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足元に広がるビル群は、夜になったどれほど綺麗な夜景を見せてくれるのだろう。

日中の今は空が解放感を与えてくれて、特に天気の良い今日は青空がとても気持ちいい。

「すごい! なんだか空を飛んでいるみたいですね」

つい子供っぽくはしゃいでしまうと、聡一朗さんは表情をやわらげた。

「高いところが苦手じゃなくてよかったよ。さぁ、他の部屋も案内しよう」

いずれも広くて綺麗なダイニング、キッチン、ランドリーと案内してくれた後、最後に見せてくれたのが他の客室よりひときわ広い部屋だった。

「ここが君の部屋だよ」

リビングと同様に、眺めがすごくよいところだった。

床までガラス張りになっている窓からはバルコニーが続いていて、そこにあらかじめ植えられている観葉植物が、眺望に優しい緑を添えている。

「越してきてから使っていなかった部屋だから綺麗だろう? ベッドや机など必要最低限の家具は事前に用意させてもらったよ。あとは好きなように使ってくれてかまわない」

「はい、なにからなにまでご用意していただいて、本当にありがとうございます」

「引っ越し業者はこれから来るんだろう? 荷解きを手伝うよ」

「あ、いえ大丈夫です。私の荷物はこれだけなんで」

と、持ってきたキャリーケースを指さすと、聡一朗さんは目を丸くした。

「これしかないのか?」

「家電は聡一朗さんがずっと良い物をお持ちなので処分してしまいました。あとは身の回りのものなんですけれど、私そんなのに多く持っていなかったので、このケースひとつですんでしまいました」

「驚いたな。女性はもっと荷物が多いものだと思っていたから。ファッション関連とか大量にあるものだろう?」

「あ、あの私、それほどそういうことに興味が無くて……仕事ではユニフォームが支給されるし、両親が残してくれたお金も堅実に使いたいと思っていたので……」

……なんだか恥ずかしくなってきた。

いちおう、年頃の娘というやつなんだから、もう少し気を遣っていた方が良かったかもしれない。

大学教授の妻となれば身だしなみやファッションにもしっかりしていた方がいいだろうし……。

聡一朗さん、ダサくてつまらない女って私にがっかりしたかな……。

と、気まずく思っていると、聡一朗さんは穏やかに表情をやわらげた。

「そういうところが君の魅力だと思うよ。やはり君を選んでよかった」

私がほっとしていると、聡一朗さんは「だが」と続けた。

「俺の妻となってもらって以上、金銭的な配慮は一切かけさせるつもりはないからね。お金は君の好きなように使ってもらって構わない」

聡一朗さんはカードを差し出した。

クレジットカードだ。

「え、そんな」

「生活が変わってなにかと物入りになってくるだろう? これを使って必要な物をそろえてくれ」

一緒に買い物に付き合う時間は取れないので、共同生活に必要な物もそろえて欲しい、と言われたので、私は素直に受け取ることにした。

「ありがとうございます」

タクシー代の時と同様、また深々と頭を下げてしまった私を残して、聡一朗さんは出て行ってしまった。

そうして一人だけになるとなんだかどっと疲れが押し寄せて来て、私はベッドに腰かけた。

心地よい弾力にほっとする。

私が小学生の頃から使っていたのとは大違いだ。

ベッド、買っていただけて良かったな……。

聡一朗さんと同じベッドで寝るなんてことになったらどうしよう、と余計な心配をしていて実は昨晩までよく眠れなかった。

寝起きの聡一朗さんってどんな感じなんだろうとか、寝惚けたりするのかな、なんて考えてはドキドキしていた。馬鹿みたいだ。

共同生活か……。

ベッドはともかく、生活空間のほとんどを聡一朗さんと共にすごす。夫婦として。

でもこんな広い部屋を与えてもらったら、一日中顔を合わさずに過ごすこともできるような気がした。

聡一朗さんも忙しいから、外出することがほとんどだろうし。

そんな状態なら、本当に契約関係っていう冷めた関係を継続していけそうな気がする。

私、これからどうなるんだろう……。

ただただ広くて真っ白なだけの部屋を見て、急にひとりぼっちで心許ないような気持が押し寄せてきた。

窓に広がる青空を見ても、脚が竦むような気がした。

「まずはカーテンを買わせていただこうかな」

そんな独り言も、広い部屋ではよく響くのだった。




「よし、こんなんでいいかな……」

洗面台でヘアスタイルを最終チェック。

広い脱衣場には全身が映る大きな鏡も備え付けられていて便利だ。

くるりと一回転して、身だしなみも再チェック。

とはいっても、着ているのはいつもの安物のスカートとカットソー。

けど、今日から夢の女子大生生活を送るとなれば、できる限りのお洒落はしていかなくては。

ましてやあの華やかな女学生が目立つ大正学院大学に通うのなら、なおさらだ。

君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜

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