先に店を出た椎名を小走りに追った。
「待って、椎名さん……!」
財布から千円札を抜き出しながら少し慌てると、彼が足を止めて振り返りざまに手の平を向けた。
「いいです、いいです。ていうか、駄目です。俺から誘いましたから」
「そっちこそ駄目です。ご馳走になる理由が――」
ない、と言いかけた時、ふと我に返る。
行きつけの美容院の担当美容師。
随分と慣れたとはいえ、言ってしまえばそれだけの関係。
ラーメンをご馳走になってもいいと思える理由がない。
けれど、もっと言えば、そもそも食事を共にする理由もない。
普段の私なら絶対にしない。
仕事の付き合いでもなければ、他人に割く時間も心も愛想もない。
そのはずなのに、
胸の内でふいに湧いた疑問の答えを求めるように顔を上げた。
私の視線を受けた椎名が、こてん、と首を傾げる。
その仕草が妙に可*************************
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