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世羅 鈴🎨🎤
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雨鏡光
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#近未来
雨鏡光
9
「お兄様、馬鹿なこと言わないでよ!」
京子が呆れながら言った。
「あのなあ!お前わかってねぇんだよ。そのなんとか男爵の前でお咲が、屁をこいてみろ!一発で嫌われるだろ!」
ふふんと、京太郎は鼻高々に言い返す。
「そんな、子供じみたこと!お兄様こそわかってるの?!」
「……いや、京子ちゃん。意外とアリだと思うぞ……」
中村が京太郎の案に大きく頷く。
秋山男爵は、贔屓《ファン》として、咲子を見ている。そこで屁をこいたら、咲子へ抱いていた幻想は消えてしまい、近寄らなくなるかもしれないと中村は真顔で言った。
「あー、百年の恋も覚めるってやつか」
二代目も、妙に神妙な顔をして中村の意見に同意した。
「いや、だからってお咲に?!」
京子は、目を白黒させている。
「お咲!どうだ!いい案だろ!」
京太郎に詰め寄られ、お咲も言葉に詰まる。
「……いや、そ、それ、は……」
流石に無理な話だとお咲も躊躇するが……。
「つまり、相手に断らせればいいということだな?」
そんなことはしなくても、他に手立てがあるだろうと、岩崎が言う。
「そうね。お相手がお断りしてくれたら話は収まりますよね?」
月子もなるほどと納得している。
中村は、腕組みしつつ真剣に考え始めた。
「そうは言ってもなあ……」
依然言葉は重い。
「あら、簡単じゃない?お咲に好きな人がいることにすればいいのよ。恋人とか、許嫁とか」
そうすれば秋山も諦めるだろうと京子が発案する。
「それだ!京子!」
「でしょ?お兄様」
「案外、上手く行くかもしれねぇなぁ」
二代目が調子良く言うが、中村は渋い顔のままだ。
「そうかな。あの秋山男爵が、他に男がいるだけで諦めるか……。それに、お咲には、相手もいないし」
「やってみなきゃあ、わかんねぇだろ?中村のおっさん!」
「そうよ。やってみないとわからないわ!それに相手ならいるじゃない!」
ニンマリ笑って京子が指差す。
指さした先へ皆の視線が移動した。
「はあぁ?!お、俺?!」
指名された京太郎は慌てきった。
「あー、そりゃーいいや」
二代目が囃し立てる。
「うん、その手があった。京太郎なら、知らぬ仲でもないしなぁ」
中村もその気になっている。
「まあ!お兄様も、薄情ね。お咲が困っているのに」
「はあ?!俺のどこが薄情なんだ?!」
「じゃあ、お咲の恋人役、引き受けるのね?」
「ああ!京子!お咲の一大事だ。恋人でもなんでもやってやるぜ!」
京太郎は、まかせろと言って、ポンと胸を叩いた。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
咲子が慌てる。
「私、坊っちゃんと恋人なんて、無理です。それに、私のためにそんなことまで……」
皆に面倒をかけられないと、咲子は口ごもる。
「お咲ちゃん。誰も面倒だなんてお待ってないわよ?ねぇ、京太郎?」
月子が咲子を庇うように言った。
「そうさ!お咲は家族みたいなもんだ。ずっと一緒にいるんだから遠慮なんかするな。困った時はお互い様だろ?」
京太郎が得意げに言う。
「よし!そうと決まれば、京太郎!今からお前はお咲の恋人だっ!お咲もいいな!」
中村が、支配人よろしく真顔で迫る。
「いやあ、なんか面白くなってきたなぁ」
二代目がヘラヘラ笑った。
「笑い事か!」
中村が激を飛ばす。
「そうだぜ!二代目のおっちゃん!これはお咲の危機なんだぜ!」
中村と京太郎は、頷き合いながらお咲を見た。
「あ、あの……ですが……」
何がなんだかと、咲子は小さくなるが、場の者たちは、やる気満々。
「んじゃ、京太郎!お咲により添え!恋人らしく見えねえぞ!」
二代目が、酔っ払いながら軽口を叩き、
「そうだな、見た目が大切だ!もっとそれらしく振る舞ってみろ!」
中村も、調子に乗っている。
「……なるほど。確かに!」
京太郎は、咲子の側に行くと、肩を抱き寄せた。
「どうだ?これで恋人同士に見えるだろ?」
意気揚々の京太郎へ、
「恋人って言うより、なんか、姉弟がじゃれ合ってる感じ……」
京子が冷たく言う。
「あぁ?!そんなことねぇだろ?!」
京太郎は、皆に同意を求めるが……。確かに何か初々しさが足りない。
「……だなぁ。もうちょっと色気というか……」
「……そうだな。言われてみれば、姉弟だなぁ」
二代目と中村も、京子の言葉に同意した。
「どうしろって言うんだよっ!」
京太郎が、我慢ならんといきり立つ。
「……それよりも京太郎。いつまでお咲の肩を抱いている……」
岩崎がポツリと言った。
「えっ?!……抱く……」
岩崎の指摘に、京太郎は真っ赤になった。
咲子も、はっとして、身を揺らし京太郎から離れようとする。
「おっ!なんか、男と女に格上げしたか?!いい感じじゃねぇか」
二代目が、二人をからかった。
「そうか、やっぱり、男と女。その感じがないんだな……」
中村が唸る。
「……じゃあ、二人で練習したらいいんじゃない?」
京子が、のほほんと言った。
「それだ!恋人の振り練習だ!」
弾ける中村に、咲子は戸惑いを隠せない。
「中村支配人。練習って言っても……」
いつも、坊っちゃんと仕えているのだ。今更、練習もなにもと、咲子はいい含むが……。
「よし!お咲!それらしく見えるように練習するぞ!」
やるからには、成し遂げなければと、京太郎は妙にやる気になっていた。
コメント
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第5話、和やかな空気のまま一気に読めました!「屁をこけ」から始まる作戦会議に思わず笑いましたが、最終的に京太郎とお咲の恋人役でまとまるところ、みんなの距離感が伝わってきてほっこりしますね。肩を抱かれて赤くなった二人に「練習だ!」と乗り出す流れ、これからどうなるのか気になります。次が楽しみです!