それに、賢い猫じゃないか!
シロはじっとしながら、地面に小さな白い花の咲いた。火がついていいない釜土を向いていた。
至る所にある煮えたぎる釜土のせいで、歩くのが辛い。何故かというと、汗をかいているのは、身体だけじゃないんだ。足からも地面へと、汗が止め処なく流れていく。
リュックサックがたくさんの発汗で、水分を吸ってしまい。ぐっしょりと重くなってきていた。腕の中のシロも息も絶え絶えだった。
広大な場所だけど、そこに充満しているムッとくるような熱気で、呼吸もかなり苦しい。
隣を歩いている。音星も汗で水気を含んでしまった布袋も背負っているし、呼吸も苦しそうだった。
火のついていない釜土まで歩くと、あることに気がついた。
俺は、ここ地獄へは茨城から、はるばる妹を探しにきたんだよな。
炎や煮え湯で焼けそうになったり、高熱で死にそうになったり、でも、肝心な妹を少ししか探せない。それだと、まったく意味がないんだよ!
うーん。
……あ、そうだ!
「音星。すまないが、すぐに八天街へ戻ろうよ! 八天街の洋服店とかで服を買ったりして、ここ地獄の熱さ対策をするんだ。これから下層へ行けば行くほど、八大地獄はもっと熱くなって来るんだしさ」
「……それはそうですね……。それでは、ここの熱さとも、しばらくお暇しましょうか。一旦戻りましょう」
音星は無理に笑顔を作って、答えてくれた。
手鏡を布袋から用意すると、今度はシロと一緒に俺を鏡に映した。
――――
「あっちっちーーぃ! あつい! やっぱ、夏だけあって八天街も暑いな!」
「ふぅー、そうですね」
俺は真夏の猛射の中。八天街のロータリーで、大量の汗を拭う。リュックサックがもうずぶ濡れだ。音星は布袋からタオルを取って、俺の顔を拭いてくれている。シロは八大地獄から、ここ八天街へ手鏡で移動したというのに、至って驚いた様子はなかった。
そいうや、元々シロは猫屋にいたというのに、そこから八大地獄まで来たと言うのに、いつもと変わんない。普通だったな。
それにしても、どうやってこれから八大地獄の最下層を目指そうか?
段々熱くなってくるんだよな?
その時。パァアンンンンー。と、クラクションが鳴った。見ると、一台の車が凄い速さで、交差点を横切り通り過ぎていった。
「まあ、お急ぎのようですね。でも、この暑さの中大変でしょうに」
「ニャ―」
……
「いや、音星。車の中には……クーラー??」
「はい?」
「そうだ! クーラーがあったぞ! クーラーボックスやクーラーバッグなどだ! 早速、店を探そう!」
「火端さん! さすがです! これで大叫喚地獄での妹さん探しは大丈夫そうですね」
音星の誘いで真夏の商店街へと向かった。八天駅のロータリーから少し民宿とは別方向へ歩く途中にそれはあった。ちょうど、交差点四つと陸橋を渡ったところだ。
八天街の街の人で賑わっている八天商店街。
ここになら、叫喚地獄から更に下層の熱さでも、十分対策ができるクーラーバッグなどがあるだろう。
「あらー、巫女さんと火端くん?」
「あら? こんにちはー」
「あれ? おばさん?」
八天商店街には、買い物袋片手の民宿のおばさんがいた。どうやら、買い出しらしい。
「おばさん? 買い出し?」
「ええ。魚と卵が足りなくてね」
「ええ? もうないの?」
「うーん……またうちに新しいお客さんがくるのよ。だから、足りないのよ」
「そっか」
真夏の真上から猛射が降り注ぐ昼時。
八天商店街では、夕飯の買い物をする主婦たちが多かった。
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