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散って舞う

12 - ヤエの案内ー2

♥

173

2024年05月27日

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少しすると色とりどりのバラでできたアーチが見えてきた。

どうやらあそこを潜ると花畑に着くようだった。


「これからあの、今見えてるアーチを潜るんだけど…サクラ気をつけてねっ!」

と突然ヤエが言い出した。

ただの綺麗なアーチなのにどうしたのだろう?と思い首を傾げると続けてヤエは


「だって、あのアーチはバラが使われてるから棘があってよそ見してると怪我しちゃうんだよね…」

と腕をさすりながら答えてくれた。

きっとヤエの実体験だったのだろう。そんな事を思いながらもし自分だったら…と想像すると既に腕がズキズキと痛い気がした。

するとヤエが


「あれ?サクラ?どうかした?」

と不安げに聞いてきた。もしかしたら想像した時に思っていた事が顔に出てしまったのかも知れない。

少しだけ苦笑いになってしまったけど


「アーチの、所で、怪我するの…想像したら、痛くなっちゃった」

と素直に話すと、口を開けきょとんとこちらを3秒ほど見つめ


「あははっ!なにそれ!」

と楽しそうに笑って


「なんか、サクラっぽくていいね」

と言ってきた。するとなんだか心が暖かくなって私まで釣られる様に笑ってしまう。


「あ!着いたよっ!」

そう言われ前を見ると大きなアーチにピンク、白、赤、青……と色鮮やかなバラが咲いていた。

思わずアーチから立ち止まって見てみているといつの間に進んでいたヤエの声が前から聞こえた。


「サクラ〜?どうしたの〜?」

そう不思議そうに聞いてきてハッとした私は


「今行くっ!」

と棘に気をつけながら早歩きでヤエの隣りに並んだ。

すると、バラばかりに目が行っていて気づかなかったが目の前には満開に咲いた綺麗な花畑が広がっていた。


「綺麗だよねっ!」

「うん…!」

と言うと同時に花の甘い香りを連れて優しい風が私達を撫でた。

するとヤエが「よしっ!」と小さく言って


「ここに咲いてるお花っ!紹介してあげる!」

と言ってから私の手を握り歩いて行った。


少しすると見覚えのある花が見えた。

するとその花の前でヤエが立ち止まり


「 このお花知ってる?見た事はあるんじゃ無いかな〜?」

と指さしながら聞いてきた。

当時の私は「当たり前」とでも言いたげに自信満々にこう答えた。


「 分かるよ!……チュー…リップ!」

「ぴんぽ〜んっ!」

「やった〜!」

と腕を上にあげてオーバーリアクションで喜んでいた。

そんな私を見ながらヤエは嬉しそうにニコニコと微笑んでいた。すると「次は……」と小さく言って


「これは知ってる?」

とチューリップの奥にあった花を指さした。

こんな会話はシダレともした気がする様な気がしながら私は「う〜ん?」と首を傾げる。

すると


「 分からなかったか〜」

とニヤニヤしながら言っていた。その顔はシダレと言い合っている時に良くする顔で、「癖だったんだ…」と思わず見てしまった。


「これは椿ツバキ!」

と教えられたのが嬉しかったのかルンルンと答えた。そんな姿を見ながら私は「おぉ〜!」と小さく手をパチパチと鳴らすと満更でも無いように少し頭をかきながら照れていた。

すると調子が乗った様に「よぉしっ!」と言って私の手を引き、色々な花を紹介してくれた。

水仙スイセンにユリ、ひまわり…その他にももっと沢山の花を楽しそうに教えてくれた。


「これが最後!」

と良い花を見てみると、真っ赤な色の不思議な花が沢山咲いていた。


「これはね…彼岸花!」

とヤエが教えてくれたこの花は綺麗な赤色なのに、どこか毒々しい様な恐ろしさを感じる様な花だった。

思わず触ろうと手を伸ばすと


「触らないで!!」

とヤエの必死そうな、少し怒った様な声が聞こえ思わずビクリと体をはね上げる。


「あ…ごめん…そんなに怖がらせる気は無かったんだ…」

そうヤエは丸い眉毛を八の字にしながら言ってきた。 私も


「ご、ごめん…な、さい……シ、ダレも、花…は、さ、わっちゃ…だ、ダメ…って…い、ってた…のに…」

と細く弱い声でそう話した。するとヤエは慌てた様に私の側に来て


「いや、その…そのお花は毒があるから…!サクラが触っちゃったらまずいし…その…怒ってた訳じゃなくて…!」

と言ってきた。

どうやら彼岸花には毒があったらしく、私を守ろうと焦った為だった様だ。

それでも当時の私はプチパニック状態で心臓はバクバクとなり目からは大粒の涙が零れ落ちた。

そんな私を見たヤエが焦りながらも私の背中をさすった。


少しして落ち着いた私にヤエが


「びっくりさせちゃってごめんね… 」

と眉毛を八の字にしながらしょんぼりと言ってくるから私が


「大丈夫…だよ…!」

と少し赤くなった顔で微笑む様にして返した。

するとヤエはほっとしたように私の手を握り


「じゃあ帰ろうっ!ご飯の時間に間に合わなくなっちゃうよ!」

と言い、私も


「うん!」

と元気良く返して、手を繋ぎながら2人でその場を後にした。

この作品はいかがでしたか?

173

コメント

8

ユーザー

尊すぎるけど、花に触ってはいけないが気になりすぎる

ユーザー

謎は深まるばかりですね。 マイイチのコメントで吹いた

ユーザー

花と川は近づいてはいけない…うーん… 微笑ましいシーンからのそれは緩急が凄くて、オラわくわくすっぞ

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