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第83話:翡翠運輸の誕生
◆ 朝のニューススタジオ
街頭ビジョン。
淡い緑色の背景に大きな「翡翠運輸(ヒスイウンユ」のロゴが浮かぶ。
アナウンサーは灰色のスーツに淡緑のネクタイ。
目元の印象は柔らかいが、口調はひどくゆっくりとしている。
「本日より、国内の配送サービスは “翡翠運輸” に統合されます。
安心の物流を、全国へ」
画面が切り替わり、
新しい社長が登壇した。
スーツは墨染め、ネクタイは緑。
髪を後ろに撫でつけ、笑みは静かすぎるほど均一だ。
「ヤマト便、サガワ便、カンガルー便など
すべてを、一つにまとめました。
これからの物流は、“安心の一手”で動きます」
拍手のSEが流れたが、会場の表情までは映らない。
彼の背後には、
翡翠核の透過CGと「イロハ配達区ネットワーク」の図が淡く回転していた。
ミウの母親(ベージュのブラウスに薄紫のカーディガン)が
テレビを見ながらつぶやく。
「便利になるわねぇ……荷物が全部ひとつで届くなんて。
うん、 安心だわぁ」
◆ 街の反応
まひろは、水色のパーカーに黄緑の短パン。
駅前の大型パネルを見上げた。
「……お母さん、これってすごいの?」
母はエコバッグを片手に、淡く微笑んだ。
「え〜♡ 全部まとまるのが一番安心なのよ。
どこが届けても、ぜんぶ翡翠運輸なんだから」
駅構内では、自動アナウンスが流れる。
「本日より、宅配・荷物・公的通知は 翡翠運輸 が担当します。」
「イ区・ロ区・ハ区の物流帯を、より効率的に最適化します。」
◆ 裏側:翡翠運輸の実態
その頃。
薄暗い作戦室。
壁には巨大な大和国地図、そしてイロハ配達区の帯が緑色に光っている。
翡翠運輸のロゴ入りジャンパーの男たちが
無言でパネルを操作し、配送データを監視していた。
・差出人情報 → 翡翠核に自動送信
・宛先 → 国軍の街守隊端末へコピー
・荷物の匂い → AIセンサーで解析
・重量/振動 → “危険度”を自動でランク化
そして、
配達ルートを走るバイクには小型の心理計測端末が搭載され、
配達員の心拍・発声・視線がすべて記録されていた。
室内の最奥。
緑のフーディを着たゼイドが、
静かに監視パネルを見つめていた。
「……配送は情報の血管だ。
“荷物を運ぶ”ではなく、“家の中に触れる”。
だから国は、物流を一つにまとめた」
彼の指が端末に触れると、
イロハ配達区ごとの “安心指数マップ” が開く。
「イ区は流入が多いから、今日も監視を上げろ。
ロ区は平常。
ハ区は……配達を多めに入れれば、動向が読める」
影の部下たちが無言で頷き、操作を続けた。
◆ 市民サービスの“表”と“裏”
夕方。
ミウの母が翡翠運輸の窓口で荷物を受け取っていた。
淡いベージュのワンピースに、柔らかいカーディガンを羽織り、
両手を胸の前で合わせて笑う。
「え〜♡ こんなに早く届くなんて……ほんと安心ね」
窓口の職員は、灰緑の制服を着て微笑む。
「本日は イ配達帯 でしたので、最優先でお届けいたしました」
しかし裏で、
その荷物の“匂い・重量・送り主”は
すでに翡翠運輸本部に送られていた。
◆ 結末:ゼイドの言葉
夜。
翡翠運輸の中枢フロアで、
ゼイドは緑色のモニターに映る全国の“配達動線”を見つめていた。
「国は戦う場所を変えた。
今はもう、剣でも銃でもない。
荷物と手紙が、最前線だ。」
淡い緑の光が、
彼の瞳にゆっくり映り込んだ。