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「……ところで、我らの『契約』は、コレで成立という事で本当に良いの、かな?」
何事もなかったかの様に起き上がり、すっかり元の状態に戻ったアルサとサリアが同時に深く頷いた。『本当かよ』とは多少思いつつも、言葉を続ける。
「では引き続き、お次は相談に乗って欲しい、のじゃ」
「いいよ、いいよ!お兄ちゃん達に何でも言ってー」
胸に手を当て、嬉しそうにアルサが笑う。私達が『実の兄妹』であるという『設定』に信憑性を持たせる為、もう敢えて気易く話しかけてくれている頭の柔らかさは正直ありがたい。
「星澤家の夜会に来ていたのなら、もう既に察しているかとは思うが、剣家の義理の末息子である『叶糸』と私は深い繋がりがある。正直、彼を取り巻く環境はヒトとして良いものとは決して言えないから、早々にどうにかして彼をあの家から救い出してやりたいのだが、お兄ちゃん達に何か良い案はないだろうか」
「彼の家庭環境はもちろん知っているよ。長年、彼が虐待を受けていると児童相談所などへ訴え出ず、放置していた事は心苦しくもあったけど……残念ながら、ああいった被害に遭っている子は他にもごまんといて、我々だけで個々の案件全てへ救いの手を差し伸べるというのも難しいんだ。私達が欲しいと思う『人材』の片鱗がある者だけを救い上げるのはあまりにも不公平になるしね。なので国として対策を練ってはいるけど、それぞれへの対応に時間が掛かってしまって救いきれてはいないのが実情、といったところなんだ。彼の場合は、貴族社会の中で暮らす平民血筋への風当たりの強さが一番の原因だから、もう思想の根底から改善していかないといけない案件だが——」
「アルサ、今は仕事から離れて。『今』の『彼』を救う手段の話をしているのよ」
サリアがそっとアルサの腕に触れて思考の海から引き戻す。確かにそれも大事な内容ではあるものの、このまま放置していたら、何処までも話が続きそうだったので助かった。
「ちなみに、その前に一つ確認してもいい?アルカナと叶糸君との関係は?」
アルサに訊かれ、私は正直に「私の『後継者』じゃ。膨大で良質な魔力の持ち主なので『私の補佐達』に選ばれたが、このまま不幸に見舞われ続けていると、その資格を失いかねない。それ故、私が直々に救いの手を伸ばしに来た感じなの、じゃよ」と話した。
「……『管理者』様の、『後継者』?」
室内が急に騒めく。素に戻り、「……アルカナ様は、世代交代をされる御予定があるのですか?」と言ったアルサの声は少し沈んでいた。
「あぁ。とは言っても、何十年も先の話、ぞよ。叶糸がもう二度と死なず、天寿をまっとうする頃合いには、今までの『死に戻り』のせいで失った魔力も回復するだろうから、交代劇はその時といった感じ、じゃな」
「『死に戻り』?——あぁ、それでか。最近急に彼が纏う魔力量が激減したのは」
怖いくらいの分析力だけじゃなく、彼らは理解が早くて本当に助かる。『死に戻り』なんて非科学的な事すらもすんなり受け入れてもらえるとは。
「私は『管理者』として、『後継者』である『叶糸』を幸せにする責任がある。もう誰にも殺されず、そして『死にたい』と本人が願う事もない生活を与えてやりたいの、じゃよ」
「成る程。……となると、一番簡単なのは『他家との婚姻を結んで家を出る』だね。彼がまだ学生だから、ゆっくりとだけど、剣家の当主が叶糸君の結婚相手を徐々に探し始めたようだし」
(やはり、そうか……)
まぁ叶糸自身も二度目からは全てその手段で家を出ようとしていたし、表面上は義父の要望を大人しく聞く感じに出来るから、結局は一番安全でもあるのだろうな。
「そうなると、何処かに真っ当な結婚相手はいないか?」
「ならウチに来たら良いよ。元々彼の就職活動時期を機に、引き抜こうとしていた人材だしね」
「南風家に、か?」
そう言い、アルサ達の後に控えている面々に視線を向けた。たぶん主要な親戚筋の者達と、格好的にこの家に仕えている者なども後方に混じっている気がする。この中の誰かが自主的に『嫁』として立候補でもしてくれまいかと思ったのだが、アルサは予想外の提案を続けた。
「アルカナが、彼と結婚したら万事解決なのでは?」
「……は?」
エセ雀の口をぽかんと開けて、『何を言っているのだ?お前は』といった顔になると、またアルサがぼたぼたと鼻血を流し始めた。もうコレは叶糸の行動で言う所の、マーモット体の腹や背中の匂いを吸いたがっている時と似た心境なのでは?と私は悟り始めた。
「そんな事、叶糸が受け入れる訳がなかろうが」
「そうかなぁ?」とアルサが首を大袈裟に傾げる。
「でも、二人でダンスを踊っている時に『結婚するなら、アルカナがいいな♡』って言っていたから平気じゃないかな?」
「何か微妙に盛っていないか?——って言うか、君は唇の動きまで読めるのか⁉︎」
あの時、盗聴防止系の魔法を我らの周囲に掛けてはいたが、読唇術の前では無意味じゃないか。
「『情報』を飯のタネにしているからね。南風家の者達は皆、子供の頃からマスターしているよ」
聴覚障害を補う目的ではなく、情報収集のためにそこまでするのかと、驚き過ぎて「怖いな!」と正直に大声で言ってしまった。だが南風家の面々は褒め言葉として受け取っていそうだった。
「まぁ、こういった類の話を本人抜きで進めるのは良くないよね。——そろそろ入って来てはどうだい?剣叶糸君」
そう言いながらアルサが庭側に面した襖の向こうへ顔を向ける。すると少しして、叶糸が少し気まずそうな顔をしながらこの広い客間に入って来た。
「叶糸⁉︎——何故、此処に?」
また驚きに声を上げた。怒るか?と身構えたせいか、体が少し跳ねたうえに後ずさり、椅子の背もたれに当たる。
「アルカナ……」
ゆらりと一瞬だけ怒りを感じたが、目が合った瞬間に叶糸の口元が緩んだ。付き合いはまだ短いのに、叶糸が『可愛いっ』と思っているのが手に取るようにわかる。
「どうぞそちらの椅子にお座り下さい」
アルサに促され、叶糸が私を両手でそっと包むように持ち上げると、先程まで私が乗っていた玉座めいた椅子に座った。ただ姿勢正しく座っているだけなのに、ガタイの良さも相まって王様然としている。『あらいやだ。うちの子カッコイイ』な精神からかちょっと誇らしい気分になったけど、それを雀な私が台無しにしてしまっているのかと思うと、少し凹んだ。
「勝手に出掛けたらダメじゃないか」
指先で軽く頭を叩かれたが、もちろん全然痛くはない。相当加減しているのだろう。骨が軋む程に抱き締めてきた事もあった子なのに、素晴らしい成長具合だ。まぁ、今のこの『雀』ボディであれを喰らったら間違いなく内臓が口からはみ出るので、本当にありがたい。
「……眠っている間に事を済ませて帰ろうと思っていたの、じゃよ。まさか起きて追って来るなんぞ、思いもしなかった、わい」
小さ過ぎて話しにくいと叶糸が思ったのか、『雀』の姿を維持し辛くなっていく。そのせいか、次の瞬間にはポンッと普段のマーモットの姿に変化してしまった。
「——くっ!」
部屋を満たしている南風家の面々が一斉にその場で崩れ落ちる。なんかもうその理由を考えるのも、彼らを心配する事すら不要な気がしてきた。
だが叶糸は流石に部屋の惨事に驚いたようで、珍しくオロオロとしながらも私の体をぎゅっと抱き締めてくる。そんな叶糸に対して『愛い奴めっ』と思ってしまうのだから、どうやら私も可愛い者好きだったみたいだ。
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#エッチなの書けないから
m k .(nrkr
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瑠璃マリコ
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コメント
1件
もうもうもうっっ!!アルサの「アルカナが結婚したら万事解決じゃね?」発想wwwまじで斜め上すぎて吹いた😭💕しかも叶糸がまさかの「アルカナがいいな♡」とか言ってたって!?その情報どこから!?読唇術って怖いけどありがとう南風家!!😂✨ そして最後、叶糸がマーモット姿のアルカナ抱きしめてオロオロしてるシーン…あざと可愛すぎて心臓もたん…キュンが止まらんのよ…!!🥺💘 やまなさん、今回も最高のエモさと笑いをありがとうございます!!続きが待ちきれないですーっ!!🔥🔥