだけだった。
看守が立ち去ると、部屋には静寂だけが残る。
優太は再び窓の外へ視線を向けた。
その表情からは、
何を考えているのか、誰にも分からなかった。
コメント
1件
おお、第6話読み終えたわ。これは来たね……。坂田刑事の地道な調査がじわじわと「違和感」の正体を暴いていく感じ、めちゃくちゃ好き。小学校時代に問題行動ゼロなのに「物心ついた頃から人格がいる」って矛盾、いいところ突いてるわ。過去の県まで遡るって展開、伏線の張り方が丁寧でゾクゾクする。優太の無表情なラストも不気味で、引き込まれた!次が待ち遠しい🔥