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EPISODE 2
それからというもの、阿部と深澤と出会ってから実に数ヶ月が経とうとしていた。
人魚のニュースは日本に留まらず世界中で大々的に取り上げられるようになっていた。
その頃にはなにが事実でなにがフェイクなのか分からないような噂話で溢れていた。
・人魚の肉には不老不死の力がある。
・人魚の涙は結晶化すると真珠になる。
・世界中の大富豪が人魚を観賞用として手に入れるために裏組織と取引している。
・男女の人魚で強制的に性行為を行わせて繁殖を試みる企業がある。
・放射能汚染された魚を食べたら人魚になってしまう。
・人魚と人間が子作りしてできた赤ん坊の手には水かきができる。
・一度人魚になってしまえば二度と人間に戻れない。
💜『……なーんか。中には聞いてて反吐がでるような噂もあるよね』
💚『裏組織が〜みたいな噂はあながち間違ってなさそうな気がするけどね』
🤍『元は普通の人間なのにね』
🖤「ラウール、なんかもうそこに馴染みきってない?」
💜『最近用なくても来てくれるよねラウール笑』
🤍『ふっかさんもあべちゃんも大好きっ!』
💜『カワイイ!!』
💚『めめ、撮影は順調?』
🖤「問題ないよ。あと1週間でクランクアップになる」
💜『帰ってきてからも仕事ヤバいんでしょ?過労でぶっ倒れたりしない?』
🖤「康二見つけるまではぶっ倒れない」
💚『なんか日に日に重くなってない?』
🤍『いやこれは隠れてた本性がでてきてるだけだから』
今日は目黒が帰国し本格的に向井を探しだす計画に移る前の最終ミーティングといったところだ。
目黒はホテルで、3人は阿倍の研究所でテレビ通話をしている。
💚『よし、本題に入ろう』
💚『まず康二が海に出てから今までの間に起きた海難事故から洗い出した。何件か奇妙な事例があったんだ。ふっかお願い』
💜『はいはい。その奇妙っていうのがね、乗組員が誰一人として居ない難破船が見つかったって話なんだよ』
💜『同じような事件が日本で3件あった。
2つは漁船。もう1つは、科学研究所が所有してる船』
🖤「誰も乗ってない難破船…なんか怪しい」
💜『でしょ?表向きはただの事故で処理されたっぽいけど』
💜『…ってことで。その事故があった現地に俺とラウールで行ってきたのよ』
🖤「えっ?ちょっとまってラウールも?そういえば最近やたら2人で写真送ってくると思ったら……
え、旅行じゃなかったの?笑」
🤍『調査だよ調査!』
🤍『って言っても、俺が行ってきたのは漁船の2件だけだけどね』
💜『でもね現地の人達に聞いてきて、救助された人がほとんど居ないの!みーんなまだ行方不明!』
💜『奇跡的に救助された人はたった1人』
🤍『胡散臭いルポライターに化けてふっかさんがインタビューしてくれたんだよ』
💜『そそ、ほんで助かった当の本人も全然覚えてないって言ってた。気づいたら病院だったって』
🖤「…俺の時と一緒だ」
💚『そう!大事なのはそこだ。めめと同じってことはこの事件には人魚が関わっている可能性が高い』
🤍『それでね、もう1件のほうも現地で聞いてみたんだけど、やっぱみんな見つかってないんだって。みんな人魚だ人魚だって噂がすごいの!』
💜『ほんでもう1件。科学研究所の船の方。
これは現地行っても多分わかんないだろうから俺が顔変えて研究所に行ってきた』
🖤「今なんかとんでもないこと言った?」
💜『潜入捜査なんて日常茶飯事よ。警備員になりすましてね』
🖤「それでどうだったの」
💜『場所と時間と概要をサラッと盗み見ただけなんだけど…』
💜『お察しの通り人魚の捕獲を狙ってたっぽい』
🤍『あ、やっぱりそうだったんだ』
💜『それだけじゃないよ。どうやら研究所のほうでも研究がだいぶ進んでるっぽくて』
💜『人魚の歌声の周波数を調べて、聞こえても害がないようにするための周波数カットの補聴器が開発されてるっぽい』
💚『それがホントに開発されたらかなり厄介だな…人魚に対して怖いもの無しになる。今以上に研究に歯止めが聞かなくなるぞ』
🤍『ねぇ、ふっかさんが行ったその研究所に別の人魚さんはいたの?』
💜『あー…それ聞いちゃう?』
💚『何その含みある言い方』
💜『いたっちゃいたみたいよ…数日前までね』
🖤「それって…」
💜『これまた後味悪いよ』
💜『データにあった名前と写真見たら、こないだ見せたカップルYouTuberの彼女の子だったの。
…俺が見に行った時には手遅れだった』
🤍『うわっ…』
💚『これで分かったね。新たな実験個体を探してるんだ』
阿部はパソコンを操作し目黒に画面共有をする。
深澤とラウールは阿部にひっつくようにパソコンモニターを覗き込む
💚『ということで。康二発見大作戦の概要を説明するよ』
🤍『なんかネーミングダサいな…』
💚『はい聞こえません。えっとね、この3つの事件が起こった場所、日にち、時間帯、天気、あとは潮流と海流』
💚『これらを元に人魚の住んでいるおおよその位置を算出する』
共有された画面に某地方の地図が出てきた。
阿部が操作をするととある海沖が丸で囲まれた。
💚『ここ、丸で囲ってるところに人魚がいる可能性が高い。偶然にも事件が起きた3件は全てこの周辺で起こってる』
🤍『じゃあ康二くんはここに……?』
💜『事件に関わってるかは置いといて、いる可能性はあるね』
💚『この周辺の塩分濃度、水温、生物を調べたんだけどおそらく人魚にとっては住みやすい環境だと思う、潮の流れも穏やかだし 』
💚『それにこの場所、康二とめめが別れた場所からもそう遠く離れてないんだよね』
🤍『それで、康二くんをどうやって見つけるの?』
💚『見つけるというより、呼び出す。かな』
💜『さて問題ですっ、魚にできなくて人魚に出来ることはなんでしょ〜か!』
💚『正解は文字が読めることです』
💜『正解言うの早くない!?』
🤍『あっ! 手紙!!』
💚『そう!瓶に手紙を書いてこの海域に沈める。
めめ直筆だと筆跡でもわかると思う』
🤍『なるほど!見つけた人魚さんが康二くんと知り合いだったら教えてくれるかもしれない!』
💚『ただ手紙だけじゃ信憑性が低い。そこで、手紙と一緒にめめが普段使いしてる物も一緒に沈める』
💚『普段からめめが付けてたものだったら康二も覚えてるはず。差出人がめめって分かる』
💜『まぁ計画のことを考えたら腕時計がいいかな』
🖤「なんでですか?」
💜『康二を呼ぶのに時間が指定できる!』
💚『手紙の内容に、こう書くんだよ』
💚『次の満月の夜の12時に、俺たちが別れた浜辺に来てくれ。ってね』
🤍『あっそっか。海の中だと時間も曜日もわかんないのか……!』
🖤「だから時計ね」
💚『デジタルウォッチだと曜日が見れるものもあるから理想的だけど……康二に見覚えのあるやつの方がいいから仕方ないかな』
🤍『満月にってことは……チャンスは月に1回だけってこと?』
💚『う〜ん……パッと見て満月って分かるかといえば微妙だからな。その前後の日とかも俺らは見張っといた方がいいかもね』
💜『こればっかりはしょうがない。向こうはスマホないしね〜』
💚『めめ、高級腕時計が惜しいならふっかのやつパクるからね』
💜『いやちょっと!俺のもまあまあな値段なんだけど!?』
💚『コレクション1個減ったところで痛くないでしょ』
🖤「いや大丈夫、俺自分の使うから笑」
💚『お察しの通り、この作戦でもだいぶ運任せになる。康二とまた会えるって保証はない』
💚『それでも……いまはこれに賭けるしかない』
🖤「……わかった。俺はあべちゃんを信じる」
💜『帰ってきたらすぐに作戦に移ろう!まずは残りの撮影頑張って!』
🖤「ありがとう笑」
💚『じゃあ今日はこのへんで。また連絡するよ』
🖤「わかった、ありがとう」
🤍『めめバイバ〜イ! 』
🖤「じゃあね」
目黒との通話を切ったあと、阿部はまだパソコンを操作していた。
ラウールがふと疑問を口にした。
🤍「あべちゃんって……いつからこんな大きな研究所建てたの?」
すると阿倍の作業する手が止まった。なにか考えているのか、目が少し泳いだような気がした。
💚「……いつだったかなぁ。でもまだそんなに経ってないと思うな」
🤍「それまではどこにいたの?」
💜「あべちゃんはね〜……人間の汚いとこ見ちゃったんだよ。それで今独立してるの」
🤍「もしかして……あんま聞いちゃいけなかった?」
💚「その時がきたらまた説明するよ」
💜「それよりねラウール」
🤍「ん?」
💜「ラウールにはもう1つ大事な仕事がある」
🤍「俺に?」
💜「うん、ラウールにしか出来ない仕事」
💜「ただ、これはラウールにもリスクがある。
聞いてくれる?」
🤍「……うん」
あとがき
読まなくても️⭕️
本編初めの方にある嘘か真かわからない人魚の噂話の中に実際にある人魚の伝承がいくつか入っています。
ちなみにずっと言っている「人魚は歌声で人を海に引きずり込む」というのも実際にある伝説になります。