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拓人の自宅マンションは、ラブホテル街から少し離れた場所にあった。
コンクリートが打ちっぱなしにされた無機質な外観は七階建のマンション。
住宅街の中にある中高層の建物は、どことなく浮いているようにも見えた。
(っていうか、自分の店といい、自宅マンションといい、この男は、コンクリート剥き出しの建物が好きなの?)
優子は、漫然としながら、マンションを見上げていた。
住人専用の駐車場に車を止め、荷物を取り出すと、拓人は、キョロキョロと周囲を見回している。
「…………ひとまず大丈夫そうだな」
男の独り言で、優子は、拓人が闇バイトをしてた頃の連中に、追われている現実を、改めて突き付けられてしまう。
(そんな状態で、家に帰ってきちゃって……大丈夫なの?)
彼女は懸念するけど、当の本人は飄々としながら、エントランスに入っていく。
「アンタの部屋、何階なの?」
「七階。夜景が一望できる部屋だぜ?」
「へぇ〜……。アンタの部屋にお持ち帰りされた女たちも、その夜景に見惚れてたって事か」
優子は拓人にツッコミを入れると、男は真面目な表情でかぶりを振る。
「俺、自分の部屋に女を連れ込んだ事はないよ。プライベートの空間に女を入れるのは、あんたが初めてだな」
エレベーターに乗り込み、最上階を目指していると、やがて鉄の箱は電子音をポンっと鳴らして、到着を知らせた。
「どうぞ」
「…………お邪魔します」
玄関に入り、二人は廊下を歩いていくと、男がリビングへ通じるドアを開けた。
目の前に広がる夜景、インテリアは必要最低限の物しかなく、大型の液晶テレビとソファー、ローテーブルしかない。
左側にはキッチン、右側にあるドアは、寝室になっているのだろう。
「うち、マジで何もないから、宅配ピザでも頼むか」
拓人がスマートフォンを取り出し、電源を入れようとした。
「っていうか、アンタのスマホ、電源入れても平気なの?」
「数分くらいだったら大丈夫じゃん?」
電源を入れた男の指先が、画面上を流麗に滑っていき、注文を終えると、あ、そうだ、と独りごちた。
「スマホ買ったんだろ? あんたの連絡先、教えてもらってもいいか? まぁ一緒にいるから、聞かなくてもいいんだけどさ」