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「どうやら同じ物を狙ってるみたいだね
でも手に入れるのはあたしやで 」
親鳥は体をふくらませ
甲高い金切り声をあげ
巣の周りを飛び回っていました
明らかに危険を察知して
威嚇しています
大きな石を握り締める手に力が入りました
おばちゃんは狐に向かい
魂心の力をこめてそれを投げました
森中に親鳥の甲高い鳴き声が響きました
数分後
左腕のかすり傷から流れる血をハンカチで押え
おばちゃんは意気揚々と歩いていました
おばちゃんの持つ籠の中には
8匹の雛がいました
腕の傷は狐ではなくシャモの親鳥に
やられたものでしたが
そんなことは全然お構いなしに
おばちゃんはとても満ち足りた気持ちでいっぱいでした
それからおばちゃんは
その後も森の中に入り
他にもシャモの巣を発見し雛を捕獲して回りました
そして厳しい冬の寒さも和らいで
春を迎える頃
成長してまるまる太ったおばちゃんのシャモは
合わせて25匹にもなり
狙い通り一匹4000円で
全部売れました
おばちゃんはシャモを売って儲けた
お金を誇らしげに自作の帳簿に付け加えました
ある日おばちゃんの裏の
とうもろこし畑の持ち主の
おやじさんがおばちゃんと
世間話しをしていた時です
おやじさんがぼやいて言いました
「来年もとうもろこしを植えたいのだが
種を買う金がないんだ 」
「いくらいるの? 」
結局おばちゃんはそのおじさんに
年5%の利子で10万円貸し付けることにしました
そのお金はおばちゃんの全財産でしたが
おじさんなら必ず約束を守ってくれると
おばちゃんはわかっていました
そして翌年収穫の秋、約束通り
とうもろこしが沢山売れたおじさんは
無事に10万円に利子の5万円を加えて
返済してくれました
その頃おばちゃんは
近所の製麺所で茹でたうどんを洗う
アルバイトをしていましたが
それは一時間450円で
一日7時間働いても3000円ほどにしか
なりませんでした
製麺所の休憩時間
おばちゃんはうどんを洗いすぎて
あかぎれになった手をじっと見つめて
おじさんから返済してもらった
利子のことを考えました
頭の良いおばちゃんは17歳で
必死で自分の体を使って働くより
お金を動かすほうが簡単に儲けられるんだと
すぐに気が付きました