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#ざまあ
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裁判所の法廷
傍聴席には、あれほど直樹を甘やかしていた義父母の姿もない。
証言台に立つ私を、被告人席の直樹が憎々しげに、それでいて縋り付くような目で見つめている。
「……被告人は、原告の特有財産を横領し、それを不倫相手への貢ぎ物や、自身の遊興費に充てていた。この事実に相違ありませんか?」
検察官の問いに、私は前を向いたまま答える。
「はい。相違ありません」
「何か、被告人に言いたいことはありますか?」
裁判長に促され、私はゆっくりと直樹の方へ顔を向けた。
直樹は期待したような顔をした。
罵倒されるか、あるいは少しでも情けをかけてもらえると思ったのかもしれない。
けれど、私の口から出たのは、直樹が最も恐れていた言葉だった。
「……直樹さん。あなたに教えられた通り、私は家計簿をつけるのをやめません」
直樹の目が、驚きに丸くなる。
「ただし、これから私がつけるのは、あなたへの『損害賠償』と『慰謝料』、そして『養育費』の回収記録です」
「一円の誤差も、一日の中断も許しません。あなたが私に強いたあの執拗な管理を、これからは私が、あなたの人生に対して行います」
「し、詩織……お前……っ!」
「刑期を終えて出てきても、あなたの給与、資産、動向。すべてを法律という檻で監視し続けます。……あなたが私を閉じ込めたあの檻は、今、あなた自身のものになったのよ」
直樹はガタガタと震え出し、最後には法廷に響き渡る声で泣き崩れた。
刑務官に引きずられて退廷していく彼の背中は、あまりに小さく、惨めだった。
裁判所の外。
眩しいほどの青空が広がっていた。
「ママ、お疲れ様」
待っていた陽太が、私の手を握る。
その手の温かさが、私の勝利の証だった。
「陽太、これから美味しいもの食べに行こう。……ママが稼いだ、ママの自由なお金でね」
そのとき
「……素晴らしい反撃でしたね、詩織さん」
名前を呼ばれ、私は足を止めた。
振り返ると、銀縁の眼鏡をかけた知的な雰囲気の女性が立っていた。
彼女の名刺には、国内最大手のデジタルコンテンツ企業の役員名が記されている。
「あなたのWEBデザイン、そして今回の『逆転劇』。その徹底した管理能力と不屈の精神に興味があります。
……私たちの新しいプラットフォームで、クリエイターを支援するリーダーを務めていただけませんか?」
私は一瞬驚き、それから深く頷いた。
これまでの「耐えるための家計簿」はもう終わり。
これからは、「攻めるための戦略」を立てるステージが始まる。
私は、手元に残っていた最後の「直樹との婚姻費用領収書」を細かく破り、ゴミ箱へ捨てた。