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_ヒナは、目を覚ます。
辺りを見渡すと、真っ暗な空間で、大の字になって倒れていたようだ。
_どうしてここにいるのかは分からないが…現実での微かな記憶を頼りに、おそらく、あまりの絶望から気絶してしまったのではないか?と直感する。
(ここは?)
(…うん、真っ暗な場所、だよね。)
(………。)
(ど、どうしよう?)
しばらくヒナが困惑していると、上の方から_誰かの声が響いて聞こえてきた。
「困惑_してますよね?」
聞き覚えのある女の声が聞こえ、それが誰なのかを考える。
_数ヶ月前、話したような。
少し曖昧な記憶のタンスを片っ端から開け、しばらくぐるぐると考えた。
_そして、30秒ほどで思い出す。
「…めめ様、ですか?」
「えぇ、モルス財閥のめめと申します。 」
ヒナは、困惑を隠せていないであろう表情をしながら言った。
「…お久しぶりですね。」
(…なんで当たり前みたいにここにいるの…?)
そう思いながら、この空間の遥か上を見つめ、めめがどこにいるかを見ようとした。
めめは、横たわるヒナをはるか上から覗き込むかのように、真っ暗な空間の上の方から声が聞こえるもので、ヒナには仕草も、挙動も一切分からない状態であった。
「…とにかく、少し状況説明をしますね。」
内心ではため息をつきながら、めめの話を聞くことにした。
「まず、貴女は、館の廊下で倒れてます。」
「数時間にわたって泣き続けたせいで、力尽きたのでしょう。」
めめは、本当に淡々と状況を話した。
「…そうなんですね。」
ヒナはそう呟いた。
めめは続ける。
「…そして、目覚めたルカ様によって、菓子様は今安全な状態にあります。」
「…ルカ様から頼まれまして、私がヒナ様の元にいるという訳です。」
めめは小さく息を吐いた。
「…通りかかっただけなんですけどね…。」
めめはなぜか分からないと言った様子で、少し理解できないことを吐露しつつ、状況説明をしてくれたようだ。
「…ルカ兄様は…無事なんですか?」
ヒナは聞く。
真っ暗な空間にいるとはいえ、声はめめに届くことは変わらないようである。
「えぇ、無事ですよ。」
どこか優しい声色で、めめは答えてくれる。
「反逆者も全員鎮圧してますし、地獄は…終わったのではないかなと思います。」
「…そう、ですか。」
「それならよかった、です。」
「…さて、知りたいことはありますか?」
「…知りたいこと…ですか?」
「えぇ。」
「貴女は沢山のことを抱え込みすぎています。」
「………記憶は、きっと曖昧でしょう?」
ヒナは、眉を下げて、困ったように笑う。
「抱え込みすぎ、かぁ。」
ヒナは悲しそうな顔をする。
だがハッとしたように、笑った。
それはあまりにもぎこちなかったが、そんなことを考えて、治す余裕もなかった。
「…的を得ていますね、本当…。」
「ふふ、そうでしょうかね。」
めめはきっと微笑んでいるんだろうな、なんて考える。
「…ルカ兄様と、菓子ちゃんは…どこに?」
そう聞くヒナに、めめは答える。
「お二人ともルカ様のお部屋ですよ。」
「大丈夫、あの部屋は安全です。 」
「…ヒナ様の部屋がどうなっているかは…私には分かりかねますが。」
めめはそう答えてくれる。
ヒナは安心し、次の質問をした。
_正直言って、一番気になっていた事だ。
「…それなら、私はどうしてここにいるんですか?」
「それと…めめ様は、どこから話しかけているんですか?」
めめはヒナの言葉に、少し困惑した様子を見せた。
「どうして、って…」
「…えっと?忘れてたんですか…?」
ヒナはめめの様子に困惑する。
なにかまずいことを言ったか?…いや、言っていない。
…ならなんだ?
「…えっ、と…?」
ヒナは思わず聞いた。
「私は…言いましたよ、貴女は…”**館の廊下”**ににいる、と。」
めめの言葉に、ヒナは驚いた表情をした。
「なら、この真っ暗な空間は…なんですか…? 」
「どうしてめめ様の声が…響いて…」
ヒナは思い当たる節がないため、強く動揺した。
「…うぅん…何かしらが原因で…目が見えなくなっている、とかですかね…?」
めめはしばらく考えてそう言う。
「えっ!?」
_ヒナはがばりと起き上がった。
___
めめは起き上がるヒナの様子を見て、目を覗き込む。
_たしかに…言われてみれば、ヒナの目はどこも見ておらず、光を遮断するかのように、真っ暗であった。
「…やはり…そうなんですね。」
めめは呟いた。
ヒナは動揺を隠しきれず、不安げな声と仕草で、必死にめめを探した。
「ど、どこですか…?えっと、ここじゃな…じゃあどこ_」
めめはそんなヒナの手を優しく取った。
「落ち着いて、大丈夫ですよ。」
「貴女は沢山、頑張ったのでしょう?」
「…きっとすぐ治りますよ、だからどうか今だけは落ち着いて…」
「…すぐ落ち着くなんて…!」
「…大丈夫ですよ。」
「…大丈夫、大丈夫。」
めめは優しく語りかけた。
…なぜここまでするのか、ヒナにはよくわかっていなかった。
…だって、あの会食の日_めめを疑った。
あの手紙が来るまで、彼女の親切心すら、私は知らなかった。
本当に知らなかったにも関わらず、兄に止められるまで、ずっと_
_ずっと…
ヒナの視界に、光が差し込む。
それは一瞬白く、陽のように差し込んだ、だが次第に輪郭がはっきりとして、自分が元いた館のものへと変わっていく_
_と、思っていた。
目を凝らしていくと、そこは焼け爛れた今の舘ではなく_こうなってしまうより前の、あまりに眩しくて、綺麗な館であった。