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コメント
1件
あらためて「ロビンフッド」ことフリーン・ジーン、名前変えても呼び方変わらないの笑ったw でもあの好奇心だけで魔王城に来たってスタンス、めちゃくちゃ好きだわ。裏切りには容赦しないってアルドの圧も効いてるし、レインが一瞬で消えて戦闘描写ゼロなのも逆に潔くて良き。次回から3人体制でどう動くのか楽しみ🔥
ロープにぐるぐる巻きにされた男が、床に転がっていた。
「……うぇ」
ロビンフッドである。
もっとも、その顔は原形を留めていなかった。
頬は大きく腫れ、片目は半分閉じ、鼻の辺りも真っ赤になっている。
その隣では、セレスティアが手についた埃をパンパンと払い落としていた。
「……じゃ、じゃあ話を始めても大丈夫かな?」
アルドが苦笑しながら尋ねる。
「うぇ……えぇ……」
返事は返ってきたものの、ちゃんと喋れているかも怪しい。
アルドはセレスティアを見る。
「……やりすぎたな。」
「でも。」
セレスティアはロビンの顔を眺める。
「私は今の顔の方がタイプかも。」
「本当ですか! では今後も──」
「黙れ。」
一瞬でロビンが黙る。
アルドは思わず頭を抱えた。
「……もういいか!?」
その瞬間だった。
ゴゴゴゴゴ……。
城全体が小さく揺れる。
天井の砂がぱらぱらと落ちる。
遠くから鈍い地響きが聞こえてきた。
やがて揺れは静まり返る。
アルドは咳払いを一つした。
「……じゃあ始めるぞ。」
椅子へ深く腰掛ける。
「聞きたいことは一つだけだ。」
ロビンを真っ直ぐ見た。
「お前の目的は何だ?」
ロビンは少しだけ笑う。
「目的……ですか。」
一拍置いてから口を開く。
「その前に自己紹介を。」
アルドが眉をひそめる。
「ロビンフッドじゃなかったのか?」
男は苦笑した。
「あれは偽名なんです。」
ゆっくりと頭を下げる。
「改めまして。」
「フリーン・ジーンと申します。」
沈黙。
数秒後。
アルドは真顔で答えた。
「……ロビンフッドでいいか?」
「そっちの方が呼びやすい。」
「あ、分かりました。」
ロビンもあっさり頷いた。
「何故でしょうね。」
「ゼルヴァンにも同じことを言われたんですよ。」
アルドとセレスティアは顔を見合わせる。
(変な名前だからじゃない。)
二人とも同じことを思っていた。
アルドはため息をつく。
「じゃあ改めて聞く。」
「ロビンフッド。」
「お前の目的は何だ。」
ロビンは少し考えたあと、笑みを浮かべた。
「貴方の力になりたい。」
「……と言ったらどうします?」
アルドは無言だった。
ロビンは肩をすくめる。
「正直、この城を見つけたのは偶然です。」
「女神様に会えた。」
「魔王を名乗る人間にも会えた。」
「こんな面白い出来事、一生に一度あるかどうかです。」
アルドは頭を掻く。
「つまり。」
「好奇心だけでここまで来た、と。」
「ええ。」
「それに。」
ロビンは笑う。
「もし断られていたら、騎士団へ行って全部話してましたよ。」
「魔王の正体は人間でした、と。」
アルドは苦笑する。
「……肝が据わってるな。」
「まぁ。」
「〈殺してくれ〉なんて頼まれることも、二度と無いだろうけど。」
ロビンは静かに頷いた。
アルドは肘を膝へ置く。
「で?」
「俺の配下になるか?」
ロビンは迷いなく頭を下げた。
「貴方が望むのなら。」
「それが叶わないなら、女神様の下僕でも。」
床へ額が付くほど深く頭を下げる。
アルドは横を見る。
「セレスティア、お前は──」
誰もいなかった。
「……。」
「逃げたな、あいつ。」
苦笑するしかない。
「まぁいい。」
アルドは立ち上がる。
「ロビンフッド。」
「俺に力を貸せ。」
ロビンは静かに頷いた。
「仰せのままに。」
「我が主。」
アルドの表情が引き締まる。
「勘違いするな。」
「配下にする以上、裏切りは許さない。」
「もし裏切ったと分かった瞬間、お前は処分する。」
ロビンは真っ直ぐアルドを見る。
「もちろん。」
「承知しております。」
「なら最初の命令だ。」
アルドは城の外を見る。
「今の俺たちは人手が足りない。」
「お前の観察眼を試したい。」
「気になった人間を連れてこい。」
「数は多ければ多いほどいい。」
「ただし。」
アルドは振り返る。
「俺の正体は絶対に漏らすな。」
ロビンは笑みを浮かべた。
「もちろんです。」
「魔王の秘密は墓まで持っていきます。」
その瞬間。
ロープがふっとほどける。
ロビンは立ち上がり、軽く礼をした。
「では。」
「行ってまいります。」
黒い霧が揺れる。
次の瞬間には、その姿は完全に消えていた。
アルドは静かに息を吐く。
「……さて。」
視線を部屋の隅へ向ける。
そこにはもう一人。
縄で拘束された男が座っていた。
白銀騎士団二番隊隊長。
レイン・クロウ。
アルドは歩み寄る。
「さっきの話、聞こえていただろ。」
「俺としては、お前も歓迎なんだが。」
レインは鼻で笑う。
「魔王の手下か。」
「夢みたいな話だ。」
アルドは黙って聞いている。
「だが断る。」
レインの目には迷いがなかった。
「私は白銀騎士団だ。」
「身体を八つ裂きにされようが。」
「焼き尽くされようが。」
「貴様の部下にはならん。」
「あ、そう。」
アルドはあっさり答える。
そして指を鳴らす。
縄がほどけた。
レインは怪訝そうな顔をする。
「……逃がすのか?」
「無理に仲間にしても意味がない。」
アルドは背を向けた。
「ただし。」
「外へ出れば、お前を待つのは地獄だ。」
レインは静かに立ち上がる。
「そんなもの。」
「生まれてから何度も見てきた。」
袖口から小さな短剣が滑り落ちる。
気配を殺す。
一歩。
二歩。
三歩。
距離を詰める。
そして一瞬で背後へ回り込む。
「これが俺の答えだ。」
刃が閃く。
だが。
それより早く。
アルドの杖が軽く振られた。
「じゃあな。」
世界が歪む。
レインの姿が光に包まれた。
「なっ……!」
次の瞬間。
レインの姿は完全に消えていた。
静まり返る玉座の間。
アルドは一人、小さく息を吐く。
「……ここからだ。」
窓の外に広がる世界を見つめる。
「ここから、俺たちの最初の一歩が始まる。」