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**『市内の貸倉庫で火災 身元不明の遺体を発見』**
ニュースの画面から目が離せなかった。
「R……?」
思わず口に出る。
美咲はすぐに首を振った。
「まだ分からない」
「身元不明ってことは、確認できてない」
その言葉に少しだけ救われる。
でも胸のざわつきは消えない。
俺はもう一度、ノートパソコンを開いた。
「何してるの?」
「Rは命懸けでこれを残した」
「まだ何かある気がする」
管理者フォルダを閉じる。
デスクトップを見る。
何もない。
……いや。
一つだけ違和感があった。
画面右下。
ゴミ箱。
アイコンが空じゃない。
「美咲」
「ゴミ箱って……」
「普通は空にするよね」
美咲も気づいた。
「開いて」
クリックする。
中には削除されたファイルが一つだけ。
**trace.log**
「痕跡……?」
復元を押す。
ファイルが戻る。
開く。
画面には日時だけが並んでいた。
何百件も。
でも、一番下だけ赤い文字。
**2026年7月3日 21:14**
その横には住所。
俺は息を止めた。
「この住所……」
見覚えがある。
思い出せ。
どこだ。
数秒後。
頭の中でつながった。
「母さんの病院だ」
美咲もハッとする。
「組織は病院にも来てた……」
違う。
来ていたじゃない。
記録していた。
誰が。
いつ。
何を届けたのか。
全部。
「まだある」
スクロールする。
次の記録。
**2026年7月5日 18:42**
『神谷悠真 勤務先周辺』
その次。
『自宅』
『スーパー』
『コンビニ』
俺の日常が、細かく並んでいた。
買い物の時間まで。
全部。
「ずっと見られてた……」
思わずイスにもたれた。
その時。
カタッ。
小さな音。
俺と美咲は同時に振り向く。
公園の入口。
ベンチに、一人の老人が座っていた。
いつからいた?
帽子を深くかぶり、本を読んでいる。
さっきまで誰もいなかったはずだ。
美咲が小さくつぶやく。
「悠真」
「帰ろう」
「急いで」
俺はノートパソコンを閉じる。
立ち上がろうとした、その瞬間。
老人がページをめくりながら、ぽつりと言った。
「神谷悠真くん」
全身が固まる。
老人は本から目を離さない。
静かな声で続ける。
「Rから預かっている言葉がある」
俺と美咲は動けなかった。
老人はゆっくり本を閉じる。
表紙にはタイトルも作者名もない。
ただ黒い表紙。
老人は初めて顔を上げた。
「君たちは、まだ”入口”に立っただけだ」
その目には、不思議と敵意はなかった。
でも。
安心できる理由も、どこにもなかった。
(第三十四話へ続く)
#サスペンス
るしゅ
513
#闇堕ち
コメント
1件
第33話、めっちゃバチバチに展開きたね…!😭💦 「ゴミ箱のtrace.log」とか地味だけど怖すぎるし、病院から自分の行動記録まで全部監視されてたってのがもうゾッとした…!日常が常に見られてる感、嫌でもリアルに想像しちゃう。 最後のおじいちゃん登場も、「Rから預かってる言葉」って…もう続き気になってしんどい!!✨ るしゅさんの緊張感の出し方、ほんと秀逸すぎるよ…!次話も楽しみにしてるね!!🔥