不意に、奈美が恵菜の顔をじっと見やったかと思うと、少しずつアーモンドアイを三日月の形に細めていった。
「まぁ恵菜はアレだね。同世代の男性よりも、年上の男の人と一緒にいた方が幸せになれるかもねぇ……。これはチャンスかもっ」
奈美の唇が緩く弧を描き、ふふっと微笑む。
「え? 今、何か言った?」
恵菜は聞き取れなかったのか、奈美をジト目で見やった。
「ううん、何でもな〜い」
奈美が数回首を横に振り、企むようにニヤけている。
(奈美がこういう笑いを見せる時って、何かあるんだよねぇ……)
恵菜は、コーヒーカップを口に運びながら、親友の考えている事に引き気味になってしまう。
どんよりしそうな雰囲気を一掃するように、奈美が『そうだ!』と声を上げた。
スマートフォンを引っ張り出して、数分ほど操作をした後、恵菜に面差しを向ける奈美。
「恵菜、今は実家に住んでいるんでしょ? うちも西国分寺だから、帰り、恵菜の実家まで送るよ」
「奈美も西国分寺なんだ。車で来てるの? っていうか、車の免許持ってたっけ?」
「免許は持ってないよ。夫に立川まで迎えに来てもらうから、恵菜も一緒に乗っていこうよ」
「え? いいの?」
「もちろん。恵菜は結婚式に出られなかったから、私の夫に会った事ないでしょ? せっかくの機会だからね。夫にも恵菜を紹介したいし、恵菜にも夫を紹介したいなって思って」
突然の奈美の提案に、恵菜はビックリして目を見張る。
「さっき、夫には連絡しておいたから大丈夫」
ニッコリしながらコーヒーカップに口付ける奈美を見て、幸せオーラが溢れているようで、恵菜にとって親友が眩しい。
(ああ、だからさっき奈美は、スマホを触ってたんだね……)
談笑しながらデザートとコーヒーを味わっていると、数十分後、奈美のスマートフォンの画面が明るくなり始めた。
画面を確認すると、嬉しそうに微笑む彼女。
奈美の夫からメッセージが届いたのだろう。
「夫から着いたって連絡が来たから、そろそろ行こうか。モノレールの立川南駅の近くにいるみたい」
恵菜と奈美は、会計を済ませ、彼女の夫が待っているモノレールの駅へ向かった。
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