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アイツだけがモテるなんて許せない

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アイツだけがモテるなんて許せない

35 - 【番外編②】隠し事なんかするもんじゃない・前編(桜庭充・談)

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2024年07月02日

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一人で行ったドラックストアで買い物をし、俺は清一の家へ遊びに来た。休みだし、たまには部屋で映画でも観て過ごそうと約束していたからだ。お菓子・ジュースを数点と、いつも清一に買わせてしまっていてちょっと申し訳ないなと思っていた物も追加で二つ程。

「氷でも持って来るわ」

清一はそう言うと、部屋を出て一階へ降りて行った。 俺はその隙に、清一のベッド下にしまってある、雑多に物を入れてあるらしい箱を即座に引っ張り出した。ネットでおすすめされていた潤滑ゼリーとコンドームを追加しておいてやろうという俺なりの心遣いである。いつも清一に用意させてしまい、金銭的負担をかけている事を悪いと思っての、完全なる善意の行動だ。


(きっとありがたがってくれるはず!)


お互いに今はお小遣いのみでやり繰りしている身だ、二人での行為なのに奴にばかり負担をかけたくは無い。買い足せないからと回数に影響が出るのも…… お盛んなこの歳ではちょっと、な。


箱を開けて、買って来た品をこっそり二点追加しようとして、俺は手が止まった。何故か箱の中に、フォトアルバムやデジタルカメラが使いかけの消耗品と一緒に入っていたからだ。

「何の写真だ?しかも、こんなもんしまう箱ん中に入れておくとか…… あ!」


(コレって、エロい写真とかじゃね?清一が自慰行為をする時に使うオカズに違いない!)


そう思った俺は、『奴の性癖ってどんなもんよ。制服のままとか着衣プレイとか絶対に好きそうだよな。実は巨乳好きとかだったら…… ちょっとショックかも。んでも、俺も好きだしなぁ、もしそういうのが出てきても怒らないでおこう』と、うんうん頷きながら容赦無くアルバムを開いて——

後悔した。


(お、お、俺だー!しかも全部、全部全部全部っ‼︎)


アルバムをめくってもめくっても、自慰のオカズにはならなそうな幼少期の写真や中学時代の体育祭の時の走っている姿などの健全な写真ばかりが続く。『こんなもん、こんな箱に入れておく必要無いだろうが!紛らわしいなぁ…… 』と、俺が呆れ返っていると、写真の画質がいきなり変わった。画像が粗く、カメラで撮った写真を印刷したというよりは、動画を無理にパソコンで印刷したといった感じだ。

「…… なんじゃこりゃ」

アルバムをめくる手が、ゆっくりになる。痴態に満ちた自分の姿ばかりが何枚も続き、『うん。オカズですね、コレならば』と、冷めた目をしながら妙に納得してしまった。


(いつ撮った?これって、えっちの真っ最中だよな?)


画像がぼけているし、粗いせいで確信は持てない。でも、自分だという事だけは流石にわかる。

「…… んにゃろう、やりやがったな」

前に『記録してある』と、不用意に清一がこぼした事があった。その意味がやっと腑に落ち、俺はそっとこのアルバムを閉じ、今度はカメラの電源を入れてみた。


「——持って来たぞ。母さんが俺達にってケーキも買っておいてくれてたから、それも——…… 充、何してるんだ?」

ドアが開き、俺の姿を目視した清一の顔色がどんどん悪くなっていく。持っている物を落としかねないくらいに体が小刻みに震え、俺は慌ててカメラを箱へ戻して立ち上がると、清一が手に持ってたトレーを引き取った。

「危ないな、コップ落としたら割れるだろ」

「あ、ごめん…… 」

受け取った、氷の入るコップやケーキののったトレーをテーブルに置き、清一の方を向く。


「ちょっと話しあるわ。そこ座れ」


そう言って、俺はベッドを指差した。コクコクと何度も頷き、清一が青い顔のまま素直に腰掛ける。俺はそんな清一の前に立つと、毅然とした態度で言った。


「率直に言うぞ。『何だコレ』とは言わない、流石に何かはわかる。『何でこんな事を?』とは敢えて訊かない、聞いてもわかってやれる気がしないからな」


腰に手を当てて、俺は長いため息を吐き出した。

「消せ。今すぐに、全て」

「い、嫌だ…… 」

デカイ図体を小さくさせ、清一が視線を逸らして呟いた。

「清一…… 」


「やっと手に入ったんだ、んな簡単に消せとか無理言うな!」


他人から見ればくだらない物でも、本人にとっては宝物なのだろう。『ありゃどう見たって盗撮だろ?恋人の同意が無きゃ、立派な犯罪だろうが!』と叫びたい気持ちをどうにか堪え、俺は呆れ顔のまま、清一の膝の上へ対面になりながら座った。

急に近くなった距離に、青かった清一の顔がポッとほんのり赤くなる。そんな奴の両頰に手を当てて包み、互いの額をくっつけた。


「俺はな、清一…… 大事な記憶は、二人だけの中にこっそりとっておいて欲しいんだ。あんなふうにしたいくらい嬉しかった記憶なら、記録媒体になんか頼らなくても…… 忘れないでくれるだろう?」


瞼を閉じ、努めて穏やかな声で告げてみる。

「み…… みつる」

ぐらっと気持ちが動いた感じはあったが、『うん』とは言って貰えなかった。でも、この感じならば——

もう一押しだ。


「データを消し、写真を捨ててくれたら、俺から指輪を贈ってやるって言っても、ダメか?」


「…… ゆ、指輪?」

「あぁ。付き合ってから初めてのクリスマスが近いだろう?その日までに、刻印入りの指輪を用意しておいてやる。これ以上ないくらいの記念になるし、俺の覚悟も清一に示せるだろう?指輪なんかもらってもガキのママゴトだって思われるかもしれないけど、軽い気持ちで…… 同性とは付き合わねぇって」

清一が口元をくっと引き絞り、「…… わかった」と小声で言った。英断をした感があるが、それ程のもんじゃねぇよな?


「ありがとう、清一」

礼を言い、頰にそっと口付けをする。

あぁ、何をやらかそうがやっぱり好きだな。『長い片思いのせいで色々拗らせやがって』と清一に対しずっと思っていたが、俺も充分恋心ってヤツに溺れきっていたみたいだ。

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