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二人は競い合うように壮馬の部屋を目指す。

そしてドアの前まで来ると二人の指が同時にインターフォンを押した。



その時花純は料理の仕上げをしていた。壮馬は7時に帰ると言っていたのに20分も早く帰って来た。

花純はハンバーグを作っていたが壮馬が帰ってから焼こうと思っていたので、焼いている間に先に風呂に入ってもらう事にした。

そして慌てて料理の仕上げをしているとインターフォンが鳴った。


「はーい」


花純はエプロンを着けたまま慌てて玄関へ向かいドアを開ける。


するとそこには二人の綺麗な女性が立っていた。女性のうち一人には見覚えがあった。


(誰だったかしら?)


花純が思い出そうとしていると向こうも同じ表情をしている。

その時花純は思い出した。その女性の一人は壮馬の秘書だという事を。

花純が気付いたと同時に麗子も気づいた。今目の前でエプロンを着けているのは花売り娘だという事に。


「なんであなたがここにいるのよ!」


麗子はすごい剣幕で捲し立てる。その横で麗華が花純を睨んでいた。


「えっと……あの……」


その時二人は花純の左手に大きなダイヤのリングが光っているのを見つける。その瞬間二人は凍り付いた。


「なんなのよ、この泥棒猫っ! なんであんたみたいなただの花屋の店員が副社長の自宅にいるのよ。おとなしそうな顔をしてどんだけあざといのよ」


麗子のものすごい剣幕に押されたのか麗華も口を開く。


「本当よ! 壮馬がこんなお子ちゃまといい関係ですって? そんな事ある訳ないじゃない。だって壮馬は昔から色気あるオトナの女が好きだったのよ? こんな小娘を相手にする訳ないわ」


すると麗子が頷きながら同意する。


「その通りだわ! 副社長は騙されているのよ。ズル賢い女の罠にはめられちゃったのよ」



いきなり玄関で二人の女性から罵られた花純は呆然と立ち尽くしていた。そして冷静に考える。どう考えてもこの二人は壮馬の取引先の人間ではないだろう。

しかし根が真面目なリケジョの花純は念の為もう一度聞いてみる。


「あの、書類は?」

「はぁっ? 書類なんてある訳ないじゃない。馬鹿じゃないのアンタ」


その時花純はこの状況をはっきりと理解した。この二人は花純が壮馬の家にいる事が気に入らないのだ。

つまりこの二人は壮馬に好意を寄せている。そして今日壮馬になんらかのアクションを起こそうと思って家まで押しかけてきたのだ。それなのに予想外の女が壮馬の家にいたので猛攻撃をかけてきたのだ。


状況を把握した花純はすぐにどう対応したらいいのか理解する。そして落ち着いた声で言った。


「書類がないのでしたら、お引き取りいただけますか?」


書類がない+取引先の人ではない=お引き取りいただく


こんな計算式が思い浮かび花純はシンプルに伝えた。


「はぁっ? 何を偉そうに。アンタが出て行くべきじゃない?」

「そうよ、この家にあなたは相応しくないわ」


感情論だけで訴えられてもリケジョの花純には全く響かない。花純を納得させるには理論的に攻めないと意味がないのだ。

全く動じていない花純は再度冷静に言った。


「いえ、あなた方が出て行くべきでは? 嘘をついてここまで上がって来たのですから」

「はぁっ? 何言ってんのこの女」

「ほんと馬鹿じゃないの? とにかく壮馬に会わせなさいよ」


二人は無理やり玄関から入って来ようとする。

そこで花純がピシャリと言った。


「それ以上入ると不法侵入になりますが」

「構わないわ、警察に通報すれば?」

「そうよそうよ、私達はあんたじゃなくて副社長に会いに来たんだから」



その時低く鋭い声が飛んで来た。



「いい加減にしないか!」



その瞬間二人はハッとする。前を見ると花純の後ろにバスローブ姿の壮馬が立っていた。

風呂から出て来たばかりの壮馬の髪はまだ濡れていた。


「君達は何をしに来たんだ?」

「…………」


麗子が黙っていると麗華が一歩前へ出て言った。


「私は壮馬に会いに来たの。やっぱりもう一度やり直したいのよ。だから部屋に入れてよ! 中でちゃんと話しましょう」

「駄目だ、帰ってくれ」

「壮馬ったらそんなつれない事を言わなくたっていいじゃない。それに何よ、なんでこんな女なんかと! この女の方こそ摘まみ出しなさいよ」


麗華はそう言ってフンと鼻を鳴らす。


「悪いが彼女はもうここに住んでいるんだ。俺の婚約者だからな」


壮馬はそう言ってから花純の腰を引き寄せた。すると二人はショックのあまり顔面蒼白になる。

麗子はただ茫然と立ち尽くし麗華は両手をわなわなと震わせていた。

しかしすぐに麗華が噛みついてきた。


「壮馬はいつからそんな悪趣味になったの? 前は私みたいなタイプが好きだったじゃない」

「ハハッ、人は好みなんてすぐ変わるさ。それに自分好みの理想の女に出会ってしまったら二度と手放せなくなるんだよ」


壮馬はそう答えると隣にいる花純を愛おしそうに見つめる。花純もほんのり頬を染めながら壮馬を見つめ返した。

そんな二人はどこからどう見ても相思相愛のカップルそのものだった。


二人の間に入り込む余地がないと知った麗華はがっくりと肩を落とす。


「わかっただろう? だからもう帰ってくれないか? 俺達の甘い夜をこれ以上邪魔しないでくれ」


壮馬の口から『甘い夜』という言葉が出たので二人は驚いた。壮馬はいつからそんな歯の浮いた言葉を口にするようになったのか?

いつもクールだった壮馬の姿はもうそこにはない。隣にいる女のせいで壮馬はすっかり変わっていた。


それに気づいた二人は大きな敗北を感じていた。どう抗っても目の前のこの女には叶わない。


二人は悔しそうな表情のままくるりと踵を返すとその場から立ち去って行った。

そんな二人の背中に向かって壮馬が叫んだ。


「今日の所は大目に見るがまた家まで押しかけて来たら今度は警察へ通報するからな。それと今後もし花純に手を出したら俺は絶対に許さない!」


壮馬の怒りに満ちた声を聞き二人の背中がビクッとする。二人は壮馬を怒らせたら大変だという事は充分にわかっていたので慌てて逃げるようにその場から立ち去った。


二人の姿が見えなくなると壮馬はフーッと息を吐いて玄関のドアを閉めた。

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コメント

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ユーザー

麗華は付き合ってた事あったけど麗子は勘違い女も甚だしい😩😩😩冷静沈着に対応する花純ちゃんやはり壮馬が惚れるだけあるわ🤭🤭🤭

ユーザー

花純ちゃん、何事もなく 無事で良かったね~😌💓 シッシッシ❗️あっち行け~~!!!💢....っと、邪魔な女豹達を追い払い🐆🐆💨 ようやく 壮ちゃんお待ちかねの「二人の甘い夜」に突入⁉️💏♥️🌃ウフフ....♡

ユーザー

ようやく厄介ないW麗が引っ込んでホッと安心😮‍💨 リケジョ花純ンに感情論は通用せず即冷静に帰って下さい、はナイス👍 すぐ壮ちゃんが来てくれてよかったけど、推し入ってきたらと思うと怖かったよ🙀🙀アワワ 甘い言葉を囁く壮ちゃんと花純ンの💍に負けたね🙌🥰💞👍 もう金輪際2人の前にこ来ないでね😡💢⚠️🎉

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