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「アウローラ、いる?」
「あああっ!?はい、いますけどおお!?って、ステラ様ですか。どうしたんですか」
「え、いや。今の何?」
アウローラがいるという部屋にむかってみれば、意味の分からない奇声が聞えてきて、一瞬あけるのを戸惑った。でも、来てしまったんだから、話を聞くことにしようと、私はドアの前で待つ。すると、暫くして、アウローラが出てきた。
出てきたアウローラは、とくに変わった様子もなく疲れている様子でもなかったので、安心した。しっかり休めたなら、話をしても丈夫だろうと、私はフッと笑いアウローラを見る。彼女は何故かぞわぞわっと身体を震わせていた。
「何ですかその笑顔。もしかして、解雇ですか?」
「え、なんでそうなるの。解雇って、なんで?」
「い、いえ……ええっと、部屋、ここで大丈夫です?話がしたくてきたんですよね。散らかってるので」
「散らかってても大丈夫だから」
と、私が部屋に押し入ろうとすれば、アウローラは私の行く手を阻んだ。
「ダメなの?」
「だめーではないですけど、ほんっとうに汚くて」
「気にしないから」
「す、ステラ様の部屋の方が!防音もあっていいと思います。私の部屋ではちょっと外部に漏れたらやばい話だった場合、集取がつかなくなるので、ええ!」
そういって、アウローラは部屋を締めて、私の部屋へとむかって歩いて行く。よっぽど見られたくないんだろうなあ、なんて思いながら彼女の後をついて行く。私の部屋につけば、アウローラは、ぴしゃりと鍵を閉めて、私に頭を大きく下げた。
「本当にすみませんでした!」
「だから、解雇じゃなくて」
「それでも、ステラ様を傷付けてしまったのは、本当です。疑ってしまい、すみませんでした」
「アウローラ聞いて」
「解雇じゃなくても、罰が!」
「それもないから」
もの凄く、動揺しているのは分かったし、自分のやったことに対して、それなりに反省しているんだろうなと言うのも分かった。でも、話を聞いて欲しい。
(いや、でも私も元々こんな感じだったんだろうなって考えたら……)
昔はアウローラみたいな感じだったと思う。もしかしたら、陰キャも、陽キャもそこまで変わらないのかも知れない。そんなことを思いながら、私は、椅子に腰を掛けて、アウローラの名前を呼んだ。彼女はビクンと大きく肩を上下させながら、こっちに向かってきた。
「な、何でしょうか。ステラ様」
「本当に怒ってないし、なんなら、お父様も怒ってなかったから、何も処罰は受けなくていいと思う」
「ほ、本当ですか。というか、フランツ様が」
と、アウローラは俯く。もしかしたら、今の言葉で、自分の行いが、フィーバス卿にバレていたと分かったのかも知れない。思った以上に、察しがよくて、助かるなあと、私は彼女の方を見た。彼女の目元は少し張れており、泣いていたのかな? と思うくらい、ぐちゃぐちゃになっていた。肉塊のこともあったし、怖い思いはしているんだと思う。彼女にだって、恐怖心ぐらいあるだろうし。
私は、彼女が落ち着くまで待ってから、もう一度名前を呼んだ。
「私が、アンタに聞きたいのは、それじゃなくて、アンタの魔法について何だけど」
「私の魔法、何故ですか?」
「凄い、魔法だと思って。これまで、色んな魔法を見てきたけど、五元素の魔法の派生形って、作るのが大変だって聞いたから」
彼女が使っていた、爆弾の魔法に興味が出来てた。魔法に長けている、フィーバス卿の元にいる以上、そしてフィーバス辺境伯令嬢としての威厳というか、顔を作るためには、色んな魔法に触れておくのが一番だと思った。フィーバス卿に聞けば教えて貰えるかも知れないが、頼ってばかりではいられないし、気まずい。かといって、アウローラの魔法をパクりたいわけじゃなかった。ただ知りたい、そんな好奇心から彼女に声をかけた。
最も、アウローラは違うことに対してびくびくしているので、今はあまり刺激しない方がいいのかも知れないけれど。
「教えてくれる?」
「私の魔法なんか、ステラ様に及びませんよ」
「でも、肉塊を倒したのは、紛れもなく、アウローラだったじゃん」
「で、ですが、でもでもでもでもでも!それは、ステラ様が、隙を作って下さったからですよ。じゃなかったら、あの氷の柱に貫かれていたと思いますし……」
そんな感じで、自分に自信がすっかり無くなっているようで、話が進まなかった。肉塊を倒すことは、そう簡単なことじゃない。それに、協力しなければ、不可能だしそんな風に思わなくてもいいのに、と彼女にいいたかったが、きっと聞き入れて貰えないだろうなと思った。
「はあ……」
「ひいい!なな、ため息。私、何かやらかしましたか!?」
「お、、落ち着いて。今のはただ疲れただけで」
「私と話すのが疲れたんですよねえええ!?」
「う、煩い」
「今すぐ、ここから出ていきますからあああああ!」
そんな具合に、キャーキャーわめくので、収集がつなくなった。初めて顔を合わせたときとは別人のようで、私はどんな風に彼女の気をおさめればいいか分からなくなっていた。そんな風に喋っても、彼女の気に触れそうだったから。
「落ち着いて。本当に落ち着いて。私は、本当にただ、アンタの魔法について知りたいだけ」
「私の魔法……ステラ様だったら、すぐ使えるようになりますよ。こんな魔法」
「さっきまでの自信って何処に置いてきたの?」
「……私は、誰かにつかえたことがなかったんです。フランツ様に直接使えていたというわけでもなく、フランツ様のお世話係だったわけでもないです。ですが、気に掛けて貰っていたと思い込んでいました。周りから、自分がどんな風に思われているか知ってました」
アウローラは、ポツリポツリとそう話した。自分がどんな風に思われていたのか知っても、あの態度だったというのか。プライドからか、それとも、そうしなければ、自分のことを保てなかったのか。同情してあげたいけれど、彼女が欲しいのはそうじゃないだろう。
魔法が使えるだけでも凄いのに、さらに上を目ざすからこうなってしまう。人間って仕方ない存在だと私は思った。私自身も、魔法が使えるだけで、頼りにされることもあるし……(いや、頼りにはされていないのかも知れないけれど)。
「自分を見てくれるのは、フランツ様だけだと思っていました。だから、ステラ様が、フランツ様に気に入られて、ずるいって思って」
「嫉妬ってこと?」
「そうですね。でも、別に前もいいましたけど、フランツ様に養子にとって欲しいわけでもなかったんです。ただ、居場所が欲しかった。私が認めて貰える場所が、欲しかったんです」
「そう……」
「ステラ様には分からないですよね」
「……」
やっぱりだ、と私は彼女のじっと見た。でも、自分の世界に籠もっているだけで、視野が狭くなって、周りが見えていないと思う。私も同じだとは言わないし、居場所が欲しい、認めて欲しいっていう思いはあった。でも、方法が違う。
「怒ってない」
「え?」
「怒ってないから。もう、そこは気にしなくていい。魔法が知りたいのも、アンタが、私の侍女だから。侍女のこと知りたいって何かおかしいことなの?」
「お、おかしくないですけどおかしいです。私なんか知ってどうするんですか」
「だから、侍女だから。一緒に戦ってみて、アウローラは強いって思ったの。単純だって思われるかも知れないし、アンタの辛いのちょっと知っちゃったから、ほっとけないの!私だって、居場所がなくて、ここに来たようなものだし」
私はそういって、アウローラに手を差し伸べた。おずおずと私の方をアウローラは見上げる。もしかしたら、こっちがすなのかもしれない。
アウローラは私の手を取るとスッと私の方に目を合わせる。私は、頑張って笑顔を作って彼女に向けてあげた。安心できるように。怖がらせないように。
「アンタのこと教えて。いっぱい。アンタが言える範囲で」