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____都内某所。


古びた雑居ビルやラブホテルが立ち並ぶ街の片隅に一台の車が入ってきた。

ピカピカに磨き上げられた黒の高級ミニバンは、角のコインパーキングに駐車する。

そして車からは二人の男が出て来た。


後部座席から出て来たのは、身長180センチ以上あるかなりのイケメンだ。

男はダークグレーのスーツに糊のきいた白のワイシャツ姿で洒落た薄茶色のサングラスを掛けている。そして口周りと顎にはうっすらと髭を生やしている。

緩いパーマがかかったミディアムスタイルの髪は軽く後ろへ撫でつけ、目に掛かった一筋の前髪がなんとも言えずセクシーだ。

一見するとモデルや俳優のようだが、鍛え上げられた肉体とサングラスの奥に潜む鋭い眼光からはこの男が特殊な世界で生きている事を物語っていた。


男の名は東条一樹(とうじょうかずき)・40歳。


一樹はこの辺り一帯を取り仕切る指定暴力団・藤堂組の二次団体・円城寺一家のナンバー2だ。


そして運転席から降りて来たもう一人の男は西靖人(にしやすと)・32歳。通称ヤス。

ヤスも円城寺一家の組員で、運転手としていつも一樹と行動を共にしていた。

茶髪にピアス、細身のジーンズに黒シャツ姿のヤスは爽やかなイケメンなので、とても裏社会の人間には見えない。


車を降りた二人は辺りを注意深く見回してから並んで歩き始めた。

二人はこれから藤堂組が経営するアダルトビデオ制作会社の撮影現場へ視察に行くところだった。


歩きながらヤスが言った。


「それにしても一樹さんが現場に行くなんて珍しいですね」

「久しぶりに新人女優が入ったんだろう? だったらどんな女かチェックしておかないと問題のある女だったらマズいからなぁ」

「確かに……まあでも新人って言っても今日は2本目の撮影らしいですけどね」

「2本目? プロダクションに入ったのはついこの間だったんじゃないのか?」

「そうです。でも1本目が大ヒットしたんですぐに2本目を撮る事になったみたいです」


一樹は驚いていた。

プロダクションに入ったばかりなのに立て続けに出演する女優は珍しい。どんなに早くても二ヶ月は間が空くはずだ。

藤堂組が運営するAV女優プロダクション『ウィステリアエージェンシー』には人気AV女優が多数在籍している。

だからそう易々と主演の順番が回って来るはずがない。入ったばかりの新人なら尚更だ。


「なんで立て続けなんだ?」

「俺はまだその動画を観ていないんですが、話しに聞くと声が凄くいいみたいです。それと時折見せる怯えたような表情が成熟しきっていない感がしてこれまでの女優達とは全然違うとか…」

「へぇ……」


そんな事で人気が出るものなのかと一樹は思う。

その時一軒のラブホテルの前に到着した。このホテルは藤堂組が経営しているラブホテルの一つだ。

二人はためらう事なく中へ入って行った。


まっすぐフロントへ行くと、すりガラスで中が見えないようになっている受付がある。ヤスはそこの小さな小窓に顔を近付けて声をかける。


「お疲れ様です。円城寺ですが撮影現場のチェックに来ました」


すると中でガタンと椅子の音がしたかと思うと、脇のドアから慌てて女性従業員が出て来た。

女性は60代の白髪交じりの女性だ。

女性の名は浮田(うきた)。浮田は以前交際相手に騙されて全財産を奪われた為、交際相手を包丁で刺した事がある女だった。その後浮田は有罪となり先月まで刑務所で服役していた。そして出所後はこのホテルで働いている。

浮田は若い頃藤堂組が経営するクラブのホステスをしていたので、その縁もあり一樹がこの仕事を紹介してやった。


「東条さん、お疲れ様です」

「浮田さん、どう? もう慣れた?」

「はい、お陰様で。その節は大変お世話になりました」


浮田は東条に向かって深々とお辞儀をする。


「それは良かった。で、今日の撮影は何階?」

「5階です。今日5階はフロアごと貸切になっていますので」

「ありがとう。じゃあ見て来るよ」

「いってらっしゃいませ」


再び頭を下げた浮田に見送られ、一樹とヤスはエレベーターへ向かう。

ちょうどそこへエレベーターが到着した。


エレベーターのドアが1階で開くと、大学生くらいのカップルが濃厚なキスをしていた。

そこでヤスが「コホン」と咳ばらいをすると、二人は驚いてパッと離れる。

カップルはエレベーターを降りる際、前に立っている体格の良い男性二人組を見て一瞬ギョッとした顔をする。そして慌てて逃げるようにその場から去って行った。


カップルの反応を見たヤスがククッと笑う。


「俺らの事、絶対モーホーだと思ってましたよね?」

「チッ、そんな趣味ねーよっ」


そこでヤスが笑う。


そして二人の乗ったエレベーターは撮影現場の部屋がある5階へ向かった。

【ショートドラマ原作】心恋 ~uragoi~

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