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#呪われた主人公
627
#ハッピーエンド
ばたっちゅ
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#ファンタジー
凱
82
炎が燃えている。
崩れた建物。
砕けた石畳。
街は既に戦場と化していた。
パチパチと燃える音だけが耳に残る。
その中心。
カイルは肩で息をしていた。
「はぁ……はぁ……」
額から汗が落ちる。
握った剣にも細かな亀裂が入っている。
目の前。
十五メートルを超える巨体。
魔王。
その姿は依然として変わらない。
傷一つ無かった。
カイルが歯を食いしばる。
(馬鹿な……)
確かに当てた。
何度も。
何十回も。
だが。
届かない。
魔王の身体を覆う黒い靄。
それが全てを防いでいた。
斬撃。
魔法。
矢。
全て。
触れる寸前で消える。
攻撃というものがなかったかのように。
その時。
後方から声が飛ぶ。
「団長!!」
セラだった。
巨大な魔法陣が空を埋め尽くしている。
「次行くわよ!!」
轟音。
空が光る。
数百の炎弾。
流星群のような火炎魔法が降り注ぐ。
「フレア・メテオ!!」
街全体を揺らす爆発。
轟炎が魔王を飲み込む。
視界が真っ白になる。
熱風が吹き荒れる。
騎士達が目を細める。
その巨体は当然かのように無傷で姿を現す
黒い靄が身体を覆っている。
まるで炎など最初から存在しなかったかのように。
セラの顔が引きつった。
「……嘘でしょ」
ガルドが大剣を地面へ突き立てる。
「ふざけんなよ……」
全力だった。
今のは。
間違いなく全力。
それでも。
傷一つない。
ドランが盾を握り直す。
「防御ではないな」
リシアも頷く。
「ええ」
冷静な分析。
だが声は重い。
「あれは魔王にとって生理現象みたいなものでしょう。眠たいと感じたら、あくびがでる。
飲み物を飲むと、用をたす。」
「つまり、攻撃が来るってなったらあのわけのわからないモヤが勝手に発動するってか」
ガルドは顔を睨み舌打ちをした。
魔法障壁なら壊せる。
結界なら突破できる。
だが。
これは違う。
攻撃そのものが消されている。
カイルが魔王を睨む。
すると。
黒い靄がゆらりと揺れた。
初めて。
魔王が腕を動かす。
その瞬間。
リシアの瞳が見開かれた。
「全員伏せろ!!」
反射的に全員が動く。
次の瞬間。
ゴォォォォォッ!!
黒い衝撃波が街を横断した。
建物が消し飛ぶ。
石壁が砕ける。
地面が抉れる。
数十メートル先まで一直線に破壊されていた。
騎士達の顔から血の気が引く。
ただ腕を振っただけ。
それだけだった。
カイルはゆっくり立ち上がる。
背中から冷や汗が流れる。
(勝てるのか……?)
初めてだった。
王国最強と呼ばれてから。
初めて。
勝利のイメージが浮かばなかった。
そして。
黒い靄の奥。
魔王の赤い瞳が光る。
まるで。
こちらを観察するように。
あるいは。
何かを待っているように。
その異様な視線に、
カイルは言いようのない違和感を覚えた。
(……こいつ)
(本当に戦っているのか?)
魔王は動かない。
攻撃もしない。
ただ。
そこに立っているだけだった。
それなのに。
騎士団は追い詰められていた。
――一方、その頃。
デブル城。
巨大な玉座の間。
高い天井。
赤黒い絨毯。
静寂だけが支配する空間。
その最奥。
本来なら魔王が座るはずの玉座に。
アルドがだらしなく座っていた。
背もたれに身体を預ける。
巨大な玉座は人間用ではない。
背もたれなど、アルドの頭四つ分は上まで続いている。
「……疲れた」
ぽつりと漏れる。
隣ではセレスティアが優雅に足を組んでいた。
アルドは面倒そうに返す。
その右手。
空中に浮かぶ巨大な魔法陣。
その中心にはグラディウスの光景が映っていた。
燃える街。
戦う騎士団。
そして。
巨大な魔王。
今まさに騎士団が戦っている相手だ。
もっとも。
その魔王は本物ではない。
アルド自身が遠隔操作している存在だった。
「維持だけで魔力を食うんだよ……」
額を押さえる。
「動かすだけならまだいい」
黒い魔力が指先から漏れる。
セレスティアは肩をすくめた。
「だから反対したのよ」
「そんな大規模な実態魔法」
「そもそもこんなことする意味あるの?」
アルドは苦笑する。
確かにそうだった。
この魔法は元々。
女神に教わったいわば、隠し球
巨大な魔力生命を作り出し
遠隔操作する超高位術式。
「仕方ないだろ」
セレスティアを見る。
「いつか魔王の存在はバレる」
「だったらおおぴっらげに登場した方がより良いだろ?」
セレスティアはため息を吐いた。
「それに」
「魔王の招待が実はただの人間でしたってなったらそっちのほうがまずいだろ?」
「これぞ策略ってわけよ」
だが。
実際にはかなり危険だった。
遠隔魔王が破壊されれば。
術者にも反動が返る。
今のアルドは平然としているように見えて。
実際はかなりの魔力を消費している。
セレスティアもそれを理解していた。
「言いたいことは分かるけど〜」
「でも」
セレスティアは映像を見上げる。
「騎士団、思ったより強いわよ」
グラディウス。
そこではカイル達が未だに立っていた。
「そんなこと百も承知だ。」
するとアルドは手のひらを投影されている
映像の先に向ける。
「さぁ、最後の閉めに入ろうか」
コメント
1件
うわあ、やられた……! ずっと「魔王強すぎ」って思ってたのに、まさかあれがアルドの遠隔操作だったとは。カイルたちが必死に剣と魔法を叩き込んでも傷一つつかない感覚、読んでてすごくもどかしかったけど、「♡♡♡現象みたいなもの」ってリシアの分析、めちゃくちゃ納得してしまった。笑っちゃうけど戦慄する比喩。 それにしてもカイルが「勝てるのか?」って初めて思うシーン、ああいう英雄側の動揺良いですね。そしてアルド、疲れた顔で玉座にだらしなく座ってるギャップが憎い。最後の「閉めに入ろうか」って台詞、次どうなるんだろう……続きが気になりすぎます!