テラーノベル
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#ヒューマンドラマ
#虐げられヒロイン
今や、岩崎家の居間はふかし芋の取り合いになっている。
「……お母様!京太郎お兄様が独り占めしてる!」
「馬鹿言うな!これはな、お咲の分だ!」
「でも、京太郎坊っちゃん、私貰ってませんよ?」
「おちゃき!いも!」
「あぁ、京次郎坊っちゃん。お芋食べましょうね?」
あーんと口を開けて、京次郎は咲子に甘えた。
「しっかし、お前ら本当芋が好きだなぁ」
酔いが回った二代目が、横になりながら呟くが、どこか呂律が回っていない。
「二代目のおっちゃん、今度は多めに持ってきてくれよ。うちには、食べざかりがいるんだから」
京太郎が、お咲を見てニンマリ笑った。
「やだあ、失礼ね。お咲のどこが食べざかりなの?!」
京子が、芋を頬張りながら目くじらを立てる。
「京子?食べながらお話するのは、はしたないわよ?それよりも……京介さん……」
月子が、ちらりとお咲を見ながら岩崎へ言う。
「ああ、そうだ。中村。さっきの続きだ。それで、どうするつもりだ?」
「うーん……」
中村はお猪口を空けると頭をかいた。
「……お咲が、気に入らないのは承知してる。実際、相手は言った通りの人物のようだしなあ」
ところが、秋山男爵は、天下の歌姫花園咲子のためならばと、公演チケットをさばき、はたまた、舞台照明を整え、近頃では、流行りのブロマイドの発行にまで金を出す。
支配人としては、邪険にできない人物なのだと、中村は困り果てている。
「……じゃあ、中村のおっさん!お咲に我慢して嫁に行けって言うのか?!」
それも、劇場の目先の利益に飛びついてと京太郎が息巻いた。
「京太郎!中村も立場があるんだ。黙ってなさい!」
「いや、岩崎。京太郎の言う通りだ。俺が不甲斐ない支配人だから……」
「中村支配人!そんなことは!わ、私!」
咲子が、中村を庇う。
「わ、私が我慢したら……。もっと劇場へも支援してくれると秋山様はおっしゃってくれてる……」
そこまで言って、咲子は俯いた。瞳は潤んでいる。
「だめよ!お咲!それじゃ人身御供じゃないっ!我慢だなんて!」
「京子の言う通りだ!!なんでお咲が、犠牲にならなきゃいけないんだあ?!納得いかねえ!」
京太郎と京子の言い分に、咲子は、無言のまま芋を食べた。
はらはらと、涙を流しながら……。
「……中村。何か良い案はないのか?」
岩崎の問に中村も俯く。
そこへ「プッ」と異質な音がした。
「あらやだ!京次郎ちゃん。お芋食べ過ぎたのね?!」
月子が戸惑いながら言った。
「プップッでたあー」
京次郎は、朗らかに笑いながら、母へしがみつく。
「いや、京次郎、ちょいと空気読めよって言っても、お前さんにはまだ無理だよなあ……」
二代目が、呆れ返り皆の思いを代弁した。
「……いや……待て……」
呟きながら、京太郎が、やおら立ち上がる。
「これだっ!!お咲!屁だ!屁をこけ!!」
京太郎の一言に一同絶句した。
コメント
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うわあ、家族の団らんに咲子さんの重い空気が入り混じって、すごくいいバランスですね。京次郎くんの「プッ」からのオムライス状態で笑っちゃいましたけど、その直後の京太郎の「屁をこけ!」がもう、ぶっ飛んでて最高でした。冗談みたいな発想だけど、あの空気をぶち壊すには効果絶大ですよね。咲子さんが涙こらえて芋食べてる姿が切なくて…次が気になります!