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#恋愛
ばたっちゅ
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モブD
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応接室での重苦しい会話を終えて、俺たちはアルダーの案内で屋敷の厨房へ足を踏み入れた。
「うおっ……すげぇ」
思わず声が漏れた。そこは高級レストラン並のピカピカに磨き上げられた空間だった。大理石の調理台。使い込まれつつも手入れが行き届いた調理器具。
(こんなに綺麗に手入れされているのに……前の料理人は何があったんだ?)
「きゃっ!!」
サフランの小さな悲鳴が聞こえ、俺は声のした方を見て驚く。そこには大きな飛竜の肉が置いてあった。大人の胴体ほどもある巨大な肉の塊。鱗は残っており、赤黒く見るからに筋張っている。
その横には見たこともないような色鮮やかな野菜や果物が山のように積まれていた。
「な、何だこれ……」
俺が驚いていると、アルダーが横に立った。
「本来であれば明日カエンボクと対決する予定だった料理人は……飛竜の討伐の際に大怪我をしてしまいました。あの悪徳貴族のすることだ、きっと嵌められたに違いない……」
アルダーが微かに震えているのがわかる。
「飛竜の肉は手に入りましたが、これを調理する人がいなかったんです」
飛竜の肉と聞けばいかにもファンタジーな響きがするが、近づいてみるとかなり独特の獣臭いニオイがする。野生の味というのだろうか。普通に調理しただけではかなり癖のある味になりそうだ。
俺は肉の傍に置いてある野菜の近くに行き、屈んだ。
(肉の臭みを消すような……玉ねぎとか舞茸みたいな野菜はないのだろうか)
いくつか手に取って匂いを嗅いでみる。
そして、アルダーの方を見上げて質問する。
「アルダーさん、参考までに聞きたいんすけど、相手のカエンボクはどうやってこいつを調理してくるつもりなんでしょうね?」
俺の問いにアルダーは眉間に皺を寄せた。
「おそらく……いや、間違いなく強力な炎魔法で一気に焼き上げるでしょう」
アルダーは飛竜の肉に拳を当て、コンコンと叩いて見せる。
「飛竜の肉は非常に分厚く硬いため、並の火力では中まで火が通りません。カエンボクの圧倒的な炎魔法で表面を豪快にあぶり焼きにするでしょう」
「なるほど、かなりの力技っすね……この臭みはどうするんすかね?」
「こちらもおそらくですが、強烈な香辛料を大量にまぶして飛竜特有の臭みを消すでしょう。街中のお店で香辛料が大量に売れたという噂を聞きました」
「なるほど、高火力で焼いて、スパイスで臭みを誤魔化す……典型的な大味ってやつっすね」
俺が呟くと、ティアレが急に話に入ってきて、腕を捲り上げた。
「火力勝負なら僕だって負けないよ! ユウト、僕の最大火力であの肉を一気に炭にして……じゃない。焼き上げるよ!」
今にも手のひらから炎が出てきそうな彼女を、俺は必死に止める。
「いやいや、ストップっす」
「ふぇぇ……」
「せっかく高級食材があるのに、同じことしてもつまらないだろ? 真正面から火力でぶつかるよりいい方法があるっすよ」
俺は再度巨大な肉の塊と野菜の山を見つめた。
(分厚い肉、強すぎる臭み、硬い筋……そしてこの野菜の山。これなら……あの方法でいけるかもしれないな)
「サフラン、ティアレ。ちょっとこっちに来てほしいっす」
俺は二人を呼び寄せると、厨房の調理台から一本の包丁を手に取った。
「サフラン、この包丁持ってみてくれるっすか?」
「う、うん!」
サフランはきょとんとして俺から包丁を受け取った。いつも彼女が背負っている大剣に比べたらおもちゃみたいな軽さだろう。
「うわぁ、軽いね。こんな短い刃物で戦ったことないなぁ、あ!戦うじゃなくて料理か。いつもと全然感覚が違うけど……」
「サフランの能力なら、そのくらいの刃物、自由に……それも精密に扱えるっすか?」
「もちろんだよ! 私ならこのくらい目隠ししてもミリ単位で動かせるよ」
そう言って彼女は包丁を動かしてみせた。
俺はその様子を見て安心した。そして、道具袋から布を取り出してサフランの目を覆った。
(サフランの実力なら見えなくても切れるはず。それに、こうしておけば玉ねぎで目に染みることなく、一石二鳥っすね)
「ま、待って……ひゃんっ! 何するのユウト」
サフランが顔を真っ赤にして抵抗してみせた。
「あ、危ないってサフラン。ちょっとやってほしいことがあって」
俺はさっき野菜の山から取り出した、丸みを帯びた野菜をまな板の上に置いた。元の世界では玉ねぎに似ている野菜だ。
「サフラン、目隠しをしたままその包丁でこの野菜を細かく刻んでほしいっす。」
「えぇ……う、うん!」
サフランは驚いていたが、包丁を持ってまな板の置かれた机の上に立つ。サフランが包丁を構えると、時間が止まったように空気が張り詰める。
スゥ……と息を吸い込むと、一気にサフランは包丁で目の前の野菜を切り刻んだ。
次々に細かくなっていく野菜を見て俺は安心した。
「で、できたよ、ユウト!」
「あぁ、よくやったな、サフラン」
彼女は目隠しを取り俺に向かって笑顔で振り返った。
俺は刻まれた野菜を一粒手に取り匂いを嗅ぐ。
(やはり玉ねぎと似ている。これは使えるっすね)
野菜だけではない。あのサフランの包丁さばきなら肉の下処理も任せられそうだ。
次に俺はティアレの方を向いた。
「ティアレ、明日の作戦のために水と火の魔法の出力調整について聞きたいんすけど」
「調整?」
「そう。力の加減ってどこからどこまでできるっすか?」
ティアレは不思議そうな顔をして俺の顔を覗き込む。
「指先からチョロチョロ出すのもできるし、高火力ならこの屋敷ごと吹き飛ばせ……」
「なっ……!」
隣で聞いていたアルダーが焦り出した。そりゃそうだと思い俺は慌ててティアレを止める。
「いやいや、そんな高火力はいらないっすよ。明日はチョロチョロ出すだけでいいっすよ」
「えー! 魔法は威力が全てって教わってきたのに、だめなの?」
「ダメっす!」
「それじゃ負けちゃうよ……」
ティアレは少し落ち込んだ顔をした。隣にいるサフランも不安そうな顔をしている。
「そうだよ、ユウト! あんな分厚い飛竜の肉を焼くのにチョロチョロした火で焼いていたらいつまで経ってもお肉が焼けなくて負けちゃうよ」
「大丈夫っす。安心してください」
彼女たちは必死に俺に抗議をしてきた。ティアレは拗ねたような顔をしてそっぽを向いた。
「それじゃ負けて奴隷になれってこと……」
「とにかく俺の言うことを聞いてくれたら大丈夫っすから」
「それじゃユウトの奴隷みたいじゃん……」
(待ってくれ……そんな意図はないのに)
異世界の常識では分厚い肉は強火で一気に焼くのが正義なのかもしれない。でも料理の真理は違う。強火で焼けば焼くほど肉は硬くなって旨味が逃げてしまう。少ないお金でいかに家族に美味しいお肉を食べさせられるか研究を重ねて答えを見つけてきたんだ。
俺は不安と混乱でパニックになりかけている二人を前に、安心させるように微笑んだ。
「まぁ明日を楽しみにしているといいっすよ。俺の家事スキルの本当の力、奴らにたっぷり見せつけてやるっすから」
コメント
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ああーもう、めっちゃいいとこで終わったじゃん!😭🔥 第15話、ユウトの「家事スキル」が異世界の常識をぶち破ろうとしてる感じ、すごくワクワクするね。飛竜の肉の強烈な臭みや硬さに対して「強火の力技」じゃなく、丁寧な下処理と火加減で勝負しようとしてるのがユウトらしいし、そこにサフランの精密な剣術やティアレの魔法をどう料理に組み込むのか……もう想像しただけで面白すぎる。 サフラン目隠しされて「ひゃんっ!」ってなってるところ、ちょっとかわいくて笑った。でもあの包丁さばき、本気でカッコよかったね。 明日の料理対決、絶対ユウトの勝ちだと思うけど、どうなるのか気になって仕方ないよ!🥺