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恵
47
西原衣都
684
瑠璃マリコ
1,039
#狂愛
柏木さくら
512
カップを両手で包んだまま、
景兎先輩の横顔をそっと見る。
久しぶりに会えたせいか、
胸の奥が少しだけ落ち着かない。
でも嫌な感じじゃない。
先輩がゆっくりと息を吸う。
その仕草だけで、
なんとなく“これから何か話すんだな”って分かる。
「……続き、聞いていただけますか。」
思っていたより静かな声だった。
でも、どこか緊張しているようにも見える。
カップを持つ手が、
ふっと止まる。
「えっと……はい。
先輩のお話、聞きたいです。」
自分でも少しだけ声が明るい気がした。
久しぶりにこうして向かい合っているのが、
なんだか嬉しかった。
先輩が少しだけ姿勢を変える。
距離は同じなのに、
近くなったように感じる。
「……あの時、
話せなかったことがあって。」
その言葉に、
胸が“どきっ”とする。
(あの時……?)
カップの取っ手を軽く持ち直す。
顔を上げる。
「えっと……
“あの時”って、いつのことですか?」
先輩の目がわずかに揺れる。
その揺れが、
なんだか可愛いと思ってしまう。
「……DMが途切れがちになっていた頃のことです。」
ああ、と胸の中で小さく声が出る。
あの頃のことか、とすぐに分かった。
「そうだったんですね。
はい、大丈夫です。聞きます。」
言ったあと、
胸の奥がほんの少しだけしぼむ。
(……あ、そっちの話なんだ。)
期待していたわけじゃない。
でも、久しぶりに会えたこのタイミングで
“あの時”と言われたら、
つい別のことを想像してしまっていた自分に気づく。
カップの縁を親指でそっと押さえ直す。
表情には出さない。
けれど、心の中で小さく息が抜けた。
そのわずかな変化に気づいたのか、
先輩が一瞬だけ目を瞬かせる。
「……あ、いえ。
そんなに重い話ではないんです。」
慌てたように言葉を足す声が、
少しだけ上ずっていた。
その様子がなんだか可笑しくて、
肩の力がふっと抜ける。
「大丈夫ですよ。
先輩が話したいことなら、ちゃんと聞きます。」
そう言うと、
先輩の表情がほんの少し柔らかくなる。
その変化が、
さっきよりも近く感じた。
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