テラーノベル
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第二話〜ニヤニヤ笑う神〜
「こ、これは映画じゃない、リアルだ!相手6 人はいるぞ!」フウゴが叫び、皆が逃げようとした。しかしリョウはただ一人、一歩前に出て、両手を広げた。「落ち着いてください!僕達は敵ではない!」
「ここは黄稲村だ、さては食料を奪いに来たか」
容赦なく弓の弦がギリギリと引かれる。
「あの…,おい違うって言ってんだろ!!….すいません!」
その気迫に圧倒されたのか、あるいはリョウの穢れなき瞳と、見たこともない奇妙な衣服に戸惑ったのか、男たちはピタリと動きを止めた。
互いに顔を見合わせ、戸惑うようにひそひそと話し始める。
「本当です、僕達は道に迷っただけです!」
「お前たち!やめんか。それにしても奇妙な服を着ているのぉ。わしゃクロシという者だ」村の長らしき老人が男達をなだめ、前に出る。
コウルがすかさず弁解をする。
「クロシ様、僕達は遠くの国から流されてきた旅人です。言葉が通じることに感謝します。怪しい者ではない証拠に、何でも手伝います!」と理路整然と頭を下げた。
クロシはしばらく5人を観察していたが、やがて小さく息を吐いた。
「分かった。ちょうど男手が足りん。今から村の者たちが森へ狩りに行く。お前たちもついていき、手伝いをするのだ。もし役に立てば、宿と食料を分け与えようぞ」
「ありがとうございます!」
リョウは安堵の笑みを浮かべ、コウルの肩をポンと叩いた。
「ひとまず助かったぞ、これで信頼を得よう」
さっそく5人は集められ、男達数名と共に、深く鬱蒼とした森へと入って行く。弓は一応、与えられたがボロボロの枝みたいだ。
巨木が太陽の光を遮り、見たこともない巨大なシダ植物が足元を埋め尽くす。明らかにデカいアリがあたりを這い回っている。
「おい旅人達、俺はヤソガだ、よろしくな。お前らを守れって長からの命令だ。全くなんで俺が子守なんか」
「しょうがないだろヤソガ。私はゼクだ」
「ヤソガ、ゼクよろしくな!」フウゴは満面の笑みを浮かべた。
「旅人、年上にはな、敬語を使うんだぞ」
ーー森を歩いて30分ほど経っただろうか。
特に話すこともなかったのでハクトは質問して
みた。
「失礼ですがヤソガさん、今何歳ですか?」
「ああ?25だよ」
5人は即座に40歳後半の間違いだろ、と思ったが口には出さなかった。
現代も古代も若く見られたいのは同じらしい。
いや、俺たちにとっては今、ここが現代か。
「 ーーいるぞ」ヤソガが急に声を潜める。
突如、村民たちは一斉に弓を構え、矢を放つ。
5人は何処に何がいるのかもわからなかった。矢はバシュッッと風を切り、木陰に隠れていた子鹿を見事に射止めた。
「ウーラ、ウーラ!」
「旅人達、お前らも唱えろ!命へ感謝せんか!」
「子鹿だ。まだ小さい….可哀想に」当然5人は狩を生で見たことがないので、当然とも言える反応だろう。
「愚民が!人間は生きるほどに、生物の命を奪い、そして罪を重ねてゆく。しかし、その罪を償えるのは生きているものだけだ。感謝してその分生きるんだな」
「はい….」頷くしかなかった。
「誰か!助けてくれタカー、リョウー!!」
フウゴが叫んでいる。何かあったのだろうか
ドォゴォオオオン!!
地の底から響くような地鳴りとともに、数人がかりでも抱えきれない巨木が、一瞬でへし折られた。「大木が倒れた!?何がいるんだ」
「落ち着け、あれは!!か…神憑だ。騒ぐと祟られるぞ!」薄暗くて見えずらいが、とてつもなくでかい何かがいる。
「なんですかそれ….化け物だ!射たないと死にますよ!ヤソガさん早く!」
「落ち着け、俺は狩人だ。なんの神に憑かれているかくらい、見たらわかる」
ヤソガの顔から、
一瞬で血の気が引いた。
そこに姿を現したのは、とんでもなく巨大な、異形のヒグマだった。
だが、その顔面は歪み、まるで歪んだ人間の顔、人面のようになっていた。その人面熊は、こちらを覗き込み、ニヤニヤと嘲笑うように笑っている。
「こいつぁ、見たことねえ。悪い神じゃないといいがな」
人面熊は地面を蹄で激しく蹴った。
「散れ! 突進が来るぞ!」村民たちが叫ぶ。
タカは逃げなかった。ゆっくりと呼吸を整え、弓を引き絞る。シュッッ、、、
矢はストッと地面に落ちる。
「タカ!危ない、しゃがめ!」リョウは瞬時に弓を引き絞り、強烈な一撃を放つ。
バシュッッ、風切り音を立てた矢は脳天を正確に撃ち抜いた。
巨体が地響きを立てて倒れ込み、激しく痙攣したあと、静かになる。死んでも顔をこちらに向け、にんまり笑っているから不気味である。
「やった….! やったぞ、リョウ!」
タカが歓声をあげて駆け寄ろうとした。村民たちも「見事な腕前だ」と目を丸くしている。
その瞬間、
「ギィィイアアアアアアアアアアア」と人面熊が絶叫し、口からミミズの様なものを出した。
「リョウ!そこから離れろ!!」
遅すぎた。そのミミズはリョウの耳、口、鼻から体内に入り込む。
「助すけっ…」声が出ない
周囲の音が急に消え、視界が傾いてゆく、タカたちがスローモーションで自分に向かって走ってくるのが見えるが、体が1ミリも動かない。
リョウの脳内に、突如として謎の映像が映し出された。大地を真っ黒に埋め尽くすアスファルト。森を焼き払い、山を削り、重機が大地を蹂躙する景色。
「が、あ、あああああああッ!!」
リョウは頭を抱えて地面にのたうち回った。
「大丈夫かリョウ!」
タカがようやくリョウの体に触れた瞬間、世界の時間と音が戻った。
リョウは激しく呼吸を乱し、冷や汗を滝のように流しながら、人面熊を凝視した。
そこにはただの大きい熊しかいなかった。
「大丈夫だ…..少し立ちくらみをして幻覚を見た。それより肉獲れたぞ。ウ、ウーラ!!」
「ウーラ!!」皆で感謝の雄叫びをあげた。
「お、おい!しまった。もうじき日が暮れるぞ。夜は….神が彷徨う時間だ」
ヤソガの言葉に、喜びに浸っていた皆の顔が一瞬でこわばる。
ヤソガが急いで松明に火をつけ帰路を先導する。
その火をつける動作は隠し切れないほど震えていた。
「ヤ…ヤソガさん、神が彷徨う時間ってなんですか!」
「ん、お前ら旅人だろ?知らずに生き残っていたのか」
「あいや、ちょっと忘れてしまって」タカは急いで口を噤んだ。
「やべえのが徘徊し始めるんだよ。人間ではどうしようもない領域だ。黙ってついて来い」
#和風ファンタジー
コメント
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3話面白そうですね。投稿頑張ってください!
読み終えました……いや、冒頭から一気に畳みかけられましたね。人面熊の"ニヤニヤ笑う"ビジュアル、すごく不気味で印象に残りました。リョウが体内に何か入れられて見た幻覚の映像も気になる——この世界の伏線なのか、それとも別の意味があるのか。タカとリョウの息の合った連携や、ラストのヤソガの震えが夜の危険を予感させて、続きが気になります。面白かったです🤍