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爆炎がゆっくりと晴れていく。
瓦礫の山。
黒煙。
焦げた地面。
その中心で。
「いてて……」
セラ・ルミナが頭をぽんぽん叩いていた。
髪についた埃を払い落とす。
服の裾も焦げている。
だが本人はケロッとしていた。
「また調整間違えちゃった♪」
てへっ、と笑う。
その直後。
ガルドの怒号が飛んだ。
「セラァァァ!!」
大剣を肩に担ぎながら歩いてくる。
「全くお前はいつも勉強しねぇなぁ!!」
指を突き付ける。
「広範囲魔法使うのはいい!!」
「だが予め規模ってもんをだなぁ!!」
セラは全く悪びれない。
「まぁ何とかなったじゃんかー」
「なってねぇ!!」
「なったって」
「なってねぇ!!」
言い争いが始まりそうになる。
だが。
「静かに」
リシアの声。
一瞬で空気が締まる。
「全員、もう一度陣形を取れ」
即座に騎士達が動く。
ガルド。
ドラン。
セラ。
それぞれ配置へ。
リシアは既に剣を構えていた。
砂埃の向こう。
煙の中。
その奥を睨んでいる。
静寂。
そして。
うぅぅぅぅぅ……
地面が軋む。
何かが動く。
煙の中から。
ゆっくりと。
ゼルヴァンが立ち上がった。
その姿は酷い。
全身傷だらけ。
火傷。
裂傷。
骨が見えている箇所すらある。
紫色の発光も弱まっていた。
「ぐはっ……!」
血を吐く。
足元がふらつく。
それでも倒れない。
「て……てめぇら……」
肩で息をする。
「よくも……やってくれたな……」
はぁ……
はぁ……
はぁ……
死にかけ。
誰の目にも明らかだった。
リシアが一歩前へ出る。
剣先を向ける。
「諦めろ」
静かな声。
「もう体力も限界のはずだ」
ゼルヴァンは睨み返す。
リシアは続けた。
「私達は、わざわざお前達を殺したい訳じゃない」
「これまでの罪を償えばいい」
「まだ――」
だが。
「だぁぁぁまぁぁぁれぇぇぇぇッ!!!!」
ゼルヴァンが咆哮する。
怒り。
憎悪。
全てを吐き出すように。
「お前ら城下住みの連中には分からねぇんだよ!!」
血を吐きながら叫ぶ。
「栄えてる街!!」
「金もある!!」
「未来もある!!」
「食う物にも困らねぇ!!」
呼吸が荒い。
それでも叫ぶ。
「対してどうだ!!」
「落ちぶれた街は!!」
「貧乏で!!」
「食料も手に入らねぇ!!」
「明日生きられる保証もねぇ!!」
拳を握る。
「なら結論は一つだろ!!」
顔を上げる。
「奪うしかねぇ!!」
怒号が響く。
「友人のため!!」
「家族のため!!」
「こっちは必死に抗って生きてんだ!!」
沈黙。
リシアは静かに問う。
「……その友人や家族は」
一拍。
「本当にそれを望んでいたのか?」
ゼルヴァンが止まる。
言葉が途切れる。
数秒。
沈黙。
そして。
「……あぁ」
口元が歪む。
「そういや」
笑う。
狂ったように。
「そんなもん」
目が見開く。
「全部、俺が食っちまったんだった」
満面の笑み。
誰も言葉を返せない。
完全な狂気。
ゼルヴァンは両腕を広げた。
「だからよォ!!」
紫黒の魔力を吐き出す。
「俺に食われちまいなよ!!」
リシアを見る。
「お前のこと気に入ったぜ!!」
笑う。
「一生――」
地面を砕く。
「俺の子を孕め続けろォォォォ!!!!」
突撃。
だが。
速いのは。
リシアだった。
消える。
いや。
踏み込んでいた。
「悪いが」
レイピアが閃く。
「私はな」
一突き。
二突き。
十。
五十。
百。
光の線が走る。
ゼルヴァンの身体が裂ける。
「そんな強欲で」
百五十。
二百。
止まらない。
「後先も考えない」
三百。
四百。
光が嵐になる。
「ゲス野郎が」
五百。
「この世で一番嫌いだ」
レイピアが輝く。
魔法陣展開。
光属性最上位技。
「サンライトメテオ!」
ズガガガガガガガガガッ!!!!
光の流星群。
数百の突きがゼルヴァンを貫く。
そして。
最後。
リシアが深く腰を落とした。
全身の力を一点へ集中。
剣先が太陽のように輝く。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
渾身。
神速。
一閃。
ドォォォォォォォォンッ!!!!
レイピアが首元へ突き刺さる。
衝撃波。
ゼルヴァンの身体が吹き飛ぶ。
以前と同じ。
瓦礫の山へ。
同じ場所へ。
転がる。
静寂。
誰も動かない。
煙が晴れる。
ゼルヴァンは。
もう。
立ち上がらなかった。
「もう少しやってくれると思ってたんだけどなぁ」
瓦礫の上。
ロビンフットが小さく肩を竦める。
その視線の先には、倒れ伏したゼルヴァン。
先程までの狂気はない。
完全に沈黙していた。
「期待外れだったか」
ロビンは弓を持ち上げる。
一本の矢をつがえる。
ギリギリと弦が引き絞られる。
狙いは。
戦いを終えたばかりのリシア。
疲労は隠している。
だが確実に消耗している。
今なら仕留められる。
ロビンはそう判断した。
「じゃあ次は君かな」
弓が定まる。
その瞬間。
ピシッ。
小さな音。
まるでガラスに亀裂が入るような音だった。
ロビンの表情が変わる。
「……ん?」
背後。
振り返る。
そこには。
巨大な光柱。
カイルを封印していた術式。
その表面に。
一本の亀裂が走っていた。
ロビンの目が細くなる。
「まさか」
次の瞬間。
一瞬。
本当に一瞬だけ。
その瞬間を。
カイルは逃さなかった。
ザシュッ!!
銀閃。
ロビンの背中から鮮血が舞う。
「っ……!」
ロビンが前へよろめく。
完全な死角。
完全な不意打ち。
気づいた時にはもう遅かった。
振り返る。
そこには既に剣を構えたカイル。
静かな眼差し。
揺るがない姿勢。
「悪いな」
カイルが言う。
「こういう封印魔法には少し慣れている」
ロビンは苦笑した。
「少し……ねぇ」
傷口を押さえる。
血が流れている。
だが致命傷ではない。
カイルは剣先を向けたまま動かない。
「終わりだ」
周囲ではリシア達も包囲を完成させていた。
ガルド。
ドラン。
セラ。
全員が健在。
完全包囲。
逃げ場はない。
ロビンは周囲を見回す。
そして。
深くため息を吐いた。
「参ったなぁ」
弓を下ろす。
「降参ってところかな」
そう言って。
いつものように笑った。
コメント
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ああー、第19話のこの不完全燃焼感すごい…!!リシアの「後先考えないゲス野郎が一番嫌いだ」の台詞、めちゃくちゃ痺れた🥀そしてロビンの不意打ちからのカイルの脱出!もう展開が1秒も目離せなかった…。でもゼルヴァンの「全部俺が食っちまったんだった」の笑い方が本当に怖くて、狂気の描写が丁寧で引き込まれたよ。続きが気になりすぎる…!