テラーノベル
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待ち合わせの駐車場に戻っても、まだ拓人は戻ってきてなかった。
車の中を覗き込んでみても、誰もいない。
優子は、車の側に立ったまま、スマートフォンを見て時間を潰す。
「悪い。かなり遅くなっちゃって……」
指定時間の約三十分後、男が、少し険しい表情を浮かべながら、小走りで彼女に近付いてきた。
拓人の手には大きなボストンバッグを下げ、車のトランクを開けると、ぞんざいにしまい込む。
「それにしても、ずいぶん大きな荷物じゃない?」
「まだまだ逃避行は続くからな。ちょっと金を積んできた」
軽いノリで答える男に、半ば呆れている優子。
恐らく、ボストンバッグの中には、大金が入っているのだろう。
「っていうかさ、アンタって、結構サラリとすごい事を言うよね?」
「そうか? そんな事ないと思うけどな。さて…………この後、どこに行くかなぁ」
男が遠くに視線を辿らせながら思案すると、前髪を鬱陶しそうに掻き上げる。
「…………どっかに行くにしても中途半端だし、今日は……俺の部屋に行くか」
「は? アンタの部屋って……」
「ここから歩いて五分くらいの場所。いいだろ?」
唐突な拓人の発言に、優子は目を見張った。
まさか連れの男の部屋に行くなんて、考えもしなかった事で、彼女の心臓が急にドクドクと打ち鳴らされる。
(恐らく、この男は過去にも、女を自分の部屋にシレッと持ち帰りしてたんだろうな……)
優子は怪訝な顔を映し出し、拓人の横顔を見やる。
「まぁ……いいけどさ……」
「じゃあ行くぞ。ってか、何をそんなに怖い顔してんの? 車に乗れよ」
優子は男の車に乗ると、拓人が緩やかに発進させていった。
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