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俺と聖奈さんは会社に来ていた。
「じゃあ俺は親にサインをもらいに行ってくるよ」
「うん。私は新しくなったホームページの使い方とかを二階堂さん達に教えたりしとくね」
俺達のやらなければならないことは山積みだ。
頑張れるのはその後に冒険者活動とミランが待っているからだ。
夜戻ってきた俺を、聖奈さんが出迎えてくれた。
「おかえりなさい!」
「ただいま。今日は聖奈が異世界に留まるでいいんだよな?」
俺は退学の手続きがある。
異世界の冒険でもし死んでしまった時に、家族や大学に掛かる迷惑を少なくするためでもある。
「そうだね。転移できる聖くんをこっちに残すのは申し訳ないけど…楽しんでくるね!」
いや、遊びだけちゃうから……
「ほどほどにな。俺のことは気にするな。わからないことは聖奈に報告するよ」
「うん。それと外に出てみない?ここ田舎だから凄いよ?」
何が凄いんだ?
聖奈さんに連れられて、2階の外階段に出た。
「凄いな。星がこんなに見えるなんて」
空には星々が瞬いていた。
「ねっ!異世界でも見える星とかあるのかな?」
「それなら異世界って呼ばないんじゃないか?
魔法もあるし、やっぱりこことは違う所なんだろうな」
ロマンチックな風にあてられたのか、聖奈さんが手を握ってきた。
やめて……俺にはそっちの防御力がないの……
「もっと色んなところを、聖くんとミランちゃんとたくさん見たいな…」
「見えるさ。俺達なら」
俺もこの星空より綺麗なものを沢山見たい。
それで、そこで浴びる程の酒が飲みたい。
転移の時間がやってきた。
倉庫である一階からはまだ月が見えないので、2階から転移することにした。
「待たせたな。ミラン」
聖奈さんと一緒に部屋へとやってきたミランに挨拶をした。
「いえ。それでこの後は?休まれますか?」
今は深夜なので、この世界では動く人がいない。
「いや、俺は元の世界に戻らなくてはいけない。
一先ず今出来ている家具を取りに行く」
これはすでに聖奈さんと話し合ったことだ。
「一人で行くから二人は休んでくれ」
ブラック企業体質のミランは、俺が一人で残業することに中々納得してくれなかったが、聖奈さんが抑えてくれた。
「じゃあ、明日は月の出る頃に倉庫に行くね」
明日は馬車を引き取ってもらう予定だ。朝まで工房で過ごさなくてはならないけど、旅のためにはどこでも寝れるようにならないとな。
俺は一人工房へと向かった。
「よし。こんなもんかな?」
会社に家具を転移させた俺は、会社で寝ることにした。
ソファベッド買って貰ってて良かった。
「社長。起きてください」
ん?朝か?
「おはようございます。メモを見てくれたんですね」
寝る前に、出社したら起こしてもらうようにメモを残しておいた。
「私はこれから出ますが、今日はいつでも携帯電話は繋がるので、困ったら連絡ください」
「「はい」」
なんかこの二人、初めから返事の息は合っているんだよな。
俺は車でマンションに帰り、シャワーを浴びて準備を済ませてから大学へと向かった。
ちなみに白砂糖や胡椒は、ネットでこまめに注文しているから、会社のストックが切れることはない。
あれ?車を買った理由の一つがなくなってないか?
電車に揺られながらそんなことを考えていると、大学の最寄駅へ着いた。
(何か、視線を感じるな……まさか、聖奈さんのストーカーか?)
もちろん俺のストーカーではない。
大学に向かう人はそこそこいるので、誰の視線かはわからない。
男の俺ですら気持ち悪いのに、聖奈さんは怖かっただろうな。
大学に着いた俺は退学の手続きをする為、学生課、教授、学長と、たらい回しを受けた。
「さすがに不真面目な俺を引き止める声は上がらなかったな。
辞める理由で会社を始めたと伝えたら、学長だけは少し食いついてきたけど…それも職種を伝えたらなくなったな」
多分、学生の就職先の当てにしようと思ったのだろう。
俺はその後、須藤と連絡を取り、飯を奢る代わりに話をして、頼み事をする。
「長濱さんにストーカー?」
「そうだ。ストーカーといじめの加害者がわかったらメッセージを送っておいて欲しい。
今朝も電車を降りてから視線を感じた」
「えっ!?聖にもストーカー!?」
「いや、俺のなわけないだろ?聖奈のストーカーが俺をつけていたんだろ?」
「そ、そうだよな。わかった!友人が困っているんだ。俺なりに調べてみるよ」
「ああ。頼む。だけど、あまり大っぴらにするなよ?須藤まで巻き込まれたらミイラ取りがミイラになるからな」
生涯で使う事はないと思っていた言葉ランキングに入る『ミイラ取り〜』が使えて俺はご満悦だ!
「ははっ。大丈夫だ。これからもっと暑くなるけど、働き過ぎには注意しろよ?」
俺はそんなに働いてません!とは言えず、数少ない友人の激励に応えて俺は店を後にした。
side聖奈
「じゃあ、商人組合に行こっか!」
「はい」
ミランちゃんと一緒に、重たいカバンを背負って商人組合を目指すことに。
「今日もセイさんはおられないのですか…わかりました。少しお待ちください」
流石に本人以外には売り上げは渡せないみたいで、ハーリーさんは新しい預り証を取りに向かってくれた。
「こちらが新しい預り証になります」
古いものと交換したら私は話を切り出した。
「明日は大量の入荷になってもいいですか?」
「っ!助かります!預り証を見て貰えばご存知かと思いますが、販売を渋っている状況なのです。
これで断ることから解放されます!」
やっぱり。でもこれで、買いたい物に手が届きそうだね。
「明日はかなりの量を約束します。なので、今ある分は全て売ってください。
セイくんも明日は来るので」
これで買いたい物を買っても輸入品の分は余分に残るかな?
「わかりました。朝は総出でお待ちしています」
「では、私達はこれで」
商人組合を後にして、馬車を引き取った私達が次に目指したのは街の外。
「セーナさん。ここにはどうして?」
森の中にきた理由を問うミランちゃんに、私は意味ありげな顔をして答える。
「これの使い方を試すためだよ」
言葉と共に、拳銃を取り出した。
「それは前に言っていた、魔物を倒す為の武器ですよね?
そんな小さな武器で倒せるなんて…いえ。疑ってはいないですよ?
不思議に思いまして」
その後の練習で、ミランちゃんは腰を抜かした。
可愛かったから写真を撮ればよかったな。
次からはカメラを持ってこよっと。
練習を終えた私達は、夕方前に工房へ着いた。
「以前、頼まれていた職人仲間だが、二人参加するって返事を貰ったぞ」
バーンさんからいい返事を聞けて頬が緩んじゃう。
「ありがとうございます。これは今の出来ている家具の代金です。
それと、これは依頼なのですが、この図面で作れそうですか?」
日本から持ってきたオーダーメイドの図面を渡した。
「えらく精巧な紙に図面だな。…うむ。
これなら作れる。職人冥利に尽きるな!」
どうやらやる気まで出たようだね。
「では、これからは注文があればこちらのボードに注文書、図面を貼っておきますね」
これで注文は受けてもらえる。
私達に足りなかった職人さんもこれで足りるね。
貿易はバランスが大切だから、二人いれば今のところ丁度いいんじゃないかな?
うちの家具は全てハンドメイドで、異世界の木材っていう、地球ではなんの木なのか、そもそも木なのかもわからない希少な物。お金持ちが欲しがるはず。
実際値段は他のアンティーク調の物より高いのに売れてるしね!
次の話が本題だったのだけど、二つ返事でバーンさんもミランちゃんもOKしてくれた。
これで後は買うだけね!
工房を出た私達は、近くの森で再び訓練をした。
訓練も兼ねて、交互に仮眠を取った私達は時間になったので工房へと向かった。
「おはよう!セイくん!」
「おはよう?なんか楽しそうだな?」
聖くんにはバレバレか。
「うん!こっちでの計画が順調だからね!」
「例によって、俺にはまだ秘密か?」
聖くんをいい意味で驚かせるのが私の楽しみだからね!
「ミランちゃんも言ったらダメだよ?」
「わかってます。セイさんお疲れ様です」
ミランちゃんは久しぶりの聖くんとの二人きりに、今から緊張してるみたい。
可愛いぃ!
「ああ。お疲れ様。銃はどうだった?」
「凄かったです!あれがセイさん達の世界の武器の威力なんですね…凄い世界で生きているんですね!」
ミランちゃんは私達の世界を誤解しているけど、面白いからもう少し放っておこうね。ね?聖くん?
この後、聖くんに家具を転移してもらってから、私を地球に送って貰った。
楽しんでね二人とも。