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第5話:碧族の街のテレビから
🍽️ シーン1:食堂でわちゃわちゃ
昼下がり、建設エリアに併設された碧族直営食堂《ミドリの台所》。
清潔感のあるガラス張りの外観。内部は緑と白を基調にした空間で、壁には碧族による設計図がずらりと飾られている。
テーブルのひとつには、いつもの五人が集まっていた。
「うおーっ!“碧族肉盛り定食・建築士盛り”来たっぺー!!」
ゴウが褐色の腕を振り上げ、巨大な肉の山を前にして歓喜している。右腕の重機フラクタル義手は食事中だけスリープモード。
「食事前の騒音、毎回恒例だっぺね……」
ギョウが冷静にナイフを入れつつ、眼鏡の奥で苦笑している。
キョウは黙って完食中。碧色のキャップとマスクをつけたままだが、食べる速さは誰よりも速い。
ケンチクはと言えば――ゴーグルを首に下げたまま、スープをすすりながら建設図を見ていた。
「うちの塔な、夕方になると光がちょっとだけ赤みがかかんねん。あれ、“夕焼けフィルター”仕込んであるねんで」
「それ、塔の内装と反応して照度調整もしてる。僕のプログラム」
アセイが端末を横に置いて、静かに微笑む。白と青の設計スーツがどこかくつろいで見えた。
すずかAIが、壁の小型端末から声を発する。
「皆さんの食事行動、安定しています。現在、チーム幸福度78%。とても良好な状態です」
「おお……すずか、ええこと言うやん。あんたも食べる?」
「……私は食事の必要がありません。ですが、見ていて心が温かくなります」
📰 シーン2:世界の動き、テレビ画面にて
店内の壁に設置されたモニターが、番組を切り替える。
「碧族ネットワーク公式ニュース」――アナウンサーは碧族の青年。背景には青と金のロゴ。
『本日の碧族化人数は19名。うち12名が日本国内、4名が北欧地域、3名が旧アメリカ西部州で確認されました』
『新たに発見された“友好的人間集落”では、碧族に対する理解活動が始まっています』
画面が切り替わり、草原で農作業する老夫婦が映る。
「碧族?ああ、わしらが育てた野菜、食ってくれるなら、誰でもええわいな」
「……そういう人、もっと増えたらええのになぁ」
ケンチクがしみじみと呟く。
そして次の瞬間、画面が切り替わった。
『緊急特報:碧族の英雄・ゼインが短時間ながら都市第8号を視察』
モニターに、銀髪の少年と、眼鏡の青年が映る。
ゼインは風のような身軽さで塔の周囲を歩き、ナヴィスが横で歩いている。
「うおっ、ゼインやん!相変わらず自由な奴やなぁ……」
ケンチクが笑い、アセイがわずかに頷いた。
「彼が来たってことは、ここの街も、世界から注目されてるってことだ」
🤖 シーン3:すずかAIとの対話
夜。中央塔の建設区画、照明の落ちた作業室にて。
アセイがひとりで図面を眺めていると、背後から静かに声がした。
「まだ休まないのですか、アセイ」
「……すずか。今日のゼインの映像、少し見たよ。あの人、ずっと走り続けてる。……なのに俺は、何かを守る塔すら満足に作れない」
「彼の使命は“破壊と再構築”。あなたの使命は“記憶と未来をつなぐ”こと。
アセイ、あなたの設計には、人の想いが残っています」
「……それって、強さになるかな」
「はい。私はそう信じています」
アセイの手が、静かに図面の一点を修正する。
🌌 シーン4:塔の上で語る未来
深夜。中央塔の頂部――建設途中の展望層に、五人が集まっていた。
ケンチクが背伸びをして言う。
「……ここ、完成したらな、星空も見える展望カフェにするんや。デートにもええやろ?」
「へぇ。ひとり用席、たくさん設けてくれ」
ギョウが意外とノリよく返す。
「星……街の上に、未来がある」
キョウの短い一言に、全員がしばし黙る。
その時だった。夜空の一点に、薄く輝く光が現れる。
🌀 シーン5:謎のフラクタル文字
「……あれ、なんや?星か?」
塔の上から見える夜空に、文字のような光が浮かぶ。
淡く、でも確かに“何かのコード”のような図形が、空に走った。
アセイが目を凝らす。
「……あれは、ただのノイズじゃない。誰かが、“上”から送ってきてる」
すずかAIの声が震える。
「フラクタル反応、検知……未知の領域からの信号。解析を開始します」
夜の空は静かで――その分、謎は深く、そして美しかった。
――休息の一日。その空に浮かぶは、始まりの兆し。